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732話・最終パーティ編成完了!

 お尻が丸出しの戦闘衣装に着替えた小夜子とヒナに、勇者トシヒコはご満悦だ。


「よーし! やる気出てきた! 最終決戦、いっちょやってみようかー!?」


 さすがに触れたりはしないが、ふたつの生々しい巨尻をじっくりと眺めながら匂いをかいだりブツブツと独り言をつぶやいている。

 小夜子はモジモジしながら、ヒナはやや呆れながらも、勇者に見られるに任せていた。


「時間がないわトシ。最高の戦術を頼むわね」


 そう言うヒナの声には、勇者に対する全幅の信頼が乗っている。

 トシヒコはうんうんと頷きながら、上空を三手に分かれる量産型魔王の群体に視線をやった。


「……知里。勇者は仲間の女たちを裸にして作戦会議をしているようだが、あれに何か戦術的な意味があるのか?」


 ラーは少し引き気味に知里に尋ねた。


「戦術的に意味? ないない。トシヒコのモチベーションを高めるルーティーンみたいなもので、魔王討伐軍時代でもボス戦の前にはよくやってた。セクハラではあるんでしょうけど、あの母娘は見られるの満更でもないようだし」


 知里はもっともな説明をしながら、視線をラーではなくグレン・メルトエヴァレンス夫妻に向けた。

 心が読める彼女には、一睨みしただけで相手を牽制することができる。


 俺の『未来視』でも、不意打ちを知里のキャンセルされる映像が見えた。

 

「……さらにおっかねー化け猫になってやがる」


 グレン氏が落としたつぶやきを、風の精霊が拾ってきた。


 一方、ラーはそのやりとりには特に関心を示さず、トシヒコの動向を追っていた。


 勇者は両脇に小夜子とヒナを置いて、王者のような態度で虎仮面を手招きしていた。


「虎仮面の大男。お前さんは『むっつりスケベ』だな。ちっとこっちに来な」


「お、おれ?」


 仮面で表情はわからなかったけれど、虎がギョッとしたのは声で分かった。

 伝説の暗殺者集団〝鵺〟の幹部だった男は、確かに小夜子のヒナの肌をまじまじと見つめていたのは知っている。


「『むっつりスケベ』いやらしい感情で体が硬くなるスキルを与えた。今回は小夜ちゃんじゃなくてお前が防御を担当する。誰も死なせなかったら、勇者の名において恩赦を与える。やれるな?」


「…………俺は暗殺者だが?」


 確認を求めるように、虎仮面は俺のほうを向いたので、右手を上げて頷いた。

 恩赦はともかく、暗殺者の虎仮面を〝壁役〟にする戦術は


「今回は小夜ちゃんにはアタッカーに回ってもらう。消費魔力の多い技よりも、君のおっぱいやお尻から出る無敵の〝障壁〟で敵を押しつぶすって寸法だ」


「……な、なんですってー!?」


 勇者トシヒコの〝奇策〟に、小夜子は頬を赤らめ、ピンク色の障壁が出現する。

 知里は大きな目を細めながら、障壁をツンツンと指でつついて頷いた。 


「お小夜のバリアをハンマーみたいに使うわけか。一度に数十体をぶち抜けるМP消費ナシの肉弾兵器」


「まさに破壊力最強のダイナマイトバディってやつだ」


「なるほど。裸の女狂戦士を武器代わりにするのか。余の電磁砲で撃ち出せば、さらに威力は上がるだろう……」


 ラーは小夜子の肉体美に何の関心も示さずに冷徹に言った。


「法王さままであんまりよー」


「ママ、勝利のためよ。ドンマイ」

 

 涙目の小夜子の肩に、ヒナが手を置いた。

 二人して極小ビキニ鎧をまとう姿に、俺はドン引きというか何とも言えない気持ちになる。


「さて、じゃあ次はドルイドの別嬪さんだ。他人の情婦に興味はねえが、同郷のよしみでスキルを『覚醒』させてやろう」


「……直行さま? 勇者さまの提言をどういたしましょう」


 レモリーが俺に確認をとろうとしてきたのを、トシヒコが遮った。


「俺様の『天眼通』は能力を付与する得能だ。いまの戦力を底上げして、量産型魔王に当たる。だが戦後を見据えて〝恥知らず〟と前法王のクソガキには何も与えてやらん。俺様の能力付与を断る理由はない」


 トシヒコはレモリーに言ったというよりも、俺とラーに釘を刺したのだと思う。


「いまの状況で〝戦後〟を見据えているのか。頼もしい限りだが、本当に戦い抜けるのか──?」


 ラーとトシヒコの間には常に緊張感が漂っている。

 命を取り合った者同士にしか分からないであろう、重い空気だ。


 心が読める知里にも、二人の領域には入り込めないのだろう。

 彼女は口を真一文字に結んでトシヒコとラーを交互に見ていた。


「そっちの召喚士の娘さんは能力強化とともに仮面にもスキルをつけておいた。全方位モニターになっていて声も届く。皆のサポートを頼む」


 勇者トシヒコの能力で、パーティが強化されていく。


挿絵(By みてみん) 


 まさかの面子で対処することになったが、戦力としては比類のないものに間違いはない。

 俺は、ともかくとしてだが……。


「トシヒコ、あたしはどう動いたらいい?」


 素直な表情で、知里が勇者に指揮を仰いだ。

 この二人には過去〝パーティ追放〟という確執もあったが、彼女にはもうわだかまりはなさそうだった。 


「絶対的なエースに指図するほど野暮じゃないぜ、ちーちゃん、存分に暴れてきな。援護は俺たちに任せろ」


「了解」 


 トシヒコと知里はハイタッチを交わす。

 その様子を、ヒナとラーが少しだけ嫉妬の混じったような表情で見たのが心に残った。


 おそらく現在のパーティだと思われる布陣で、俺たちは最終決戦に挑む。

次回予告

※本編と全く関係ありません。


知里「『令和のオカルト女王』こと角 由紀子さんの著書『引き寄せの法則を全部やったら、効きすぎて人生バグりかけた話』がめちゃ売れてるみたいね」


エルマ「そうそう♪ 本の中で紹介されていた聞くだけで願いが叶う『ヘミシンク』も話題でCDも品切れだとか♪」


小夜子「へー。『時空オカルト研究会』としてはチェックよね!」


直行「おう。それでヘミシンク『具現化』の音声МP3を公式から17$でダウンロードしたんだよ」


知里「日本円じゃ買えないんだ。で、どうだった? 何か引き寄せた?」


直行「音声ガイダンスの日本語声優さんが麻生元総理の声にそっくりで気になったんだが、途中で寝てしまって最後まで聴ききれたためしがないんだよ」


知里「麻生さんの声で起きてられないほど眠くなるって壮絶にカオスなんじゃない?」


エルマ「次回の更新は11月28日を予定していますわ♪ 『ローゼン閣下の子守歌』お楽しみに♪」

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― 新着の感想 ―
やったー!!!(*^^)v 凄い布陣ですね!!
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