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542話・獣たちの饗宴


「おお……聖龍さま」


 突然あらわれた聖龍に、闇魔導士で死霊使いのソロモンは攻撃の手をとめた。


「おいソロモン! ボサっとしてんじゃねえ! 聖龍に見とれて化け猫に食い殺されるなんざ七福人の名折れだ! いくぜ蛇王十影斬ッッ‼」


 ソロモンと知里の射線に割って入った隻眼の騎士グンダリが、蛇腹剣を振り下ろした。


 剣の名は真・鉈大蛇(なたおろち)


 クロノ王国の錬金術と現代文明を融合させた新技術で作られた変形する大剣だ。


 強くしなやかなワイヤー状の綱が伸び、それぞれ分離した刃が鞭のように襲いかかる。


 その名の通り十を超える斬撃となって知里に迫る。


「お遊戯レベルね」


 知里は闇の魔力を引き出し、背中に生えた闇の翼に加え、〝魔神〟の両腕を発現させた。


挿絵(By みてみん)


 彼女の身長よりも大きな半透明の闇の腕が、肩口から伸びて、四本腕の〝魔人〟のような姿となった。

 

 迫る斬撃。知里は宙に浮いたまま、微動だにしない。各方位から迫る十の斬撃を、闇の炎に包まれた腕が薙ぎ払っていく。


「その未来は見えてたぜ!」

 

 〝未来視〟ができるグンダリには、知里の行動が見えていた。


 彼は蛇腹剣を操作しながら知里に急接近し、カウンター気味に腹部を蹴りにいった。彼女が腕を組んでいるため、防御態勢が取れないだろうと目論んだのだ。


「中途半端な未来視なんてチョロいわ」

 

 知里が腕を組んでいたのは、印を結んで魔法の詠唱をしていたためだ。


「物理反射だと! 魔神の腕はフェイクか!」 


 グンダリの斬撃はことごとく跳ね返されて本人に襲い掛かる。


 自分が放った無数の斬撃を、グンダリは紙一重でかわしたり、軍服の金具で受けた。


「フン! 物理反射を使ったということは魔法には無防備であろう!」


 知里が印を結んだ一瞬の硬直時間の隙をついて、ソロモンは魔槍トライアドを突き出した。


 三つ又に分かれた槍の先端に、闇の魔力を込める。


 物理反射魔法が作用している最中は、魔法耐性が落ちる。


 いくら同時に二つの魔法が使える知里でも、物理と魔法反射を同時に使ったら、効果が相殺されて意味がない。


邪毒槍一閃(ベノム・トラスト)!」


 ソロモンが放ったのは猛毒の上位魔法・邪毒。〝世界の秘密を知るための鍵〟である知里を毒で弱らせ、捕縛するためだった。


 その攻撃を知里は一喝した。


「カレムの槍を奪った挙句、クソダサな必殺技を叫ぶんじゃない!」


 ソロモンが持つ魔槍トライアドから放たれた邪毒を、魔神の腕が受け止める。


「背後がガラ空きだ!」


 知里の背後から殴りつけてきたパタゴン・ノヴァを、魔神の腕がカウンター気味に殴り返す。しかも、その腕にはソロモンが放った邪毒がまだ込められていた。


「バカな! 心が読めないよう妨害の術具を装備しているのに、戦術が読まれてるのか?」


 思わぬ形でソロモンの邪毒を受けたパタゴンが叫んだ。


「あたしは子供のころから冒険者として戦いに明け暮れてきた。勇者パーティとも行動を共にしたこともある。だから戦えるし、その槍の使い道だって、あんたより熟知してる」


 一瞬で3人の攻撃をはじき返した知里が、花火が落とした影の中に消えた。


「夜に空中での影移動だと!」


 ソロモンは絶句した。


 闇魔法の〝影移動〟は、文字通り影の中を移動する魔法だ。


 影の中に入るためには、光源を探さなければならない。


 ガルガ国王と影武者を入れ替えた際も、会場の照明が落とした影を利用したのだが、知里は花火の光源を利用して、闇そのものを〝影〟と認識し、影移動の触媒に使った。


「バカな。そんな理不尽な魔法解釈など!」


 また花火が上がり、ソロモンの顔に槍の影が落ちる。


 知里はソロモンの顔面から現れ、魔力を込めたブーツのヒールで眼球を蹴り飛ばそうとした。


 しかし、その未来を予知していたグンダリが短剣を投げつけ、狙いを逸らす。


「ちっ」


「すまぬグンダリ。助かった」


 思考が読み取れるスキル『他心通』を持っている知里だが、グンダリとソロモンは妨害術具を装備しており、心を読ませない。


「クソ猫! 目ばっかり狙ってんじゃねえ」


「まだよ」


 それでも知里は上空で体を反転させ、ソロモンの顔面を踏み台にして魔槍トライアドを奪った。


「貴様……」


「アンタらに目なんていらないでしょ。それよりカレムの槍は、ソロモンごときがオモチャにするには過ぎたるものよ。ついでに返してもらうわ」


 魔槍トライアドは、魔法の増幅装置でもある。魔法が使えないミウラサキに、知里やヒナやトシヒコが様々な属性を付与することで、属性攻撃を可能とするために作られた槍だった。


「さあて、カレムに返す前に、あたしの槍さばきを味わってもらおうかしら」

 

 知里は舌を出して笑い、影の中に隠していた親友の帽子をかぶった。


「ちーちゃんのスーパー復讐タイムよ。できるだけ苦しませて殺すわ」


 彼女の心の中に暗い炎が灯った。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「ホーホー、ホッホー♪ ホーホー、ホッホー♪」


直行「キジバトの鳴き真似か。クーク グッググーとも聞こえるな」


小夜子「デーデー ポッポーじゃなくて?」


知里「あたしはてっきりフクロウが鳴いてるんだとばかり思ってたけど」


エルマ「ホーホー、ホッホー♪ ホーホー、ホッホー♪」


直行「耳元で鳴くの止めろよ。ただでさえ耳に残るんだから。ちなみに鳴くのはオスだからな」


エルマ「ホーホー、ホッホー♪ ホーホー、ホッホー♪ ホッホホホッホ、ホッホ♪(訳・次回の更新は3月8日を予定していますわ♪ 『夜泣き鳥の歌』お楽しみに)」


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― 新着の感想 ―
[一言] ちーちゃん凄すぎます!!! Σ(・□・;)
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