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木こりになった紗那と5歳の京子

紗那は、私を現実の世界に引き戻してくれる存在——

だから、私は現実を生きていられる。仕事もできる、結婚生活も、家の家事もできている。

そう思っていたけれど、(それは違うよ)とインスピレーションが降りてきた。

あれ、12人の男性の神様のお告げが・・・


そっか、本当は、私が彼女をおとぎの世界に連れて行く側だったのだ。

今度うちに来た時に、木こりのおとぎ話を聞かせてあげよう。

どんな反応をするかな・・


***

数日後、紗那がうちにやってきて、木こりの話をすることにした。


「ねえ、お姉ちゃん。最近、負のオーラが抜けて表情明るくなったよね(笑)」


「そう?」


「うん。なんか、前より楽しそうっていうか……肩の力が抜けた感じ」


彼女は微笑む。


確かに、私は変わったのかもしれない。

ずっと神々の子であろうとして、妄想と現実の間で迷っていた。

でも、紗那のおかげで、その迷いは少しずつ薄れてきた。


「ねえ、紗那」


私はふと、思い立ったように言った。


「また、私の世界に来てみる?」


「え?」


「おとぎの世界の話だよ。紗那も、ちょっとくらい夢を見てみない?」


紗那は驚いたように目を瞬かせた。


「……私が、お姉ちゃんの世界に?」


「うん。紗那はいつも、私を現実に引き戻そうとしてくれるけど……たまには私が、紗那を夢の世界に連れて行ってもいいんじゃない?」


「……」


「この前も私の妄想聞いてくれてありがとう!

いつも現実ばっかりじゃ、つまらないでしょ?」


紗那は、しばらく考えてから、小さく笑った。


「……そうだね。また、お姉ちゃんの妄想の世界、覗いてみるのも悪くないかも」


***


私は、紗那に私の妄想の世界を語り始めた。


12人の男性の神様と女神ヴィセラの話。

彼らが支配する無限の世界のこと。

私はその神々からカリスマと崇められ、そして私はその神々を更にカリスマと崇める存在であり、

頂点と底辺を繰り返し、輪廻を超越する存在——


彼女は、戸惑いながら私の話に耳を傾けた。


「それで? その神々の世界にはどんな場所があるの?」


「12人の男性の神様がワープをさせてくれていつも新しい景色を魅せてくれる……そしておとぎ話の世界には9人の京子がいるの……今日は何番の京子になろっかなぁって遊んでるの。ミクロの世界だよ。」


「ミクロ?すごい……! じゃあ、お姉ちゃんはそこに行ってるの?」


「もちろん。私は神々の頂点に立つ者だからね。秒速の世界にも行けるんだよ。」


紗那はくすっと笑った。


「お姉ちゃんの話、やっぱりすごく面白い」


「でしょ?」


私は誇らしげに言った。


「ねえ、お姉ちゃん」


「ん?」


「その世界の話、もっと聞かせて?」


***


私は気づいた。


私の妄想は、ただの「現実逃避」なんかじゃない。

これは、私だけの“おとぎの世界”であり、紗那と共有できる物語なのだ。


紗那は私を現実に引き戻す存在ではなく、

私が紗奈をおとぎの世界へ連れて行く存在だった。


私は神々の子ではないかもしれない。

でも、紗那を「夢の世界」に連れて行けることだけは、確かだった。


紗那は笑いながら、また私に尋ねる。


「ねえ、お姉ちゃん。神々の世界に、私が行ったら何になる?」


「ふふ、それは秘密だよ」


私はいたずらっぽく微笑んだ。


「気になる!教えてよ?」


紗那がそう聞いてきたとき、私は自信満々に答えた。


「木こりだよ」


「……木こり?」


「うん。おとぎの世界で、紗那は木こりになるんだよ。」


彼女はぽかんとした顔をしていたけれど、すぐに笑い出した。


「えー! なんで木こりなの? もっとこう……お姫様とか、魔法使いとか、そういうのがいいんだけど!」


「違うよ。おとぎの世界にはね、神々も魔法使いもお姫様もいるけど……その世界を支えているのは、木こりなんだよ」


私は得意げに、ゆっくりとおとぎの世界を思い描いた。


「紗那は、大きな森の中に住んでるの。朝日が昇るころ、斧を持って森に出かけて、倒れそうな木を見つけたら慎重に切り倒す。木こりはね、ただ木を切るだけじゃなくて、おとぎの世界の緑を守る役割もあるんだよ」


「へえ……」


紗奈は少し真剣な顔になって、私の話に耳を傾けた。


「神々が天から見守っているから、この森はとても安全なの。だけど木こりが森を守らなければ、ちゃんと育てなければ、おとぎの世界は成り立たない。だから、木こりはすごく大事な仕事なの」


「そうなんだ……」


「紗那が切った木は、紗奈の住む家になったり、暖炉の薪になったりする。

そして、ときどき森の奥で迷子になったポメラニアンを助けることもあるんだよ」


「ポメラニアン?」


「うん。おとぎの世界にはね、色んな理由で迷子になるポメラニアンがいるの。

ポメラニアンはお姫様が大好きな犬のことなのね。そのポメラニアンは地上で穢されてしまった……」


私は紗那をじっと見つめた。


「紗那は、そういうポメラニアンを見つけて、一緒に暮らしてお姫様を安心させてあげるの」


紗那は少し驚いた顔をしたあと、照れくさそうに笑った。


「……なんか、それって私らしいね」


「でしょ?」


私は微笑んだ。


「……そっか。じゃあ、お姉ちゃんは?」


「私は?」


「おとぎの世界で、私は木こりになった。でも、お姉ちゃんは?」


私は少し考えてから、笑った。


「私は、5歳の女の子だよ」


「5歳の女の子?」


「うん。おとぎの世界の神々や、紗那みたいな木こりの話を読み聞かせてもらう5歳。私はね、この世界にある物語を記憶するの」


紗那は目を輝かせた。


「それ、いいね!」


「でしょ?」


私は楽しそうに笑いながら続けた。


「私は5歳だから、紗那が森でどんな風に生きてるのか、全部記憶して、大人になったらおとぎ話にするんだ。

ポメラニアンを助けた話、星空の下で親元の神様と会話している話、緑の世界がどんどん広がる話……ぜんぶ、私が記憶するの」


「そっか……」


紗那は少し考え込んだあと、静かに呟いた。


「なんか、いいね。おとぎの世界に、私もちゃんと居場所があるんだなって思えた」


「もちろん。おとぎ話には、お姫様や魔法使いだけじゃなくて、木こりだって必要なんだから」


紗那は照れたように笑って、私の肩をぽんと叩いた。


「じゃあ、私が木こりとして頑張るから、お姉ちゃんはちゃんと物語を記憶してよね!」


「もちろん!」


私は、大きく頷いた。


紗那が私を現実に連れ戻すんじゃない。

私が彼女を、おとぎの世界に連れて行くんだ。


それが、私たち姉妹の物語。

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