表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

お姫様じゃなく木こり

木こりという役目を聞いて、紗那は驚いていたけれど、本心はどうなのか正直分からない。

そりゃ普通は、おとぎ話の世界で登場人物を想像すると、女性なら、お姫様のようなヒロインを思い描くだろう。


「えー! 木こり?」なんて笑っていたけれど、否定はしなかった。


やっぱり、紗那はさすがだ。


お姫様でも魔法使いでもなく、木こり。

泥だらけになって、汗をかきながら働く役目。

それでも紗那は、「いいね~!!」と笑った。

私は、その素直さに少し感動した。


おとぎ話の世界には、お姫様や王子様、妖精が登場するけれど、

きっと本当に物語を支えているのは、こういう「木こり」のような存在だから。


そんな役目を、嫌がるどころか受け入れた彼女は——

やっぱり、おとぎの世界に行ける子だったんだ。


***


私はもう、妄想をしているわけじゃない。

今までの私は、「私は神々の子」だとか、「特別な存在だ」とか、

自分を取り巻く世界に意味を見出そうとしていた。


でも、今の私は違う。


私は、物語を空想している。


それはただの現実逃避ではない。

「私が紗那をおとぎの世界に連れて行く」ための、ひとつの物語だ。


紗那は現実の世界にいるけれど、

心のどこかで、いつも何かを探していたのかもしれない。


だから、私のおとぎの世界に足を踏み入れることができた。

だから、私は彼女と“向こうの世界”で友達になれた。


***


「ねえ、お姉ちゃん」


「なに?」


「私、木こりになるの、意外と気に入ってるかも」


「本当?」


「うん。森で木こりになって生きるのって、なんかいいなって思う」


紗那がそう言ったとき、私は心から嬉しくなった。


「よかった。紗那はきっと、森の中でも迷わず生きていけるよ」


「ふふ、それって褒めてる?」


「もちろん」


「じゃあ、お姉ちゃんは?」


「私?私は・・・」


「お姉ちゃんは5歳の女の子でしょ!!ちゃんと、木こりの私のこと覚えていてね。」


「うん。紗那のこと、記憶するよ。森で木を切る話、ポメラニアンと友達になる話、森の緑がどんどん増える話……」


「いいね! どれも素敵な話になりそう!」


彼女が笑う。


***


私はもう、神々の子ではなくてもいい。

私の物語の中に、紗那がいてくれるなら——

それだけで、私の世界は本物になる。


私は、彼女をおとぎの世界へ連れて行く。

そして、そこで生まれた物語を、私は現実の世界で想像し続ける。


それが、私の新しい役目なんだと思った。


彼女は、悩みがあるが、

「鏡の世界」という本の影響を受けて、いつも寝る前に両親に感謝して寝るという。


この世界は本当に心を映し出す鏡のような世界なのだろうか。


紗那はその純粋さゆえに、私を引き寄せ、現実の世界だけでなく、おとぎの世界にも触れることができる。

だからこそ——


紗那は、私を見つけてくれた。


***


私が最初に紗那に出会ったのは、夢の中だった。


まだ幼かった紗那は、2階のベッドで寝ていた。

私は空飛ぶベッドで彼女を夜空に連れ出した。

ふわふわとした夢の世界を移動していた。

私は地上で暮らすことができる家族を探していた。


紗那は、そんな私を見つけてくれた。


「お姉ちゃん?」


夢の中の紗那は、現実と同じように穏やかで、優しい瞳をしていた。


「私は……」


そのとき、私はなぜか胸の高鳴りを感じたが、これから始まる壮大なスケールの物語が始まるのを知らなかった。


彼女は何の迷いもなく、私に微笑みかけてくれた。


「私たち、家族だよ!」


それが、私の「この世界」での始まりだった。


***


彼女は、夢の中で私にたくさんのことを教えてくれた。


「お姉ちゃんね、現実にはいないんだよ。でも、私はお姉ちゃんに会えるんだ」


「お姉ちゃん? それが私の名前?」


「ううん、お姉ちゃんの名前はおじいちゃんがつけたんだよ。しっかりする子に育つようにって京子って名付けたんだよ。」


「京子か……教えてくれてありがとう!」


私は、おとぎの世界に住んでいた存在だったのかもしれない。

でも、彼女が私の名前を「京子」と認識して、「お姉ちゃん」と慕ってくれたことで、私は現実の世界と繋がることができた。


***


彼女は夢の中で私に、現実世界のことをたくさん教えてくれた。

「学校っていうところがあってね、お友達と一緒に勉強するの」


「勉強?」


「そう、ひらがなとか、算数とか、色んなことを学ぶの!」


私は、そんな世界があるなんて知らなかった。

彼女が話す世界は、私がいたおとぎの世界とは違う。


そこには、空飛ぶメリーゴーランドや神々もいないけれど、

お弁当の時間や、体育の授業や、友達と手をつないで歩く放課後があった。


「現実の世界って、すごく楽しそうだね」


「うん! でも、ちょっと大変なこともあるよ」


「どんなこと?」


「宿題が多かったり、先生に怒られたり……それに、時々、友達とケンカしちゃったり」


私は不思議に思った。


おとぎの世界では、私はいつも女神ヴィセラとドリーミングをしている。

ドリーミングはヴィセラとの遊びのこと。

月の散歩に行ったり

空飛ぶベッドで空中を移動したり、

人魚になって水中を泳ぎまわったり

森の中を妖精の姿で飛び回ったり、

ヴィセラはいつも私をお姫様扱いしてくれた。

私はいつもヴィセラと一緒だったから、争うことも、迷うこともない。


でも、紗那が話す現実の世界は、時には楽しく、時には苦しくて、

だけど、それが現実で「生きる」ということなのだと教えてくれた。


「お姉ちゃんも、現実の世界に来ればいいのに!」


紗那がそう言ったとき、私ははっとした。


「私は……現実の世界に行けるの?」


「うん、絶対に行けるよ!」


紗那の言葉には、なんの疑いもなかった。


「だって、お姉ちゃんは私の大事な家族だもん!」


***


それから私はヴィセラとある約束をして、一瞬で現実の世界に存在するようになった。

紗那は大きくなり、私もまた、現実の世界に適応していった。


気づけば、私は紗那の「夢の中の友達」ではなくなっていた。

いつの間にか、私は現実の世界に生きる「姉」になっていた。


でも、それはきっと、紗那が私を現実に呼んでくれたから。

紗那の純粋さが、おとぎの世界にいた私を、現実に繋ぎとめてくれた奇跡だった。


だかは私は、紗那が大好きで、

彼女がいなければ、私は今ここにいなかったかもしれない。


私は、おとぎの世界にいたけれど——

彼女が私を見つけてくれたおかげで、この世界に生きることができた。


それがこれからのことを解き明かすカギになるとは。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ