表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
655/733

652話・正論とチラリズム

「ジュントス卿の見解を、ぜひお聞かせください」


 ヒナが身を乗り出して尋ねた。

 胸元が大きく開いたサマードレスが揺れる。

 ジュントスの位置からだと、肝心なところが見えてしまっているのかもしれない。


「今回の件、法王猊下の“ヤンチャ”が過ぎたと思っています」


 むっつりスケベの鑑のような鉄人の形相でヒナの胸元をガン見しながら、慎重に言葉を選んでいく。

 しかし法王批判ともとられかねない、きわどい発言だ。


 俺はいろんな意味で冷や汗がとまらない。


 ヒナは話に夢中で、胸に注がれた熱視線には気づいていないようだ──。

 聖龍をこの手で葬ってしまった罪悪感もあるのだろう、隙のない彼女にしては、あまりにも無防備だった。


「ヤンチャ……ですって?」


「花火大会の決闘は、“お互いの本音がぶつかり合った結果”だと認識しております」


 あごに手を当てて、真剣な表情で述べるジュントスは、堂々と自説を述べた。

 しかし実際にはヒナの胸の谷間をガン見しているに過ぎない。


 時折首を傾け、もっともらしく頷く。

 俺には乳輪の位置を探しているようにしか見えないが、会話の内容は深刻だった。


「本音のぶつかり合い」


 ヒナは前かがみになったかと思ったら、突然上体を起こして髪をかき上げる。

 絶対に、あの位置からだと見えている……!!


 なんだかんだ言って小夜子とは親子。

 ヒナも肌を見られるのが大好きなのではないか、とさえ思えてくる。


 しかし、そんな決定的なラッキースケベを目撃しながらも、ジュントスの顔と言動は真剣そのものだ。


「もちろん法王庁として、勇者自治区のいきすぎた自然破壊は容認できませんよ?」


 ジュントスはもっともらしいことを言っているようだが、言うまでもなく目線はヒナのオッパイから一ミリも逸らしていない。


 正論を言いながらエロスも堪能する。

 何という離れ業だ。


 ジュントスの“正論”はさらに続く。


「……これまで両陣営は、おっかなびっくり触れ合ってきました。知らないものは不気味です。法王猊下は一気にラインを飛び越えた結果、信仰の象徴を失うという最悪な結果になってしまいましたけどね」


「確かにヒナ執政官は、取り返しのつかないことをしました……」


 ヒナは他人のふりをしながらも、肩をすくめて「しゅん」となった。

 両の乳房が二の腕に押され、形を変える。


 おっぱいの変化に、ジュントスの眉が上がった。


「……でもね、希望が潰えた、わけではありませんぞ」


「まさか!?」


 ヒナがさらに大きく身を乗り出した。


 俺の位置からでも、生々しい腋の下から横乳がプルンと揺れ、ばっちり見える。

 たぶん角度が深くなって、より谷間と乳の輪も深く見えているのではないか?


 いや、そんなことよりも、話の核心に迫ってきた。


「ジュントス卿、いま、希望はあると仰いましたか……?」

 

「左様ですな。詳しくは申し上げられませぬが……あります」


 彼の含みを持たせた言葉の意味は、俺には理解できる。


 いま、この世界のどこかでは、知里が魔力によって次の聖龍となる存在を生むため、身を潜めている。

 ヒナたちは法王との戦いの最中で、ハッキリ見ていないとは思うが……。


「ジュントス卿は聖龍さまを失った世界でなお、希望はあると仰るのですか!?」


「左様。ですがそれは結局のところ、人次第ですかな」


「人……」


「……ふむ。拙僧に言わせれば、民草の命が奪われなければいいのですよ。上同士が殺し合って、神をも巻き込んだ戦いであってもね。今回、民間人には、ほぼ死傷者が出ていないでしょう?」


「……はい」


「勇者どのもラー法王猊下も、むやみと民草を巻き込まなかった。そこにね、ちょっと信頼関係を感じましたな。拙僧は民草に新たな世界の希望を見出したいのです」


 ジュントスは勝ち誇ったように笑い、意味ありげな目で俺を見た。

 彼の位置からなら、ひょっとしたら、ヒナのもっとも女性的な突起物をも、目にしたのかも知れない。


 ヒナの乳房を服の上から見切ったことに対する、勝者のうす笑い。


「……ですから、わが法王庁とロンレア領、勇者自治区の3者会談は、民草のために行われるべきです。ねえ、直行どの?」


「え? 俺? ちょっと待て俺?」

 

 ジュントスは突如として話題を俺に丸投げした。

 俺も、ヒナのおっぱいに釘づけだったので、素で反応してしまった。


 この状況で、俺にパスを出してシュートを決めろというのか……?

 

 ヒナのおっぱいをガン見していたと思っていたジュントスから、まさかのパスが飛んできた。


 勇者自治区と法王庁の武力衝突はどっちもどっちという彼の個人的見解。

 3者会談は民衆のために行われるべきだ、という意見。

 そして最後の締めは俺に丸投げしたジュントスは、女体も堪能し、交渉の主導権もとってみせた。


 あのラーが側近に抜擢したのも、納得の采配としか言いようがなかった。


 そして俺のターン。

 気持ちを切り替えよう。

 ここからが交渉の正念場だ。


挿絵(By みてみん)

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「本編の最後、ヒナさんの露出、嫌ですわねぇ♪」


直行「作者はジュントスを描こうとしたらしい。でもむさ苦しいし暑かったので気づいたらヒナちゃんさんを描いていたそうだ」


小夜子「でもこの衣装、どこかで見た覚えがあるわねー」


直行「80年代に流行ったお色気マンガの表紙のパロディらしい」


エルマ「次回の更新は6月23日を予定しています。『アゲ+アゲやるしか騎士』お楽しみに」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今回は(^_-)-☆殿方へのサービス回でございますね(^_-)-☆
[良い点] ヒナの、きっと無意識のお色気に翻弄されるジュントスの視線。直行もいっしょに誘導されながら、読者の鼻息も荒いですな! そんな中で自論をキメるジュントスがみょうにかっこいい(かっこいいか?)笑…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ