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561話・駆けつける知里

挿絵(By みてみん)


 知里が魔槍トライアドを持ってやってきた。


「…………」


 彼女はあまりの惨状に、目を疑っていた。


 すでにヒナが戦闘不能の重傷で、小夜子も大やけどを負っている。

 ミウラサキにいたっては危篤状態だった。


「法王さま! こういうのはよくない!」


 知里はラーを叱りつけた。

 なぜ、そんな言葉が出てきたのか自分でもよく分からなかったが、思わず口走ってしまった。


(心を読んで、ある程度の事情は知ってるつもりでも……これはあまりにも)


 法王の攻撃の手が止まった。


 一方、暴れまわる聖龍は止まらない。


 トシヒコを執拗に追い回しながら、超火力による体当たり攻撃を繰り返す。

 勇者は聖龍を相手に立ちまわるので精いっぱいの状況だ。


「トシヒコ! アンタらしくもない! どこかの国民的RPGじゃないけど〝勇者とは決してあきらめない者〟じゃないの!」


 トシヒコの心を読んだ知里が叱咤する。


「おいおいおい! クソ猫を追いかけて勇者パーティと乱戦かよ! ついでに狩るかい? 勇者をよォ」


 勢いよく蛇腹剣を振るうグンダリと、それを庇うパタゴン・ノヴァ、そして中距離から闇魔法を放つソロモンという異色の戦闘集団が乱入してきた。


「返り討ちになっても知らんぞグンダリ! くれぐれも法王猊下の邪魔だけはしてくれるな!」


「うるせぇ! 偉そうに命令すんなソロモン!」


「2人とも仲良くしてくれねえと、命がけで守ってるおいら、無駄死にだよお」


 知里に斬撃と魔法攻撃を同時に放ちながら、言い争うグンダリとソロモン。

 やや遅れたタイミングで、巨漢パタゴンの拳の乱打が続く。

 

 それを魔神の腕で薙ぎ払った彼女は、3人には目もくれずにヒナとミウラサキを抱えて花火大会会場の方へと飛翔していった。


「知里……」


 さらなる混迷で、にわかに慌ただしくなった戦場で、法王ラーは難しい顔をしてうつむいていた。


(彼女が勇者パーティに加勢するようなら、厳しくなるな……) 


 かといってソロモンら〝七福人〟をこちらに引き込んだところで、うまく連携が取れそうもない。

 

「……」


 加えて意外に厄介なのが、小夜子の障壁だった。


 いつもの桃色の障壁とは違い、深い青色の障壁は影のように長く伸び、ラーの全身をも包んでいた。


 それを再三に渡り障壁の破壊を試していたが、破れない。


 女戦士に攻撃の意志がないことは救いだったが、膠着した状態は打ち破れそうになかった。


「お小夜が法王さまを引きつけてる間に、カレムの治療をするよ! トシヒコ! ボーっとしてないでフォローしなさい」


 とは言うものの、知里には回復魔法が使えなかった。


 この場にいる唯一の回復役はヒナだが、両腕が壊死してしまい、まともに魔法が使える状態ではない。


「カレム。時間操作は自分に使わないと死んでしまうよ……」

 

 知里はミウラサキを抱えるヒナの元まで接近し、傷口付近に魔槍トライアドを置いた。


 そして魔槍の特殊能力、時間操作を発動させ、彼の周囲を流れる時間を遅らせる。


 ほんの気休め程度だが、出血を遅らせ、絶命までの時間を延長することができた。


「ちーちゃん……」


 意識のないミウラサキに代わって、ヒナが礼を言った。


「ヒナ、アンタその大怪我じゃ魔法が……」


 知里はヒナの両腕の傷を見て、顔をしかめた。


 白くしなやかだった彼女の腕が、赤黒く変色してだらりとぶら下がっている様子は、同性としても痛々しく思えた。


(この傷は回復魔法じゃ治らない……ヒナはもう、魔法が使えないのに、それでもカレムを助けようとして……)


 知里の顔が曇っていった。


 駆けつけてはみたものの、他になすすべもなかった。


 魔槍の特殊効果で時間を遅らせることぐらいしかできなかった。


(回復が使えないあたしの力じゃ、どうにもなんない……) 


「うおおおおお! 隙だらけだぜクソ猫!」


 それどころか、余計な敵まで連れてきてしまう始末。

 グンダリが蛇腹剣を伸ばして知里を狙う。


「アンタは引っ込んでろ」


 知里は二対の魔神の腕を飛ばし、グンダリの胴体を弾き飛ばし、湖に落とした。


(どうする? この状況を打開するためには……)


 知里にとってグンダリは親友の仇だが、今はそれどころではない。


 一刻の猶予もなかった。ミウラサキの命は消えかけている。


 彼女は、睨むように勇者トシヒコを見た。


「…………」 


 しかし、この状況下で、勇者トシヒコは動かなかった。

 本来であれば、率先して状況を打破すべく動く男が、聖龍を引き付けるのに精いっぱいだった。


 超高温の炎をまとって突撃してくる聖龍の攻撃を防ぎ、仲間たちに被害が及ばないように〝重力操作〟で巨体を上空に弾き飛ばす。


 聖龍は止まらない。


 一瞬でも気を抜けば、仲間たちに被害が及ぶ。

 トシヒコは聖龍を引きつけながらも、口を真一文字に結び、何かを考えていた。

 

 彼の頭にあるのは、ある重大な選択肢。


次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「知里さん“ティアキン”やってますか『ゼリグの伝説・ティアーズオブキングダム』!」


知里「ゼルダね。前作ブレワイがゲーム史に残る傑作だったけど、果てしなく上がったハードルを越えてきたわね」


直行「想像力を刺激されるのハンパねえな。その辺に落ちてる板なんかを組み合わせてイカダを作ったり気球にしたり、盾に火炎放射器をくっつけたり、剣に岩くっつけてハンマーにしたり。マ〇ンクラフト的な工作が楽しいよな。でも敵強えぇ」


知里「ゲームに明け暮れてきたあたしが、驚かされるゲームなんて。マジで時間ドロボウだよね」


直行「時間が溶けていくよな」


エルマ「そんなわけで次回の更新が怪しくなってきましたが、5月22日を予定していますわ♪」

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