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571話・神ならざる者として

「神殺しをするか……」


 ついに勇者トシヒコによる聖龍討伐指令が出された。


 ラーは静かに、自身が置かれた状況を考える。


 (まさか本気で異界人が人々の信仰の対象である存在を抹殺するのか──)


 勇者は聖龍を「広域を破壊する兵器」と位置づけた。


 異界人たちの街、勇者自治区を守るためにも脅威は排除すると決断した。


 ラーは耳をすまして勇者パーティの声を聞いていた。

 声のみならず、心音、息遣い、体の震えにいたるまで、彼らの発するありとあらゆる音を聞いた。


 仲間たちもそれぞれの思いのままに、聖龍と対峙する覚悟を決めた。


 当然、法王としては絶対に看過できない状況だ。


(本気でやるつもりなのだな──)


 聖龍を後ろに下がらせていた法王は、自ら前線に出て勇者一行を迎え撃つ構えをみせた。


「小僧の相手は俺がやる。ヒナちゃん! ミウラサキ! 小夜ちゃん! あのデカブツは任せた!」


 トシヒコは右手を上げて一行に指示を出した。


「了解」


 はじめにミウラサキが飛び出し、次いで小夜子とヒナが続いた。


 彼らはそれぞれの思いを胸に、聖龍討伐へと向かう。


 いくつもの死線を越え、過酷な魔王討伐戦を最後まで戦い抜いた勇者と仲間たちの結束は揺るぎないものだった。


 トシヒコに「任せる」と一任された彼らは、それぞれの長所を活かしてベストを尽くす。


「……させるものか!」


 ラーがそれを阻止しようと“切り裂く光弾”を放ったが、トシヒコの太刀“濡れ烏”の斬撃によって

かき消された。


「もう忘れたのかい? おまえさんの相手は俺様だ」 


 トシヒコはさらに間合いを詰め、法王の喉元に切っ先を突きつける。


挿絵(By みてみん)


 それでもラーは動じることはなく、至近距離から爆発魔法を放つ。

 しかし爆風はトシヒコの放った重力操作に吸い込まれていき、一瞬でかき消された。

 

「“人殺し”をやるのは俺で十分だ。仲間たちにはさせられねえ。ウチの国民は守る。危険物は排除する。一度に全部やんなきゃならねえが、勇者の仕事ってのは大抵無茶なもんだからな」


 トシヒコは肩をすくめながら笑った。


 ここへきてずっと険しい顔をしていた彼が、珍しく表情を崩した。

 しかし久しぶりのトシヒコの笑顔には、暗い影が差している。


 これまで何度となく対峙してトシヒコとラー・スノール。

 その度に、凄惨さを増していく戦場。


 トシヒコの聖龍討伐指令は仲間たちに、法王と殺し合わせないようにするための配慮でもある。


 実際、小夜子やヒナの性格的に、生身の青年である法王と命のやり取りができるとは思えない。


 ヒナたちが臨戦態勢で聖龍の元へと飛んでいく。


 アイカはそれを、祈るように見送った。


 彼女が差し出し、ヒナに移植された両腕にはアイカの“思い”も籠っていた。

 超人ではない者が、命を投げ出してつなげた“未来への思い”。


「……聖龍よ。この世界における神の代理人として、脅威どもを焼き払え」


 一方ラーは静かに聖龍に命じた。


「神の代理人……か。それも今日限りにしてもらうぜ」


 再度トシヒコの表情から笑みが消え、険しい表情を浮かべた。


「おれも神じゃねえがおまえも違う!」


 そして一喝する。


 その言葉は法王にも、自身にも言っているように思えた。


「さあラー・スノール! 人間同士一対一(サシ)で戦ろうぜ」


 太刀“濡れ烏”の切っ先を法王に向けて挑発するように構えるトシヒコ。


 対するラーは丸腰だったが、ゆるやかに構えた両腕からは圧倒的な魔力を宿している。


 両者睨み合ったまま、しばらく沈黙が続いた。


「勇者トシヒコ。相手にとって不足はない。宴も幕を引き、花火も消え失せた。どちらが消し炭になるか……兄王ガルガの名にかけて。ラー・スノール、再度参る」


 勇ましく名乗りを上げ、トシヒコに立ち向かう法王ラー・スノール。


 彼が両腕を振り上げると、一振りの黒い大剣があらわれた。


「それ、ガルガのグラム・レプリカじゃねえか! いくら兄貴の形見だって、そいつはクロノ王国の国宝だろ……?」


「貴方を倒すためだ。手段など選んではいられない」


「フン! ヒナちゃんよりも細っこい腕で、そいつを振るえるのかよ!」


 トシヒコが戯れるように斬りかかると、ラーは召喚した大剣を魔力で操り、濡れ烏の斬撃を弾いた。


「わが兄の太刀筋は真似できないが、魂は受け継いでいく。〝この世界はわたしたちのものだ〟」


「ぬかせ!」 


 トシヒコの太刀とガルガの大剣が火花を散らす。

 ラーは大剣に触れているわけではないが、まるでそこにガルガの腕があるかのように自在に操り、トシヒコの太刀と渡り合った。


 すさまじい剣圧と魔力の渦が、“安全圏”とされた直行たちの場所にも届く。


「さすがの天才法王サマも、焦ってるようだな。俺様が単なる陽動だって気づいてるようだ」


 トシヒコとラーの剣がつばぜり合いのような格好になったときに、勇者が言った。


 この戦いの勝利条件はすでに聖龍討伐へと移行している。


 攻める側の主力はヒナとミウラサキで、聖龍を討つ。

 守る側のラーは、トシヒコが釘づけにする。

 小夜子はフリーで障壁の援護。


 勇者トシヒコは決闘の落としどころを聖龍討伐へと移行し、攻守を入れ替えていた。


 彼が鮮やかに描いた戦術転換の盤上で、天才と呼ばれた法王ラーも踊らされたということになる。


「小僧。俺様に本気のケンカを挑んだのは褒めてやる。だがまだ俺様は底を見せちゃいない……」


 畳みかけるようにトシヒコがラーを挑発した。


「ドルイドモード」


 不意にトシヒコがつぶやいた言葉に、レモリーはハッとしたように青ざめた。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


知里「作者がAI自動イラストをはじめたみたいね」


挿絵(By みてみん)


小夜子「うわー知里ソックリじゃない!」


エルマ「どこかで見たような某マ〇マさんのテイストも感じられますわね♪」


知里「ちなみにお小夜はコレ」


挿絵(By みてみん)


小夜子「ウッソー、ホントー、信じられなーい!」


知里「よく見るとセーラー服おかしいし、変なピアス開いてるし、指が七本くらいあって微妙に閲覧注意だけどね」


※あえて修正せずに収録しています。


エルマ「作者の人も描かなくて済んだんだから楽じゃないですか♪ どうせなら本編もAIに描いてもらいましょうか♪」


直行「次回の更新は7月4日を予定しています。『AIに乗っ取られた恥知らずと鬼畜令嬢』お楽しみに」

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、AIだとこんな感じなのですね。 いつかは知里サマのFAを描きたいなあと思っていますので参考にさせていただきます。<m(__)m>
[良い点] 「さあラー・スノール! 人間同士一対一、サシで戦ろうぜ」  もしかしたらそこは法王ラーの世界なのかもしれない。しかし、トシヒコは譲れない。それは異界人としてより、一個の人間として。ラーを…
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