表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
552/733

550話・針の上で天使は何人踊れるか2


 聖龍の突撃を避けながら、ヒナは花火大会会場に戻った。

 空間転移を利用した移動で勇者自治区のスペースに降り立ち、自治区の役人たちに敬礼する。


「ヒナ執政官! これはどういうことですか」 


「ロンレア領の直行さんが撤収命令を出してるって話だけど、自治区も撤収するんですか?」


 側近たちが詰め寄り、ヒナに尋ねた。

 片づけを終え、避難しようとしていた調理人たちは足を止め、心配そうにヒナを見ていた。


 一方、花火職人たちはヒナを横目で見ただけで、花火を打ち上げる手を止めない。

 何を言われても最後の一発まで打ち尽くすつもりだった。

 

「時間がないから手短に言うわね。この会場を飛ばし、自治区の港につけます」


「……はい? どうしてそんな急に……」


「法王さまのご乱心を止める。万が一ヒナたちが全滅したら、S級冒険者の知里って娘を軍事顧問に呼んで戦争に備えて頂戴」


「……全滅?」


 ヒナか急に〝知里〟の名前を出したのは、法王の〝地獄耳〟を意識した上での牽制だ。しかし半分は本心でもある。


「法王さま、狂っちゃったんですか?」


「トシヒコ様やヒナ執政官たちが負ける? 冗談は言わないでくださいよ」


「ヒナは冗談なんて言わないの知ってるでしょ。時間がないわ!」 


 自治区の幹部たちの戸惑いをよそに、ヒナは何かを持ち上げるときのようなしぐさをして、両腕を高く上げた。


「このエリアを飛ばして自治区の港に下ろします」


 ヒナは事務的に言って、頭に装着した〝勇者のサークレット〟に手をあてた。

 この装飾具には、一時的にトシヒコの特殊能力『天眼通』によって、重力操作が付与されている。


 勇者の能力『天眼通』は、〝世界のすべてを見通すことができる〟能力。

 トシヒコはこれを応用し、その人物が持つ可能性を〝特殊能力〟スキルという形で付与できる。

 

 ミウラサキや小夜子、ヒナもそれぞれの中に眠る可能性を引き出され、時間操作や無敵の障壁などの超人的な能力を付与された。


 トシヒコもまた、自身に眠る『重力操作』という能力を引き出した。


 いま、その能力は、一時的にヒナに譲渡されている。 


「『重力操作』! 浮かべ人工島!」


 ヒナが念じると、湖に、さざ波が起こった。

 次いで、大きな水しぶきが上がる。

 さらに夜の水面に跳ね上がった人工島を起点に、大きな波が起こった。


 三つに分けた会場の一部が、高速のエレベーターのように垂直に浮上していく。

 勇者自治区の観覧席は、瞬く間に空に浮かび、他のエリアから分離した。

 

 さながら小さな空中都市の一角のような勇者自治区エリアは、花火の空で制止した。


挿絵(By みてみん)


「姿勢制御そのまま、慣性航法を発動します。結界を張るけど、落ちないように」


 ヒナが4本のタクトを飛ばし、四方に結界を張る。

 強風や揺れなどから中の人たちを守る魔法盾だ。


「GO!」


 勇者自治区の港の方向に向かって腕を差し出すと、勇者のサークレットが青色に変化し、輝く。

 それとともに夜空を滑るように、花火大会の勇者自治区エリアは加速し出した。


「飛んだ」


 彼らにとって、ヒナやトシヒコの超人的な能力は目の当たりにしていたから、戸惑いはあったものの、大きな混乱は起きなかった。


「強風に気をつけて。危ないと思ったら身を低くするか、柱か何かにつかまって! 皆の無事を祈ります」


 ヒナは大きく手を振った後、姿勢を正して敬礼した。

 その姿を見た自治区幹部たちも返礼し、職人たちは大きく手を振って応えた。


「ヒナ様こそ! どうかご無事で」


「お早いお帰りをお待ちしています!」


 会場と勇者自治区の住人たちの声が遠ざかっていく。

 加速しながら打ち上げられた最後の花火群が、夜空に炎の橋をかけたように線を引く。


 すでに手を振る様子も見えなくなるほど遠ざかった幹部や職人たちに、ヒナはもう一度敬礼をした。


「おおっ会場が飛んでる! ……って、ヒナさまじゃないっすか!」


 会場を見送るヒナの背後から、側近の一人であるアイカが姿を現した。


「ちょっと待って……アイカ? どうして……」


 グラスに入ったカクテルシュリンプにオーロラソースをたっぷりとつけて美味しそうに一尾を食べながら、斜めに上がった最後の花火群に見とれていた。


「……どうもっす」


「……自治区エリアに乗ってなかったの?」


「最後にエビを仕入れてから逃げようと思ったら、逃げ遅れたっす。何かあったんすか?」

 

 アイカは苦笑いを浮かべながら、もう一尾エビを頬張った。





次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「皆さんは好きなエビ料理は何ですか♪」


小夜子「もちろんエビフライね! 天ぷらもいいけど」


知里「アヒージョか、シュリンプカクテル。何気にトムヤムクンに入ってる小エビも好き」


直行「俺はクルマエビの握りだな。エルマは何だ?」


エルマ「あたくしは気取った料理に興味がありません♪ かっ〇えびせんですわ♪」


小夜子「確かにやめられない止まらないわ!」


直行「しかしエルマよ。甘いモノ好きなお前がえびせんとは意外だな」


知里「そもそも何でかっぱなんだろ?」


エルマ「1955年に発売された初代〝かっ〇あられ〟は、当時の人気漫画『カッパ天国』とのコラボ商品だったからです♪ ネットで調べましたわ♪」


知里「カッパ天国……? 三平なら知ってるけど……」


小夜子「ああ! 知ってるかも! カッパパパー、るんぱっぱー、ドンピロリん、飲んじゃった」


エルマ「次回の更新は4月8日を予定していますわ♪ 『おっぱい丸出し! ぱっばらぱー♪ 大かっぱ天国』お楽しみに♪」


小夜子「わたしの方を見て言わないで!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ