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41話 裁判 チリリア王パルラ

 3日が過ぎた。

1日に2度食事が運ばれてくる以外に外との交流はない。

ただいつのまにか胸元に潜り込んでいた猫車の子猫が俺の癒しだ。

3日間ヒマさえあればこいつを弄りまわしている。

バレないように看守がいないスキをついて子猫を出す。

こいつの名前はパレットにした。

真っ白いからパレット。

シンプルだろ?


この世界では猫車の子猫から猫車になるサイズの子が

必ずしも産まれるわけじゃない。


小さい時は皆一様に普通に子猫の姿。

いずれ成長していくと各々全く違う種類になる。


手先の器用なお手伝い猫

筋力があり身長が伸びるバトル猫

主人の身体から離れない纏い猫

身体が大きくなり持久力のある猫車

普通に獣人になる猫獣人

といった具合だ。


誰かが牢に向かって歩いてくる音がする。

パレットを胸に突っ込む。


「遅くなって悪かったな。チリリアの王が来賓した。出ろ。」


ファースさんが俺に手錠をかける。


「ファースさんに手錠をされて歩くの久しぶりですね」


「ふっ。冗談を言える状況ではないぞ。」


ファースさんと廊下を歩く。


王の間の扉に到着する。

「容疑人を連れてまいりました!入ります!」


ファースさんの顔が強張る。






王座には二つの椅子。

片方にはシバ王。

もう片方はチリリアの王らしき人物が座っている。

黒い蛇から手足が生えたような身体。


「ズージー。よく無事だったな。赤羽よ。こちらはチリリアの王パルラ王じゃ。」


「罪人に名など教える必要はないぞシバ」


「まあそういうな。赤羽が今回の襲撃を手招きしたという証拠はない。」


「ズージ不落の魔法結界。一撃で解除されたのちに破壊されたそうじゃないか。」


「そうだが証拠にはならん」


「赤羽が国にやってきて数か月、内部の情報を嗅ぎまわり外部に流した。そう考えるのが自然だ。」


「推論じゃな。それも。」


「私も転移者ですが一言良いですかな。

そんなことをして赤羽にメリットがあるとは思えません。

彼はまじめに学び、身体を鍛えており怪しいところなどありませんでした。」

エジが口を出す。


「転移者の都合など分からんな。本人に聞いてみない事にはな。」

パルラが俺を見る。

感情の読めない、光が全て吸い込まれるような黒い瞳。


「パルラ、ここで魔眼術などやめておけ。」

シバが凄む。



「パルラ王よ。本人がやったというならここにアホ面下げて戻ってこないでしょう。」




「それも推論だな。とぼけているだけだ。

おい。結界の情報を外に漏らしたのはお前だろう。

襲撃時、初めてお前が国から出る日時だったというのもずいぶん都合の良い話だな。

それに空間や時空魔法についてピューイとかいう鳥人に熱心に聞いていたそうじゃないか。」


「パルラ、決めつけるな。ここの赤羽は我が国の住人だ。お前の裁量だけで裁くものではないぞ。」


「シバ、貴様賢者の石を奪われたそうだな。この国がいま弱い立場にあること忘れるなよ。」


「・・・。ではどうする。戦争か。滅ぼしは無意味だぞ。」


「わかっておるわ。我が国の賢者の石の力、少しばかり貸してやってもいい。」


「そんなことができるのか?」


「ああ。お前の国の農作物、枯らすにはおしい。

ただし、貸し出すには条件がある。赤羽の身柄こちらで預からせてもらおう。

お前の国の民全てが飢餓に苦しみ死に絶えるか、

その男を手放すか。

2つに1つだ。」


「赤羽を連れていきどうする?処刑か?それこそ我が国への冒涜じゃぞ。我が国の民だからな」


「処刑はせん。手荒な真似もな。

我が国の精神系能力者に頭の中を探らせる。隅々まで徹底的にな。

実行犯とのつながりがなければ即座に開放する。

こいつを怪しんでおらんのだろう?問題ないはずだ。」


「そんなことをすれば赤羽の精神は崩壊する。

チリリアの国の精神系使いはずいぶん荒良治をすると聞いておるぞ。」


「直してやれよ。いずれ賢者の石を取り戻し、それまで飯だけ食わせて飼い殺しにして。」


「そんなことはできん。」


「強情だな。ならもう1つ交換だ。

捕らえた転移者どもももらおう。」


捕らわれた転移者?襲ったのは転移者たちなのか。

なんのために?


「その代わり我が軍の精鋭のうちの何人かを貸し出そう。

貴様の国の四獣士といったか。

何人かはいまだ意識も戻らんと聞くぞ。

兵の半分ほども先の戦闘で失ったのだろう?

賢者の石もない。

お前も全快とは程遠い。

こんな状態で鬼人の国や鳥人の国が襲ってきたらひとたまりもないぞ。

いい条件だろう。」




「兵を貸し出しされている状態でこの国に喧嘩を売れば

チリリアにも戦争を吹っ掛けたことになる。というわけですか。

シバ王よ、ここいらが落としどころですぞ。

正直言って国の戦力増強は急務です。」


「破格の条件だな。

ただし赤羽にかける精神攻撃魔法。

それをある程度守る魔法を赤羽にかけさせてもらおう。

それから賢者の石の力の貸し出しについても細かく教えてもらおう。

こちらの国にはない技術なのでな。

取り決めも必要だろう。」


「決まりだな。」


パルラは長い舌をチロチロとだし企んだような顔でほほ笑んだ。


後日、俺は大蛇の引く蛇車へ乗せられチリリアへと連行された。


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