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559話・無敵の理由1


 勇者パーティは、ヒナが両腕の壊死、ミウラサキが両足の欠損という取り返しのつかない事態になった。


 さらにラーの追撃は続く。


 壊滅的状況が迫る。

 ここでパーティの守り手である小夜子は奮起した。


「絶っ……対に守り抜く! 負けるもんかぁー!」


 超加速した隕石を体当たりで受け止めた小夜子。


 致命傷を負って、空中に浮かんでいるだけのヒナとミウラサキを庇った。彼女の体を張った抵抗で、隕石の直撃を避けられた勇者たちは全滅を免れた。


 しかし小夜子自身も両腕に大やけどを負ってしまった。


 彼女が持つ無敵の防御障壁能力、『乙女の恥じらい』は、本人の羞恥心に比例して防御能力が上がる。

しかし今回は夢中だったために、障壁の発現が不十分だったのだ。


「ダメージが通ったな」


 ラーは冷酷に見抜き、次の攻撃手段に出た。

 無数の魔力弾を、小夜子とその奥にいるヒナとミウラサキに放った。


「悔しい。わたしがもっと上手くやってれば……」


 この状況下で、小夜子は別次元の障壁を発動させた。


挿絵(By みてみん)


 青い波動の障壁が、魔力弾を無効化する。


 いままでの桃色の障壁は、自身を中心としたわずかな範囲が防御の対象だったが、青色の障壁はより広範囲に防御障壁が発動する。


 仲間たちが次々と倒されるなか、彼女は〝守れなかった自分を恥じる〟ことで、新たな防御障壁の覚醒にいたった。


「小夜ちゃん、助かったぜ……」


 礼を言いながら、トシヒコもまた悔いていた。

 一瞬の判断ミスで、戦局が大きく動いてしまった。


「……くそ、ブランクは言い訳にできねえが」


 彼にとってミウラサキとの口論と、止められた時間のなかで法王の罠を解除できなかった二点が、壊滅的な状況を作ったことに、トシヒコは唇をかみしめた。


 魔王討伐から流れた6年もの平穏な日々は、確実に彼の戦闘時の判断力を鈍らせていたのだ。


 そんなトシヒコの心の隙をつくかのように、聖龍が容赦のない熱源攻撃を繰り出す。

 と、同時に超高速での体当たり──。


 しかし、聖龍の動きが鈍った。

 瀕死のミウラサキによる、時間鈍化の能力が発動していた。


「ミウラサキ……」


 トシヒコが彼の方を見ると、ヒナに寄り添われながら、息も絶え絶えの様子で時間操作能力を発動していた。


「カレム君、無理しないで! キミは戦いを止めたがってたのに! それなのにこんなむごいことをするなんて! 法王さまは非道です!」


 ヒナはミウラサキを回復させながら、激昂した。

 自身も両腕が壊死してするにも関わらず、彼女は激痛に耐えながら仲間の回復を最優先させている。


 しかし回復魔法はほとんど発現しなかった。


 それでもヒナは力の限りミウラサキを回復し続けた。


 ほんのわずかでも、彼の痛みが和らぐように祈りながら。


「彼の心は8歳で止まったままなのに! 純粋に争いを止めようとした人に対して何てことを!」


 弟のように思っていたミウラサキの命が尽きようとしている。

 ヒナの目から涙が止まらなかった。


 息も絶え絶えのミウラサキを抱きしめる。手が動かないので、体を寄せる。


 ミウラサキの大腿部から両足を失った出血を止められずに、このままでは失血死は避けられようもなさそうな状態──。


 空に浮かんだ重傷者2人は、法王にとっては格好の的だった。


「これで本当の終わりだ」


 勇者パーティが動揺しているなか、ラーはありったけの力をこめて〝切り裂く光弾〟を放った。


「これ以上みんなを傷つけさせない! わたしの命に代えても!」


 小夜子に一瞬の迷いもなかった。


 四肢を切り裂く光弾をものともせずに、法王に体当たりした。


 彼女の全身から血しぶきが舞った。しかし、両手両足が切断されることはなかった。

 仲間を守りきれなかった〝恥〟の意識が青い障壁を発動させる。


 小夜子はさらに両腕を広げて、障壁を広げて法王を包み込んだ。


 ほとんど無意識の行動──。

 障壁にラーを閉じ込めることで、外部への攻撃を阻止した。


「……!!」


 ラーが瞬間移動で逃れようとするが、青い障壁に阻まれて魔法は発動されなかった。


 小夜子の闘気に気圧されたことで、一手、詠唱が遅れたことも影響していた。


「ならば障壁内から打ち破ってやる」


 小夜子の障壁内に囚われたラーが、至近距離から〝切り裂く光弾〟を連発するも、自身を捕らえた障壁を切り裂くことはかなわなかった。 


(……まさか、この女戦士の障壁能力は……!!)


 障壁の内部に囚われたラーが感じた、小夜子の不穏な波動と時空のゆがみ……。


 それは魔法研究と同時に、法王として死者の魂を送り出してきた立場だから感じることができる、。


「女戦士よ。貴女の障壁はダメージを自身が死んだ未来に送っているのか……!?」


 ラーは小夜子の障壁能力の真の力を理解した。


 『乙女の恥じらい』の情報は、ジュントスからの報告で把握していた。

 トシヒコによる能力付与で、羞恥心の強さに比例して防御力が上がるという。


 魔法研究者でもあったラーには、その能力があまりにも不条理なことに疑問を持っていた。


 無敵の障壁がどこからもたらされているのかも分からなかった。


 なぜ、恥じらいなどという精神的な要素が物理防御障壁の起因となるのか──。


 しかし、たったいま理解できた。


 小夜子という女戦士は、自身の死後に、ダメージを先送りしている。

 〝恥じらい〟という感情は、単なる起動スイッチに過ぎない。


「……この障壁は死の臭いがする」



次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


知里「パリピ☆仲達がドラマ化するんだってね」


エルマ「世間では『マンガ原作の実写化は地雷』なんて口さがない言葉がありますけど、成功してほしいですわね♪」


知里「まあね。原作改変とか、ラッパーの配役とか、見どころは多そうね」


直行「あれ? ちょっと待て仲達だっけ? 孔明じゃなかった?」


エルマ「どっちでもいいじゃないですか? あたくしたちには無関係♪ 『恥知らず~』も実写化してほしいですわ~♪」


知里「次回の更新は5月15日を予定してるわ。『パリピ対決! 死せる孔明、生ける仲達を走らす』の巻。お楽しみに」



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