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622話・地中からの急襲


 鏡によって身を隠した空中からの狙撃者──。

 

 俺たちが籠った地下の真上では、狙撃というよりも、絨毯爆撃のような一面に爆発音が響いている。

 攻撃手段は不明だが、ただ者ではない。


挿絵(By みてみん)


 ──現状、戦局は睨み合いの膠着状態だった。


 しかしエルマには必勝の策があるという。


「土くれを使って、あたくしたちの“遺体”を偽装します♪」


 左右に従えた精霊術師レモリーと錬金術師アンナに耳打ちをしたかと思うと、自身は中空に魔方陣を描き出し、続けざまに自身の『複製』能力によって術式ごとコピーを行う。


「爆撃が一区切りついたら、敵は“遺体”を確認するでしょう♪ その隙を見計らって奇襲をかけますわ♪」


 コンテナ内部に描かれた魔方陣で起動した空間転移魔法。

 さらに複製された術式を次々に『複製』し、なんとエルマは地中での転移を行おうとしている。


「さてコチラも偽装工作だッ! いくぞ金髪メイド情婦ッ!」


「はい! 行きます」


 アンナの合いの手とともに、レモリーは土の精霊に命じ、俺たちを模した土くれ人形を作り上げた。


 そこにアンナが真っ赤な薬品を口に含んだ毒霧を眩し、偽装遺体に仕立て上げた。


「あたくしの合図で♪ レモリーはダミーを地上に押し上げなさい♪ 同時に地中を転移♪ いきますわよ♪ せーの……♪」


 エルマの号令と共に、レモリーは土の精霊術を使って偽装遺体を地上へと運ぶ。


 さすがに地中のコンテナを一瞬で移動させるだけの力は精霊にはないため、エルマの空間転移魔法と併用しながら、


「まるでモグラだな」


 スフィスは目を丸くするが、俺も同様だ。


 エルマの策はダミーの遺体を地上に上げつつ、自身はコンテナごと地中を瞬間移動、さらには位置を変えてそこからの奇襲。  


 ダミーの遺体を晒しつつ、地中で位置を変えて敵の出方を待つ。


 相手が俺たちの遺体を確認しに降りてきたとき、入り違うようにコンテナを上空に打ち出して空から奇襲をかける。もちろんコンテナには光学迷彩を施して、簡単には分からないようにする。


 少々危なっかしい気もするが、鬼畜令嬢エルマらしい戦法だ。

 

「……うおっ」  


 とはいえ地中に描いた空間転移の門は不安定だった。


 ましてや地中を移動するなんて無茶もいいところで、コンテナはすさまじい衝撃にみまわれた。


 ありえない角度にコンテナが傾き、俺たちはコンテナ内を落下する。


 さらに頭上から落ちてくる椅子と荷物。

 どうにか両腕で頭を守ったものの、目が回るし吐き気もしてくる。


 イチかバチかの奇襲の前に、なかなかしんどい状況だ。


「さぁて目には目を♪ ローテク光学迷彩には光学迷彩を♪」


 どういうわけだか元気なエルマが、続けざまに魔法陣を描き出す。


 奴の戦略では、このまま地上に空間転移し、さらにそこで光学迷彩を施した鵺にけん引させてコンテナごと上空に舞い上がり、奇襲をかける。


 魔法陣と術式そのものを何度も『複製』し、さらに細部を微調整することで最小の労力と魔法力消費で大技につなげる。


 それに加えてレモリーが精霊術で援護、錬金術師アンナもマナポーションなどでサポート。


 まったく統一性のない三者の連携が見事に決まって、地中のコンテナは鵺に引っ張られて上空へと舞い上がった。


 しかも、周囲の景色を『複製』した布に隠れて、ステルス状態で敵の頭上をとった。


「……でけぇ」


 だが、誤算だったのは、敵の姿がこちらの想定を超える大きさだったことだ。


 それを一言でいえば、空中要塞。


 鏡によってコーティングされているが、下部は二対の人型のシルエットが、円盤を背に乗せたような奇怪な姿──。


「……魔神? ……いや、あれは量産型魔王か……?」


 スフィスも愕然としていた。


 青空に同化しているものの、ところどころ光の反射で見える姿かたちは、ロンレア防衛線を戦った者ならばピンとくるシルエットだ。


 量産型魔王──。


 俺は知里とヒナと小夜子から断片的に聞いた情報を繋ぎ合わせて整理してみる。


 ──かつて勇者トシヒコらの一団が激闘の末に倒し、存在ごと消し去ったという魔王。


 しかしどういう訳かクロノ王国が量産化に成功させた。


 第一次ロンレア防衛戦争では、子供の念波によって稼働していたものを、知里が闇魔法の〝死神の鎌〟で討ち取った。


 ……ここだけの話だが、実は量産型魔王の残骸はウチでも回収してアンナの研究所に送ったのだが……。


「派手な絨毯爆撃は、量産型魔王の仕業かッ?」  


「それにしたって、偽のSОSでおびき寄せて魔王をぶつけてくるとは、派手すぎないか」


 必要以上の大火力によるオーバーキルではないか、とは思う。


「いいやッ。領主夫妻と虎の子の錬金術師がゾロゾロと集まってきたので、わざわざ魔王を出撃させたのだろうさッ」


「お話はそこまで♪ 直行さん♪ レモリーもスフィスもガスマスクをどうぞ♪」


 エルマはそう言って、どこからかガスマスクを人数分取り出した。

 

 それは花火大会のときに法王に命じられて召喚したモノと同型のダブルフィルタータイプの防毒マスクだ。


「あたくしとアンナ女史で先行して毒攻撃します♪ 直行さんたちはディンドラッド商会にやったみたいに電撃作戦を決行♪ 制圧して下さいな♪」


 エルマの顔が邪悪に歪んだ。


 

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「このお話がアップロードされた24年2月5日は南岸低気圧で関東地方に雪の予報が出ていますわ」


知里「地域によっては大雪警報も出てるっぽいね」


エルマ「雪の日は宅配ピザ屋さんが繁盛するんですわよね♪」


直行「おいエルマ悪天候のときに限って注文するのはやめろよ。大事故につながるし危険だぞ」


知里「店長の判断でお店を閉めるところもあるみたいだけどね」


直行「SNSとかで悪天候の中で宅配する姿を見ると心が痛むよな」


エルマ「雪に埋もれてければ次回の更新は2月10日を予定していますわ♪ ガンガン行きますわよ♪『イタリアンバジルL10枚大注文♪』お楽しみに♪」


知里「アンタ本当に鬼畜だね」

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