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722話・ノー・サレンダー・オールスターズ

 前法王ラー・スノールが率いていたクロノ王国の兵たちが、風船のように膨らみながら空へと舞い上がり、破裂して量産型魔王に変貌する。


挿絵(By みてみん)


 量産型魔王の強さは、単騎でヒナやミウラサキ、そして小夜子でさえてこずるほどだ。

 それが数千、しかもネオ霍去病の『過去改変』能力でこちらの「勝利」をリセットできる。


 無限に繰り返される戦闘では、いつかこちらが力尽きる。


 悪夢のような光景は、『未来視』ではなく、確定した現実としていま起こっていた。


「霍去病の野郎、兵たちに『スキル結晶』を埋め込んでやがった……!!」


 勇者トシヒコの声を、風の精霊と化したレモリーが皆に伝える。

 

 俺の頭では処理できない魔法の分野なので、状況把握のためにもこのばにいる術者たちの意見はとてつもなく貴重なものだ。


「人間を『量産型魔王』に改造できるなんてありえない……エネルギーの総量が釣り合わない。何かあるはずよ、種か仕掛けか……」


 賢者にして召喚士でもあるヒナが、膝をついて肩を落とした。

 直感的に、現状のマズさを、理解したのだろう。


「聖龍の加護の元、魂に安息あれ……」


 一方、ラーは祈りの言葉とともに氷の魔法を周囲に放ち、変貌しようとする兵たちの動きを止める。

 普段は冷静な彼の顔が、苦痛で歪んでいた。

 自身が連れてきた味方の兵を手にかけることに躊躇はないものの、心が痛んでいる。そんな様子だった。


「ノロマ、ノロマ、時よ! ゆっくり、ゆーっくり進め!」  


 ミウラサキは『時間操作』の能力で時の流れを遅らせている。

 しかし何の対策案もなければ効果は一時しのぎでしかない。


 だとしても、彼は英雄として自分にできることを愚直に実行している。

 ラーとミウラサキはあきらめてはいない。


 それともう一人、小夜子だ。


「グレン団長! カレンさん! こんなひどいことも、あなたたちの望む世界に必要なの? 彼らは異世界人じゃないでしょ!」


 彼女は聖剣を振りかざし、グレン氏たちに正論をぶつける。

 

「あんなのは管轄外だ。俺たちの役目はお前らが押しつけてくる価値観を正すこと! 特にヒナ! お前さんはここで退場してもらうぜ」


 グレン氏は長剣をクルクルと回し、剣舞のような動きで小夜子に切りつける。

 いつもの日本刀ではなく、大きな両刃の剣ではトリッキーな斬撃をさばくのも苦労している。


 しかも、グレン氏の狙いは小夜子ではなく、その奥にいるヒナ・メルトエヴァレンスだ。

 剣戟の合間に、苦無のような飛び道具を投げて、巻き込み暗殺をもくろんでいる。


 ほとんど無防備なヒナは、その攻撃に気づきもしない。

 小夜子も、グレン氏の巻き込み攻撃には気づいていなさそうな動きだった。

 しかし──。


「あぁん見えちゃう! ダメー」


 小夜子が身に着けているのはロボットの残骸パーツを無理やりビキニ鎧風にくっつけたもので、ポロリはもちろん、肝心な部分も見えそうで目のやり場に困る。


 皮肉なことに、それが障壁の能力を大幅に引き上げていて、グレン氏のヒナを狙ったフェイント攻撃は通さない。


「相変わらず破廉恥でデタラメな奴だ。カレン、何か言ってやれよ」


「ノーコメント」


 カレン女史もヒナを狙って魔法攻撃をしているが、小夜子のふざけた障壁能力によって阻まれていた。


「直行さん♪ 霍去病のオジサンには致死量の毒を撃ち込んでいます♪ いつ斃れるか『未来視』で確認して教えてください♪」


 エルマだってあきらめてはいない。


 奴は毒だと思われるカプセルを召喚して、それを魚面が魔力でコーティングし、浮かせる。さらにそれを『複製』でコピー、魔力の弾丸を量産する。


「いい加減によォォォーー!! くだばっちまええええーー!!」


 その魔力弾を、虎仮面の怪力で投げつける。

 手が込んでるのかシンプルなのか、よくわからない戦術だ。


 魚面と虎仮面をあごで使いながら、狙いを霍去病に定めてひたすら攻撃していた。


 俺はネオ霍去病に焦点を合わせて『未来視』を発動し、彼の命数を測る。

 神経ガスに放射能、その他のヤバいやつも含めて、異世界のありとあらゆる有毒物質を体内に取り込んで、無事でいられるはずはないはずだ。


 過去改変能力があったところで、絶対にダメージは蓄積している。だからこそ奴は姿を怪物に変えて、基礎的な体力と耐久力を底上げしたはず──。


 5秒先……。5分先……。

 見えた未来のイメージから時間経過を割り出し、あたりをつける。

 動きが鈍くなっていき、すさまじい形相で天を仰ぐ。


 誰かの死を待ち望むというのは決して褒められたものではないが、彼は敵としてあまりにも厄介だった。それに加え、ほとんど思想というか、政治性も皆無だ。


 自己愛と生存本能以外の意思がみられない。これでは対話など不可能だった。


 各勢力の最高戦力が、寄ってたかってネオ霍去病を滅ぼそうというのも、それ以外に解決への選択肢がないからだ。

 ──そう自分に言い聞かせつつ、俺は様子を伺っていた。


「おい恥知らず。あのクソガキと俺で量産型魔王の集団を止める。何分持つか、未来を見てくれ──」 


 そのとき、レモリーが勇者の声を届けてきた。


 『未来視』の同時使用はできないため、いったんネオ霍去病から焦点を外し、上空の量産型魔王の大群を見る。


 ラーの隕石とトシヒコの重力操作による大規模範囲攻撃で、当初は圧倒できるものの、繰り返される過去改変による「リセット攻撃」で、トシヒコの体力は削られ、五分も持たずに息絶える未来が描かれた。


「ダメだトシヒコさん、五分持たない──」


 ──もしかしてこの状況、詰んだ……?

 俺の背筋に冷たいものが走った。

次回予告

※本編とは全く関係ありません。


直行「今年はサンマが豊漁だな! 何年か前までは不漁で大変だったけど」


知里「原因として黒潮の流れが七年ぶりに元に戻ったからだとか言われているね」


エルマ「ハチミツとフルーツが主食のあたくしには一ミリも関係ない話ですわね♪」


小夜子「エルマちゃん好き嫌いはよくないわよ! 大きくなれないわ! そうだサンマケーキなら食べられるんじゃない? 作ってあげようか?」


知里「サンマの塩焼きフィッシュケーキってレシピあるみたいだけど」


エルマ「遠慮しておきますわ♪ さて次回の更新は9月19日を予定しています♪ 『サンマケーキ地獄』ヒィィ勘弁して下さいなー♪」


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― 新着の感想 ―
これは絶体絶命状況ですね!! でも何か突破口が!! 続きを待っています!!<m(__)m>
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