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682話・ゆがむ時空、狂いだした未来

 俺はグンダリからスキル結晶『未来視』を抜き取り、額から脳内へ直に挿入した。

 

「……!!」


挿絵(By みてみん)


 一瞬だけ鋭い痛みが走ったものの、硬質なスキル結晶はぐにゃりとしたゼリー状になり、溶けるように脳内を侵食していく。


 ふしぎなものでスキル結晶自体はクリスタルのような硬い物質だが、体内に埋め込むと肉体と結合して異能を授けてくれるアイテムだ。


 恐怖はない。とても静かな心の状態で、脳内物質が更新されていくのを感じる。


「テメェ……ああああ!」


 目の前には右目をえぐられたグンダリが憤怒の形相でこちらを睨みつけている。

 しかし後ろから羽交い締めからヘッドロックで首を締め上げている小夜子の怪力には抵抗できず、やがて白目をむいて倒れた。


「……っと、いまのコレは未来視じゃない、よな……。ええと、現在起きていることだよ、な……?」


 俺は誰にいうでもなくつぶやいた。


「直行くん?」


 小夜子がキョトンとした顔で首をかしげている。

 まばたきをしたり目をこすったり、状況を確認してみるが、目の前の現象はリアルタイムのようだ。

 虎仮面と小夜子が協力してロープで意識を失ったグンダリをグルグル巻きにして拘束している。

 その後ろには、魚面が呪縛魔法で魔力でも縛り上げるという念の入れようだ。


「魚面と虎……二人とも無事だな。よかった」


 現在のところ、俺の脳内には二人が無残な姿をさらしているヴィジョンは見えない。

 グレン・メルトエヴァレンスを追って敵本陣に突撃したヒナに関しては確認することができないが……。

 現時点で打てる手は全部打った。


 スキル結晶が馴染むまでは少し時間がかかる。

 すでに俺の首の後ろには『回避+3』と『理性+3』が埋め込まれている。

 これらの自動発動系の異能と違い、『未来視』は自身で発動させなければならない。


 決闘裁判のときに覚醒した『逆流』の能力と併せて使えるものか、脳内で考えを巡らせる。

 目に入れたグンダリとは違い、俺の場合は脳に直接入れたのだから見え方は違うはずだ。


「とりあえず五秒先の未来を思い描いてみるか……」


 練習がてら、まずは深呼吸してゆっくりと目を閉じてみる。


 『未来視』を戦闘で使いこなすのはまだまだ難しいから、簡単な状況を予測して使用感を確かめる。

 慣れたら目を開けたままでもできるようにすればいいし、最終的には都合のいい未来を思い描いて引き寄せる、なんて応用も視野に入れながら……。


 ゲームで言ったらチュートリアルのようなイメージで、俺は未来を思い描いてみた。

 ところが、だった。


 脳内には悪夢のような光景が映し出された。

 陸と空を覆い尽くし、大量に押し寄せる量産型魔王──。

 その数、数万──?


 地上の町を踏み潰し、空からの光弾照射で豊かな自然を焦土へと塗り替える。

 膨大な数の量産型魔王は中央湖を渡り、勇者自治区を地獄絵図に変える。


 逃げ惑う人々が無残に踏み潰され、断末魔の悲鳴もかき消されていく。

 髪の毛が焼ける嫌な臭いが鼻についた。

 脳内を通じて様々な死が、とてつもない臨場感で押し寄せてくる。


「うわああああ! やめろっ、やめろぉぉぉ!!」


 悪夢のような光景が次々と脳内に浮かび、俺は頭をかきむしる。


 瞳を開ければ、地獄絵図の映像は消える。

 しかし、べったりとした血糊のように脳内に焼き付いた感覚は消えやしない。


 人の目玉をえぐってまでして変えようとした未来が、さらに最悪になってしまったのか──。

 俺は放心状態のまま、視界がブラックアウトしていくのを感じた。


 ◇ ◆ ◇


「……直行さま! 直行さま!」


 聞き覚えのある涼やかな声に、俺は意識を取り戻した。

 間近で俺の顔をのぞき込んでいるのは、レモリーだった。


「どうも~」


 ゆっくりと起き上がって見渡すと、ミウラサキの姿もあった。

 小夜子も魚面も、虎仮面も、そこにいた。


 グンダリは拘束されたまま、言葉もなくうなだれていた。


「お久しぶりですわね直行さん♩」


 そこに思いもしない人物もいた。エルマだ。

 奴はスフィスと共にサナ・リーペンスの研究室からエルフたちを助け出し、彼らを治療していたはずだ。


「お前……どうしてこんなところに? お前一応総大将だろ?」


 シェルターで待機するように伝えたはずだが、この場にいる理由が分からない。

 シン・エルマ帝国はともかく、敵陣近くに最高責任者が二人もいるなんて戦術上あってはならない。


「ここには小夜子さんとミウラサキ一代侯爵とヒナさんがいると聞いたものですからね♩ シェルターに引きこもっているより安全ですわ♩ ってヒナさんはいないですけどね♪」


 しかし俺の心配など歯牙にもかけず、エルマは邪悪な笑みを浮かべた。

次回予告

※本編とは全く関係ありません


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


エルマ「このお話がアップロードされたのは24年のクリスマスイブ♩ 今年もクリぼっちを楽しんでいますか知里さん♩」


知里「ぼっち前提で言わないでよ。まあ、ぼっちけどさ」


直行「逆にクリスマスを皆で過ごす人の気持ちが知りたいくらいだよな」


ヒナ「忙しいけど、それは楽しいよ! お金も使うけど、人生を豊かにするための自己投資だから! ねえママ?」


知里「ちっ」


直行「次回の更新は12月31日を予定しています。『大晦日だよ恥知らずと鬼畜令嬢FINAL』お楽しみに」


小夜子「この物語も来年には完結するのね」


知里「作者がケーキ作ったり遊んでばっかりだと来年のクリスマスまで続いてたりして」

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