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623話・急襲せよ! 空中要塞ザックメド・パズース


 いま俺たちはコンテナの上部に出て、眼下の空中要塞を臨んでいる。


 挿絵(By みてみん)


 二体の量産型魔王を並べた双頭船のような外観。

 カメレオンのように周囲の景色と同化するような色合いなので詳細は分からない。


 周囲の景色を映し出して景色に溶け込んでいる。


 パッと見た感じ全長は100メートル弱。

 10階建てくらいの高層ビルか、ちょっとしたフェリーほどの大きさはありそうだ。


 戦闘員は何人くらいで、どの程度の戦力かも分からない。


 しかし空に上がってしまった以上、静観している余裕はない。

 とにかく奇襲は速度がモノを言う。


「エルマ、召喚獣を先行させよう!」


 俺はエルマに視線を送り、“速攻”をうながす。


「当然♪ そのつもりですわ♪」


 とはいえこちらの足場はきわめて不安定だし、インチキ光学迷彩ではいつ敵に気づかれてもおかしくない。


 先行させた召喚獣で、内部の敵戦力を索敵しつつ、撹乱する。


 敵があまりにも強大だったら、飛空艇で逃げるつもりだ。

 

「出でよ鵺♪ そしてスペクター♪」


 打ち上げられた飛空艇コンテナから、エルマは2体の魔物を呼び出した。

 いずれも暗殺者集団“鵺”から奪い取った召喚獣だ。


 〝鵺〟は、打ち上げた飛空艇を牽引する動力として使役する。


 スペクターは不死系の魔物だ。

 マントを羽織ったガイコツ姿で、禍々しい瘴気をまき散らしている。

 あまりにも物騒なために、日常では使役することはなかったが、戦闘力はかなりのものになる。


「アンナ女史♪ 例のモノを♪」


 エルマの呼びかけに応じて、錬金術師アンナは毒々しいアンプルの束を手渡す。


「紫が眠り薬ッ! ピンクが催淫剤だッ」


 まずは敵の空中要塞にスペクターを先行させ、眠り薬と催淫剤をバラまきながら敵を鎮め、撹乱させる。 


 視界はエルマと共有してあるので、人質を探しながら敵兵の露払いを行う。

 少々乱暴だが、人質を殺させないための突入戦術だ。


 スフィスの妹をはじめとした、行方不明のエルフたちの中に生存者がいるかもしれない。


 失われた森の状況から察するに、エルフたちが生存している望みは極めて薄いのだが──。


「生存者の救出が第一だ。エルフの存在が確認でき次第、俺たちも突入する!」


 だとしても、見捨てるわけにはいかない。


「おっと」


 意気込んだ俺は、危うくバランスを崩して落ちそうになった。


 鵺の牽引する飛空艇のコンテナの上では、絶えず風にあおられた状態だった。


 それでも落ちないのは、レモリーとスフィスの操作する風の精霊によってコンテナの姿勢制御が保たれているからだ。


 位置取りも空中要塞の上を取っているが、エルマによるインチキ光学迷彩にいつボロが出るかは分からない。

 敵に気づかれたらこちらに回避する手段はない。


 現在、先行させたスペクターと視界を共有しているエルマが索敵中だ。


「見えましたわ♪ 中央部に研究室発見……これは」


 エルマの顔がみるみる曇った。

 先ほどまでの調子に乗っていた表情からうって変わって、強く眉根を寄せた。


「ジャリーズに護衛させつつ、突入しますわ。現場での戦闘指揮は直行さんに一任します!」


 そう言って、さらに5対のコボルト、チーム・ジャリーズを召喚する。


 ガスマスクにローラースケートを履いているがパンツ一丁で何とも微妙だが、まあいい。

 召喚獣を戦術に組み込むことで戦力の不利を補うのだ。


「レモリー、スフィスさん、援護を頼みますわ♪」


 エルマが先ほど何を〝見た〟のか分からない。

 しかし、奴は真っ先にコンテナの端に立つと、眼下の空中要塞を睨みつけた。


「突入しますわ。直行さんも、あたくしに続いてください」 


「いや、ダメだエルマ。鵺と飛空艇の制御は誰がやる? コンテナを地上に落とすわけにはいかないし

……」


 突入する気満々だったエルマを止めた。

 奴は自称・皇帝でロンレア領の総大将だ。

 

「王将取られちゃゲームオーバーだ。エルマは俺たちが帰る場所を守りつつ、ナビを頼む」


 俺はガスマスクを装着しながら、突入準備を整えた。


「直行さんだって王将なんですからね♪ 取られたら終わりですわ♪」


 すでに空中戦艦からは桃色の煙が上がっている。


 先行させたスペクターが、撹乱してくれているようだ。

 次いでローラースケートのコボルト軍団に援護をさせつつ、俺たちは研究室を急襲する。


「行くぞ! 飛べ! 頼むレモリー!」


 まずはコボルト軍団が一斉に大ジャンプ。

 風の精霊の加護を受けて、空中を華麗に舞い、空中戦艦のカタパルトに着地する。


「スフィス! アンナ! せーので飛ぶぞ! せーの!」


 俺たち3人も一斉に空中戦艦に飛び移る。 


 落ちたら即死の高度だが、レモリーの精霊術によって姿勢制御され、俺たちも無事着地。


 最後にレモリーが飛び移り、全員が空中要塞に降り立った。

 

 船内に突入する前に、俺は通信機を取り出し、エルマを呼び出す。


「研究室までのルートをナビしてくれ」 


 コボルト軍団の中のリーダー格の中年体形の白い奴が、ナビ役を務める。

 先行させたスペクターとの視界を共有しているエルマの指示を受けての、現場での先導役だ。


 その周囲をローラースケートを履いたコボルト軍団が取り囲み、俺たちの護衛を務める。

 敵の不意打ちに対する予防策だ。


「アンナは睡眠剤を投げまくれ! レモリーは風の精霊術で向こうにガスを充満させてくれ! スフィスは敵を迎撃しつつ遊撃!」


 俺たちの電撃作戦は完璧に機能したかに見えた……。



次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「いよいよ始まりましたわ♪ ヤマザキ春のパン祭り2024♪」


知里「東映まんが祭り、花王ヘアケア祭りもなくなった今、唯一残った日本三大祭りだね」


小夜子「伝統を守るのって難しいのね」


直行「まさにいま、パン祭りも大変な状況になってるんだ」


知里「どういうこと?」


直行「例のフランス製の皿あるだろ? 実はスエズ運河を越えた紅海で、イエメン武装勢力フーシ派が貨物船を攻撃しているらしい。だから欧州からの商船は喜望峰ルートに迂回しているようだ」


小夜子「それでお皿の入荷が遅れているのね。さすが三大祭! スケールの大きな話ねー」


エルマ「海賊ですか♪ 知里さん出番ですわ♪」


直行「次回の更新は2月14日を予定しています。『知里VSフーシ派武装勢力!』お楽しみに」

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