1-2 いつもと同じになるはずだった日
眠い!おなかすいた!
朝の空は、薄い水色をしていた。
校門をくぐると、制服の裾を揺らす風がすこし冷たくて、私は小さく息を吐いた。
「おはよう、凛!」
背後から明るい声。振り返ると、友達の美和が笑っていた。
「おはよう、美和。今日も早いね」
「うん、朝礼の前にノートまとめたくて。国語の宿題、終わった?」
「……ギリギリ」
「だよねぇ〜。私も。」
そんな他愛のない会話が、いつもの朝の印だった。
グラウンドでは先生が生徒たちを出迎えている。
廊下には女子たちの笑い声が響く。
窓の外の雲は穏やかで、どこにも戦の影など見えなかった。
チャイムが鳴り、全員が講堂に集まる。
朝礼の最中、校長先生の声がマイクに少しだけ割れて響いた。
「本日も皆さん、安全を第一に——」
その時だった。
突如、甲高い警報が鳴り響く。
耳を裂くような音。
「空襲警報です!全員、防空壕へ!」
教師の叫び。
誰かが泣き出す。
誰かが転ぶ。
誰かの悲鳴が響く。
私と美和は手を取り合って走った。
だが、空が裂ける音がして、焼夷弾が校庭の端に落ちた。
炎が広がる…さっきまで話していた校舎が崩れてガラスが割れる。
「こっち!」
美和が叫んだ瞬間、爆風が私たちを引き裂いた。
私は地面に叩きつけられ、煙の中で彼女を見失った。
「凛!早く防空壕に入らんか!!」
先生が私を引きずりながら強引に防空壕に押し込む。
「待って!お願いまだ美和が外に!」
外から聞ける音は物が崩れる音、誰かの叫び声…
匂いは焦げた制服の木の匂い…
空襲警報がやんだ。
その時私は飛び出した。
美和がどこにいるか探した。
炎が私の肌を掠める。
校舎の隣にあった花壇を通り抜ける。
私はその時初めて町の様子をみれた。
街が焼け多くの人々が悲鳴を上げている。
炎が街を焼いている。
私がいつも挨拶してる人の家も…
私の家も…
絶望という鎖が私を纏う。
私は鎖が纏りきる前にその場から逃げた。
逃げた
今この場からすぐにでも逃げたかった。
現実じゃないこんなの認めたくない…
逃げた…
逃げた…
逃げた先に…
彼女がいた…
彼女の身体は焼け、肌がただれていた。
それでも、目だけは私を見ていた。
「……よかった…」
その声を最後に、彼女の手から力が抜けた。
私は彼女を抱きしめたまま、何もできずにいた。
絶望はまたも私に纏わりつく…
今度は逃げれなかった…
そして、近くで時限爆弾が破裂した。
白い光。
全てが飲み込まれていく。
次に目を開けたとき。
「え…」
私は夢で見ていた男になっていた。
どこの誰だよこんなエピソード書いた馬鹿垂れは!!




