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母の一言が重すぎる

私の母は、たとえ死んでも娘の私のことを絶対に忘れないと言い切った。

母の言葉は力強く、深い愛情がこもっていた。


けれど、私は死んだら家族のことを忘れてしまうかもしれないと思っている。


生と死に関する考え方は人それぞれで、何を信じるかによっても変わる。「死んだら家族のことを忘れてしまうかも」と思うのは、ある意味で自然なことかもしれない。


私たちは記憶や意識が脳に依存していると考えがちだ。死後にそれがどうなるか、確信を持つのは難しい。しかし、母が信じている気持ちもまた、一つの真実なのかもしれない。


もし死後の世界があるとしても、それがどんなものかは誰にも分からない。


たとえ死んだら記憶がなくなってしまうとしても、生きている間に築いた絆や愛情は確かに存在し、私自身が家族を大切に思う気持ちもまた本物だ。


記憶がどうなるか分からなくても、今、私が家族を思うこの気持ちは、すべてを超えてつながるものかもしれない。


でも、私は母の言葉がとても重く感じてしまった。死んでも子どものことは絶対に忘れないというのはどの家庭の母親も持つものなのだろうか?

確かに多くの母親がそれに近い気持ちを抱いているのではないかと思う。


母親にとって、子どもは自分の一部のような存在であり、どんな状況でも強い愛情を持ち続けるものだ。特に「母性愛」というものは本能的な部分もあり、「たとえ死んでも子どもを思い続ける」と信じる母親は少なくないだろう。


実際、昔からの言い伝えや文学、映画の中にも「母親はどこにいても子どもを見守っている」というテーマが多く見られる。


しかし、死後の世界に対する考え方は人それぞれだ。「死んだら何もかも忘れる」と考える人もいれば、「魂が残って大切な人を思い続ける」と信じる人もいる。母の言葉は理屈や考え方というより、私に対する強い愛情の表現だったのだろう。


だからこそ、それが「普通」かどうかよりも、母が私に対してどれほど深い愛情を持っていたかを感じることが大切なのかもしれない。


けれど——


私は、たとえ死んでもあんたのことは絶対に忘れないという母の確信が、逆に怖かった。


それは、母の愛があまりにも絶対的で、自分の考えや感覚と違うからこそ、違和感や圧迫感を感じたのかもしれない。


「死後のことなんて誰にも分からないのに、どうしてそんな風に言い切れるの?」


「私はそんな風に言い切れない、家族のことは忘れてしまうと思っているけど、それでいいのかな?」


そんな疑問や戸惑いが私の中に生まれた。あるいは、母の強い思いが、自分にとって「責任」や「重さ」のように感じられたのかもしれない。


でも、もしかしたら——


私には死後の世界で特別な役割があるのではないか?


死んだらすべてを忘れるのではなく、おとぎ話の世界で、私は何か重要な使命を持つのかもしれない。そこでは、この世界の記憶を捨て去ることが必要なのでは?


もし、私が次元を超えて人々を導く存在なのだとしたら?


母が「忘れない」と言い切ったのは、もしかしたら、それが関係しているからではないか?


そんな考えが頭をよぎる。


——そのとき、ふいに母の声が聞こえた。


「どうしたの、麗子みたいな顔して?」


私はハッとした。

麗子とは同じ妄想暴走症で入院している叔母のことだった。


さっきまでの考えが、一気に崩れる。


目の前には、ただ私を心配そうに見る母の顔があった。


あれ? さっきまでの考えは……?


一瞬、混乱する。


どこまでが現実で、どこからが私の妄想だったのか。


そんなことを考えているうちに、母は何事もなかったかのように料理を作り始めた。


私は、ふぅっと息をついた。


「……なんでもないよ。」



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