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魔法少女、ステータスオール0からの追放

「ここどこ?」


 トモは気づくと真っ白な空間にいた。手には大剣がそのまま握られている。

 ここに来た記憶が定かではない。ただ、気づくとそこにいたとしか言いようがなかった。


「やぁ、やっと気づいたかい? 悪いけど君には勇者になってもらう。

 君を呼んだだけで大分力を使ってしまったから、何もあげられないけど頑張ってね!」


 突然トモの前に白い人影が現れると、何の説明もなく勇者にしたという。

 正直意味が解らない。


「ちょっと! 勝手なこと言わないでよ! せめて説明を!」


 まだはっきりとしない意識の中、絞り出した言葉はその言葉だけだった。


「うーん。あまり時間がないんだけどなぁ。 君が倒した。エーレンゼルってとこの神様いるじゃない? あれ僕らの世界に飛んできちゃったんだよね? 君が殺しそこねてね? だから、何とかしてほしいんだよ」


 そういうと、白い人影はにやりと笑う。

 その笑顔には見覚えがある。チェシャだ。あの陰険で悪意のある笑み。

 トモは思わず身震いする。本能的に信じてはいけない物だと思った。


「悪いけど、私には関係ない! 帰してよ地球に!」


「それは無理さ。僕は力を使い果たしている。 さぁ勇者よ! 使命の為にこの名もなき世界を旅してくれたまえ!」


 そういうと、トモの視界から白い人影が急に遠いところへ離れていく。

 そして襲われる浮遊感。まるで空間自体が伸びていくような感覚にトモは襲われた。

 これは不味い。有無を言わさずに雲隠れするつもりだ。


「ちょっとまちなさいよ! あんたそもそも誰よ!」


「誰かって? 神様さ、この世界に無数にいるね。 あと君、呪われてるから少しだけ治したけど、やっぱ僕の力足りないみたいごめんね?」


 そしてまたトモの視界が暗転する。

 今度は意識の断絶はない。

 眼を開くとそこは石造りの祭壇の上だった。その前には白いローブを着た人間が、何人もいる。その中の一人王冠を被った老人が、歩み出てトモに話しかけてくる。


「あなたが神託にあった勇者さまですかな? しかし……、まさか魔族とは……」


「いや勇者になったつもりなんかありませんけど……。 てか魔族? え?」


「神官長ステータスを確認しろ! 早く!」


 すると何やら、髭を蓄えた老人がトモに近づくと大きな水晶に触れるように促してくる。とりあえず触らないと話が進まなさそうだ。

 気は進まないがトモは触れてみることにする。

 すると、空中に四角いウィンドウが浮かび上がりこのように書いてあった。


 POW:0 CON:0 SPD:0

 DEX:0 MANA:0 LUC:0


 称号:§Θn 神技:§Θn クラス:なし 主神:×××


 その表示にどよめき立つ一同。

 そして段々と険しくなる表情、トモは嫌な予感を感じた。

 そしてすぐにその予感は的中する。


「こやつを即刻、森に捨てよ! 魔族の姦計か……、偽物の勇者を送りこんできおったのだ! 殺すなよ? 死をトリガーにして発動する呪いかもしれん! 結界の外に捨ててくるのじゃ!」


 最初に話しかけてきた老人は激昂して、トモを追い出すつもりのようだ。

 トモは反射的に身構える。戦うこともできるが、状況が分からないまま戦うのは、事態の悪化をもたらすかもしれない。


 トモはおとなしく捕まることを選択した。

 その道すがら、トモは大鏡で自分の身体を確認することができたその姿は、魔法少女の身体はそのままに、衣装というか、全体的に変わっていた。

 赤いゴシックドレス風のワンピースにフリフリのスカート、髪色は赤に黒が混じり、ツインテールのゆるふわカール。背中は大胆に空いている。ここまではいい。

 空いた背中からは蝙蝠の羽、頭からはヤギの様に立派な角が右側頭部に生えている。


 そして悪魔のしっぽが生えていた。


 ――「呪われてるから少しだけ治したけど、やっぱ僕の力足りないみたいごめんね?」


 先ほどの自称 神のことばを思い出す。


「全然なおってないじゃない!」


 トモがいきなり大声を出すと、兵士たちは身構えた。

 しかし、すぐに何もないと解ると、規則正しくトモを護送し始める。

 城をでて、街を抜け、城門を抜ける。

 そして、すぐ近くにある森の入り口の前につくとトモは弓で脅され、「行け」と合図される。酷い扱いにトモは憤る。

 しかしトモは角を撫でると諦めて森の奥へ消え去るのだった。


 その日トモは勇者となってすぐに、異世界で追放された。

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