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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
七福人ネオ・ゴダイヴァとの戦い
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634話・メーデー

「メーデー、メーデー、メーデー、こちらネオ・ゴダイヴァ空中研究所。位置はN6300F2147。量産型魔王211号、生体組織を破壊され航行不能。敵はロンレアの〝恥知らず〟夫妻と情婦……」


 空中で崩れ落ちていく量産型魔王。

 断末魔の叫び声を上げながらもがき、緊急救難信号を上げている。


 大量の血液と共に肉片が削げ落ち、ずり落ちるように臓腑が流れ出ていった。


 エルマの奴がどんな“よくない物質”を使用したのかは定かではないが、魔王の内外からの組織が崩れ落ち、大量の血だまりと共に地上へと落下していく光景は、悪夢そのものだった。


 現在俺たちは片肺飛行の空中戦艦の操舵室で、崩れ落ちる魔王の残骸を眺めていた。


挿絵(By みてみん)


 幸いなことに、レモリーの肉体を創造して、魂をつなぎとめることはできた。

 彼女はまだ万全ではないようで、アンナの治療を受けている。


 服を着ていなかったので、アンナの白衣を着せてもらった。

 そのため、ここからだと医者と患者が逆転しているようにも見えた。


 ──それはともかくとして、崩れ落ちる毒々しい魔王の残骸が気になる。


「おいエルマよ。あれ、戦艦(これ)にかかったら嫌だな。俺たちにも影響あるんじゃないのか……?」


「具合が悪くなったらネンさんの回復魔法か、それでもダメならあたくしの肉体生成で治せばいいじゃないですか♪ いやーあたくしのおかげで♪ 命が軽くなりましたわね♪」


 俺の懸念に対し、エルマは悪びれもせずに軽く言い放った。

 まさに有頂天で、付き合うのも馬鹿らしい。


 アンナが空中戦艦を奪い取って、間一髪で脱出した俺たちだが、救難信号を止めることはできずに、敵襲を本国に伝えられてしまった。


 しかも残る一体には逃げられている……。


 新クロノ王国がどの程度の通信技術を持っているのかは定かではないが、出された以上、伝わったと考えて動かないといけない。


「アンナ、どうにか船は出せないか。肉片をかわしつつ、残りの一体を追いたいんだ」


「片肺飛行で、そんな器用なことができるものかッ」


 この状況での最大の懸念材料。

 二体あった量産型魔王の一体は、討ち漏らした挙句、逃げられつつある。

 

「奴が向かう方向は……ロンレア領だぞ!」


 向こうも毒薬とレモリーの攻撃でダメージは与えているはずだが、致命傷には至っていない。


 量産型魔王に宿ったサナ・リーペンスの魂が何をやりだすかは全くの予測不能。

 どうしたって倒しておかなければならない存在だ。


「無理なモノは無理だッ。動力が足りないッ」 


 しかし焦る俺を、操縦桿を握るアンナが制した。

 彼女が言うように、この戦艦は片肺飛行どころか二つの動力を失っている状態だ。 


 両翼の魔王を失った戦艦本体が、魔石で動いているだけの、きわめて不安定な状況といえる。


「せめて勇者自治区から精霊石を入手できれば……だが、現状ではどうすることもできんッ。あきらめろッ!」


 ちょうどそのとき、ラッパ型の通信機が鳴った。


「頼む! どうか妹たちを救ってほしい。変わり果てた姿になっているが、生きている! どうか……」


 スフィスの声も、深刻だった。


 救助に向かったスフィスによれば、エルフたちは人体実験のために原形をとどめないほどの改造を施されているが、生命活動はできているという。


 宙に浮いているのが奇跡だと思えるくらいで、きわめて不安定な状態。

 しかも、この船には実験体の子供たちと、エルフたちが乗っている。


 戦艦は動かせない。

 しかし、もう一体の魔王はロンレア領へと向かって飛行中──。


 俺にできることは、ひとつしかない。


「エルマ、鵺を貸してくれ。ここを頼めるか? エルフたちを助けてやってくれ」


 勝算は薄いとしても、この場をエルマたちに任せて、俺は単騎で敵を追う。

 一方、エルマは自信たっぷりに頷いて見せた。


「直行さん♪ 今のあたくしなら彼らを元の姿に復元できるでしょう♪ まさに女神♪」


 ふくれあがった奴の自信はともかく、この場はエルマとアンナたちに託そう。


 俺は甲板に鵺を回してもらって、量産型魔王を追う。


「私も直行さまに同行します」


 走り出した俺の足を、レモリー土の精霊術でが止めた。


 全裸に白衣をまとっただけの姿なので目のやり場に困るが、彼女は俺の両手を取り、自身の胸に引き寄せた。


「だけどレモリー、まだ新しい体に馴染まないのでは……?」


「いいえ。馴染まない今だからこそ、ドルイドモードを制御するチャンスです。私に仕事をさせてください」


「……? 言ってることがよく分からないが……」


 首をかしげる俺の後ろに回り、おんぶをされるように体を預けるレモリー。 

 

「???」


 俺の頭のなかはさらに疑問符で埋め尽くされた。


「はい。ドルイドモード、再起動いたします」


 しかし、次の瞬間、レモリーの魂がまるで幽体離脱でもするかのように肉体から解き放たれ、光の粒子へと姿を変えた。


 そして俺と、抜け殻となった肉体を包み込んだ光は、甲板で待機している〝鵺〟の元へと一瞬で飛んだ。


次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


直行「今日は皆で焼き肉き〇ぐだ。俺は個人商店が好きなんだが、エルマの奴が行きたいとうるさくてな」


エルマ「見てくださいよこの殺伐とした店内♪ バックヤードは修羅場でしょうね♪ 配膳ロボに道を譲る人間♪ まさに巨大資本のディストピアですわー♪」


小夜子「エルマちゃん褒めてないよねそれ」


直行「まあ食べ放題&飲み放題の明朗会計の焼き肉屋ってのが躍進のキモだろうな」


知里「ワインないけどね。仕方ないからあたしは芋焼酎で」


小夜子「壺漬けドラゴンカルビに厚切り牛タン。すごいボリュームね! エルマちゃんは何食べる?」


エルマ「あたくしはパンケーキとフライドポテト♪ あと期間限定のペヤ〇グソース焼きそば♪ から揚げ♪ 杏仁豆腐♪ ショコラケーキ♪」


直行「焼き肉屋なんだから肉を頼め肉を」


エルマ「個人の自由じゃないですかー♪ こういうお店のサイドメニューが実は当たりだったりするんですわ♪」


直行「次回の更新は4月4日を予定しています。『牛の涙』お楽しみに」

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