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552話・針の上で天使は何人踊れるか4

◇ ◆ ◇


 法王庁の貴賓席周辺や、下層の諸侯たちの間では大きなどよめきが起こっていた。

 賢者ヒナ・メルトエヴァレンスの魔法能力が、これほどまでとは思いもしなかった者も少なくない。


「会場が……飛んだ……だと?」


「なんと! 異界人の奴らの能力か……?」


「聖龍さまの御前で余興を?」


 聖龍に祈りをささげていた法王庁の聖騎士たちからも戸惑いの声が上がった。


「あれは異界の脱出装置ですな。聖龍さまのご威光に恐れをなした異界人たちが、尻尾を巻いて退散するのでしょう。さすがは聖龍さまですな」


 ジュントスが適当な思いつきで誤魔化した。

 

 直行からは〝撤退〟の指示が出ていたが、聖龍があらわれた以上、法王庁の人間でこの場を立ち去る者はいない。


 ましてや、法王が勇者パーティと戦っている状況を、信徒たちは目の当たりにしている。


 〝異界かぶれ〟〝王族上がり〟とも陰口を叩かれたラー・スノールが繰り出す激しい魔法戦は、見る者すべてを圧倒するほどの迫力だった。


「リーザ殿。飛竜を出せますかな? 念のため我らがこの場にとどまることを法王猊下にお伝えしましょう」 


「はっ」


 ジュントスの指示に、姫騎士リーザが頷いた。彼女は法王の船出を空中から警護するために飛竜に乗って来ていた。


「……その必要はない。ジュントス、話は聞いている」


 突然、ジュントスとリーザの目の前に光の精霊が現れ、法王の声を届けた。


挿絵(By みてみん)

 

 法王自身ははるか先の湖上で、聖龍を操りながら勇者一行に光弾を撃ち続けている。そのためか若干、息が上がっている声だった。 


「法王猊下! 異界人討伐! 私も助太刀いたします!」


 リーザは反射的に口走ってしまった。


 遠目ではあるものの、たった1人で勇者一行と戦うラーの姿を見たリーザの血はたぎっていた。


 法王の戦闘能力が、ここまで桁外れなものだとは思わなかった。


 王族生まれのラー・スノールの〝千年に1人〟といわれた魔法の才能は耳にしていたが、実戦派だとは思わなかった。今の今まで学者肌の研究者だとばかり思っていたくらいだ。


(魔王を討伐した連中を相手に……たった1人で互角以上に戦っている……!!)

 

 先代の法王とは真逆に、異界の技術に興味を持っていたラーに対して、リーザは懐疑的な気持ちを持っていたことを恥じていた。


 それに加え、聖龍もあらわれた。


 幼い頃、魔物の群れに襲われた家族を助けてくれた〝奇跡の存在〟。


「身命を賭して聖龍さまを守護します。肉の壁にでも使ってくたぜさい!」


「これ! リーザ殿! 生娘がめったなことを言うものではありませんぞ! 肉の壁など」


 ジュントスの声は、リーザに届かなかった。


「異界人どもは人の死を嫌います。私が射線に入れば勇者たちも躊躇するはず」


 彼女とて、法王や勇者たちとの実力差は承知している。


 おそらく足手まといになるだろうし、弾除けにもならないで死傷するだろうが、聖騎士として、世界最高峰の戦いに身を投じたい思いが湧き上がっていた。


「ならぬ。リーザには法王庁の席を守ってほしい。私も気をつけるが、勇者どもの流れ弾がそちらに行くかもしれない。信徒たちの守護は任せる」


「ですが……!」


 食い下がろうとするリーザに、光の精霊ゆっくりと点滅しながら近づいてきた。 


「そなたの力は殉教するためにあるのではない。リーザがその場を守ってくれるなら、私も安心して異界人たちを全力で討つことができるのだ」


 法王の声は静かに諭すようだった。


 光の精霊の温かな熱がリーザに伝わり、彼女の中で燃えていた殉教への熱情を鎮めた。

 聖龍騎士団のなかでも狂信的な一派に所属していた彼女だが、信仰よりも聖騎士としての任務を優先することを決めた。


「……はっ! どうかご武運を!」


 リーザは愛剣を抜き放ち、胸の前に捧げた。

 

 彼女の瞳は決意に満ちていた。 


(法王猊下のために、私の全てを使おう)


 紅の姫騎士リーザが祈ると、正面にプリズム状の多面体が出現した。

 彼女が使用できる〝神聖魔法〟の最上位技、『光弾障壁』だ。


 この世界の物理や魔法の法則を無視できる小夜子の『絶対障壁』ほどではないものの、射線に入った光弾などの魔力波の軌道を〝逸らす〟効果がある。


(私にできることは微々たるものだが、命に代えてもこの場を死守してみせる)


 リーザが見上げた先では、法王が王笏を高く掲げて応えた。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


直行「あれ? レモリー。シャンプー変えた?」


エルマ「さすが気づきましたか直行さん♪ 以前流行った〝女子高生の香り〟になると話題のボディクレンジング〝デオ子〟ですわ♪」


知里「あのJK特有のピーチやココナツのような匂いラクトンが配合されてるっていう……」


レモリー「私は学徒ではありませんが、お嬢様がどうしてもつけろと申しますので」


エルマ「中年のレモリーが女子高生の香りって、直行さん好みじゃないですかー♪」


直行「いや、どうかな。女子高生の匂いって基本的に柔軟剤か制汗剤だろう」


エルマ「直行さんも使ってみたら、デオ子おじさんですわー♪」


直行「いや、俺は未成年者に興味ないし」


エルマ「次回の更新は4月16日を予定していますわ♪ 『デオ子おじさんとおばさんの巻』お楽しみに♪」

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