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641話・燃えるサンドリヨン城

挿絵(By みてみん)


 真っ二つに切り裂かれ、湖に落ちたはずの量産型魔王が、俺たちの頭上にあらわれた。


「いったい、どういうことだ──」


「私、確かに斬ったよ……?」


 量産型魔王を真っ二つに斬った小夜子。

 間違いなく俺たちは見た……はずだ。


 胸もお尻もほとんど丸出しで、恥ずかしい名前の必殺技を叫び、レモリーの電撃を刀身にまとわせた大技で、量産型魔王を斬り捨てた……。


 彼女が飛び出していった際、早すぎて姿は追えなかったが、すれ違いざまのシャンプーの香りは、鮮明に覚えている。


 そしてレモリーに協力を要請し、電撃をまとわせた太刀を振るった。

 

 小夜子は間違いなく、彼女は魔王をぶった切ったはずだ。


 しかし、何事もなかったかのように、宙を飛んでいる量産型魔王──。

 まったく何が起こっているのか、見当もつかなかった。


「嘘? あれ? でも何これ……幻術か……?」


 考えられるのは、幻術だ。

 暗殺者集団〝鵺〟の頭目が使用した幻術を交えての奇襲が思い出される。

 ガルガ国王暗殺事件の際にクロノ王国が見せたのも、幻術だった。


 魔法のあるこの世界では、幻術はよく使われる戦術だった。


 だが、そんな俺の疑惑をあざ笑うかのように、量産型魔王は主砲を発射した。


「……!!」


 小夜子が身を挺してレーザーの前に立ちはだかるも、攻撃の範囲が大きすぎてカバーできない。

 それに加え、倒したはずの魔王が消え、再度あらわれた現象に気を取られて初動が遅れてしまった。


 極太のレーザーはサンドリヨン城の天守を撃ち抜き、射線上の町並みを吹き飛ばした。

 まったく予期せぬ、ほんの一瞬の出来事に、俺たちは呆気に取られた。


「キャハハハハハ! ざまあ」


 甲高いサナ・リーペンスの笑い声が響き渡る。


 主砲の直撃で天守閣が吹き飛んだサンドリヨン城に、瞬く間に火の手が回った。

 吹き抜け構造が災いしたのか、純白の白は巨大火柱と化す。


「これ、幻術……だよな……?」


「いいえ。幻術の魔力残滓はありません……。いまの被害も……現実です」


 レモリーが言葉を選びながら言った。


 魔力残滓とは、要するに魔法を使った形跡ということだろうか。

 魔法なんて使えない俺には未知の概念だけど、彼女の分析に間違いはないだろう。


 主砲を放った量産型魔王は、再度エネルギーを充填(じゅうてん)させているようだ。

 まともに第二撃を撃たれると、勇者自治区は壊滅しかねない。

 

 その時だった。


「時よ止まれ! ノロマでせっかち!」 


 ミウラサキが飛び出してきたかと思うと、俺の意識は飛んだ。

 ヒナには避難の時間短縮をサポートするように伝えていたけど、彼はこっちにやってきた。


 そして時を、止めたのか──。


「……はっ!」


 ──俺が気づいた時には、彼の魔槍トライアドが量産型魔王のコアを貫いていた。

 

「ナイス! カッちゃん!」


 小夜子が歓声を上げて、ガッツポーズをとる。

 ミウラサキもそれに応えて、拳を突き上げる。


「ちが……嘘?」


 いったい何が起きているのか、見当もつかなかった。

 今度も魔王を倒したはずだ。


 何事もなかったかのように宙を飛んでいた量産型魔王が、炎に包まれたサンドリヨン城の上空にあらわれ、イルミネーションの町並みをめがけて主砲を放っていた。


「何が起きているんだ」


 敵にとって不利益な攻撃がなかったことにされ、こちらの被害だけが積み上がっていく──。

 まるで、リセットボタンを押して、セーブしたところからやり直しているような不可思議な現象。   


「おんどりゃああああーー」


 小夜子が主砲の前に割りこみ、射線を逸らす。

 彼女は自身の障壁能力を覚醒させて、主砲をはじき返した。


 異次元の戦いに、俺の頭は混乱しそうだ。


 こちらの攻撃をキャンセルする敵に対し、ミウラサキの時間操作と小夜子の障壁で被害を最小限には押さえている。


「小夜子ちゃん! いまだ!」


「グレン流剣術奥義! 覇王彗星斬!」


 ミウラサキが敵の時の流れを遅らせ、そこに小夜子の高速移動からの大技剣撃の合わせ技は、無双の極致だと思う。


 俺が見てきた戦いの中でも、ラーVS勇者トシヒコの魔法戦に迫るすさまじい攻撃だった。


 小夜子の斬撃を受けて、崩れ落ちる魔王。

 しかし、次の瞬間にはまるで何事もなかったかのように上空に現れていた。


 まるでゲームなどで倒した敵が再度あらわれるような状況だ。


 時を止め、速度を操るミウラサキでも、時間を巻き戻すことはできない。


「まだまだあ!」


 再度復活した魔王に対して、小夜子とミウラサキは一歩も引かずに町を守り、攻撃を繰り出す。 


 だが、こんな状況がいつまでも保てるわけがない。


 敵は、何らかの能力を発動させている。

 いままで使ってこなかった、リセットのような能力──。


 とてつもない嫌な予感がした。

 俺の最悪な想像だと、敵は「現実改変」あるいは「事実キャンセル」的な能力を発現させている可能性が高い。


 チート能力を相手に、どう戦えというのか──。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません


エルマ「直行さん♪ ついにセイゼで店長に顔を覚えられてしまいましたわね♪」


直行「そりゃあ毎度マグナムボトルとエスカルゴとラム串焼きとプリン頼んでれば目をつけられるよな」


小夜子「でもセイゼリアって客層がバラエティ豊かで、いろんな人がいるわねー」


知里「そうね。シンママと思われる子供連れや高校生カップル、サークル活動してるっぽい高齢者のグループ。意識高い系っぽい男子も一人ワイン飲んでたり」


ネン「……あの、ネンのおとうさんの分もマグナムボトル追加おねがいします」


直行「次回の更新は5月8日を予定しています。『四本追加! マグナムラッシュ!』お楽しみに」


知里「あのさネンちゃん。いくらお父さんに頼まれても子供がお酒を頼むのはダメ。それにお金持ってきてないでしょ」


ネン「おとうさん、〝金ならメガネのデカパイ女に貸りて来い〟って言ってました。でかぱいって何ですか……?」

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