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546話・修羅と乙女

 知里と巨漢戦士パタゴン・ノヴァの打ち合いに、蛇腹剣の乱撃も加わった。


 〝未来視〟で知里との位置関係を把握したグンダリが、彼女にだけ当たるように斬撃の軌道を操作する。


挿絵(By みてみん)


「助太刀するぜパタゴン! お前は死なせねえ!」

 

「ばか! おいらが守るって言ったのに、どうして出てくるんだよぉー。もー」


 乱戦の最中、魔神の腕でパタゴンと拳闘しながらも、仇敵グンダリとソロモンから一瞬とて目を離さなかった知里。


 この状況を待っていたかのように実体の左腕に構えた魔法銃から蟲毒弾を放った。


「わざわざどうも!」


「させるか!」


 グンダリに迫った蟲毒弾を、籠手を投げつけることで相殺したパタゴンは、ワイヤーのように伸びた血管を振り回しながら知里を牽制した。


(……この自分探し君、蟲毒弾による自分へのダメージなんて全く意に介していない)


 大男の心を読んだ知里が、半ば呆れつつも感心した。


 〝未来視〟ができるグンダリもまた、この心意気に深く感じ入った。


「死に急ぐなよ。2人がかりで〝クソ猫〟をぶっ潰す!」  


 グンダリとパタゴンは背中合わせになって知里と相対する。


「いいかパタ、俺が〝目〟になる。〝未来視〟でクソ猫の動線上に真・鉈大蛇をぶち込むから、それを合図に周辺ごとそのデカい拳で吹っ飛ばすんだ!」


 グンダリは早口でまくし立てると、知里が動いた先の位置に合わせて、鞭のような斬撃をまき散らした。


「〝未来視〟は絶対じゃねえ! 最高の未来をつかみ取ってやろうぜ!」


 グンダリに見える〝未来〟は、あくまでも〝現状の先にある未来〟だ。

 彼が見た〝パタゴンが死ぬ〟未来も、誰も助けが入らなかった場合の結末で、自身が介入することで、パタゴンが助かるかもしれないと単純に考えたのだ。


 もっとも、行動を変えることで、先に見えた〝知里が死ぬ〟未来も変わる可能性があるが、グンダリはそこまで深く考えることはしなかった。


「敵は倒す! 味方は死なせねえ! これが俺の騎士道だ!」


「……ふん。あたしたちを裏切っといてよく言う」


 吼えるグンダリの様子を見ながら、知里は闇の魔力を変質させ、魔神の腕をもう一対つくった。


 実の腕と合わせて6本の手を持った彼女は、正確無比な動作で次々と進行方向に現れる斬撃を弾いていく。


 魔力で作った腕は、主に対物理に使用する一方、左手の魔法銃には蟲毒弾を装填して、グンダリとソロモンの命を狙う。


「付き合ってはいられぬ!」 


 逃げるソロモンも含めて、この戦場にいる者の誰一人として回復魔法が使えない。

 致命傷を受けたものが即脱落するという緊張感に、戦場の空気は重くなっていく。


「……さて。この槍をカレムに返さなきゃだけど」


 そんなギリギリの戦闘の最中、知里はふと手にした槍に目をやった。


 彼女の右手には、三つ又の槍〝魔槍トライアド〟が握られている。

 槍自体に勇者トシヒコによって特殊能力が付与されており、持ち主の行動速度を上げる。


 しかし、かなりの重さがあるため、華奢な彼女には、この装備はさすがに持て余し気味だった。

 行動速度を上げるとはいえ、絶えず動き回りながら魔法を撃ちまくる知里の戦闘スタイルとは相性が悪い。


「あっちでは煮え切らない戦いが続いているみたいね……」


 容赦なく攻撃を続ける法王に対して、勇者パーティは攻めあぐねているようだ。

 特に賢者ヒナの迷いが大きいようだ。


 そんな状態で、さらに知里が介入すると、戦局はさらに混乱して収拾がつかなくなる。


「この槍はもうしばらく借りておくか」


 知里はもう一対の魔人の腕に、槍を持たせてパタゴンに応戦する。


 近距離での拳の打ち合いは片腕だけに任せ、魔槍を持たせた魔人の腕は、中距離からの連続刺突の波状攻撃。


「くおおおっ! この女の人、メチャクチャだー!」


 拳の打ち合いに、槍の刺突攻撃が加わったことで、さすがのパタゴンも若干ひるんだ。


「パタ! 援護するぜ! 大蛇群斬撃!」


 押されはじめるたパタゴンを救うべく、グンダリは蛇腹剣を大きくしならせて知里の本体を切り裂かんと無数の斬撃を飛ばす。


「カウンター!」


 しかし知里はグンダリの斬撃を空中で回避しながら、計ったように眉間に銃弾を叩きこむ。


「……っぶねえ!」

 

 あわや脳天を貫かれる寸前、グンダリは首を上げて歯で呪いの弾丸を受けた。


「それ蟲毒の弾丸だから、かすっても手遅れよ。前にも食らったことあったでしょう。アンタの体は呪いに蝕まれて朽ちていく……」


 グンダリの致命傷は確定したと、知里は口元をゆがませた。


「……!!」


 彼女の言葉通り、突如として強烈な悪寒にみまわれるグンダリ。

 しかし、グンダリに見えた未来は、信じがたい状況を映していた。


「パタゴン!」


 仮面の大男が、ワイヤー状に伸びた血管をグンダリの口内に突っ込み、蟲毒を吸い上げたのだ。


「呪いを肩代わりしようっていうの!」


 知里は言葉を失った。


「言ったはずだ。命に代えても2人は守ると。グンダリ、ここはおれに任せて退け!」


 呪いに肉体を蝕まれながらも、パタゴン・ノヴァは知里の前に立ちふさがった。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「あと15点! あと15点♪ 春のパン祭りもいよいよ佳境ですわね♪」


直行「日本三大祭りの中でも、もっとも過酷で盛大な祭りだ」


レモリー「それは……異界の奇祭ですか?」


小夜子「東映まんが祭り、花王ヘアケア祭り、そして春のパン祭り!」


知里「そんな三大祭りも、いまとなってはパン祭りを残すだけ。つくづく伝統行事の継承は難しいものよねえ」


エルマ「そんなことより直行さん♪ 今日もダブルソフトを食べますわよー♪」


直行「あれは点数的に効率がいいけど、毎日一人で6枚も食べるのはキツいんだよな。エルマお前もたまには食えよ」


エルマ「次回の更新は3月24日を予定していますわ♪ 『復活の三大祭り♪』お楽しみに♪」

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― 新着の感想 ―
[一言] ちーちゃん負けるな!!! 春のパン祭! 昔、お皿を2枚ほど持ってました(#^.^#)
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