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533話・「認識ある過失」

 ※今回からは三人称でお送りします。


 踊りながら法王の光弾を解呪し続けるヒナは、どう戦いを納めるかを模索していた。


(──法王さまとは話せばわかると思ったのだけれど……)


 勇者自治区で執政官を務めるヒナにとって、武力衝突は避けたかった。


 空中に浮かべた24本のタクトを使い、法王の攻撃を打ち消すものの、反撃せずに牽制にとどめる。


(ここで撃ってしまえば、本格的な魔力戦闘になってしまう)


 ──かといって裁判をするとして、争点はいわゆる〝認識ある過失〟。


 彼女は華麗に踊りながら詠唱を続けると同時に、考えを巡らせていた。


(──ヒナたちが〝暗殺が起こる危険性があるかもしれないけど、まさか成功しないだろう〟と思っていた点が罪に問われるかどうか……)


 とはいえ決闘裁判をするような法王庁に、現代社会の考え方などが通じるはずもない。


「あれ? ……速っ」 


 ヒナは空中に浮かべた24本のタクトを使って法王の光弾を無効化していたが、いつの間にかラーの詠唱速度が上がっていた。


「強化魔法〝加速〟を使ったのね」


 思案しながら戦っていた分、隙ができた。そこをついてラーの強化魔法。 


 法王の攻撃は至ってシンプルだ。


 神聖魔法の初級技「光弾」を撃つ。


 基本的な術のため、詠唱速度と消費する精神力も最小限で済む。


 本来なら威力も射程もそこそこなはずだが、天賦の才に修練を重ねたラーの魔力によって、すさまじい威力に増幅していた。


 反撃しないヒナとは違って、法王の狙いは彼女を戦闘不能にすることだ。

 

(この光弾、まともに受ければ半身が吹き飛ぶほどだわ)


 何度も繰り返して解呪し続けるうちに、こちらの集中力も落ちてくる。


 時折、身体をかすめることもある。


 魔法抵抗力の高いヒナでさえ、どこまで耐えられるか分からない。


(──ちーちゃんに法王さまを止めてもらおうにも、あの娘は〝七福人〟と因縁があるようで戦闘中か……)


「落としどころが見えない……参ったなー」


 ヒナは横目でトシヒコを見た。


 勇者トシヒコと商人ミウラサキの2人が何かを話し合っている。


 会話の内容までは聞こえないものの、ヒナは少し安堵した。


(トシ、打開策を練ってくれてるみたいね)


 勇者パーティにとってこの戦いが難しいのは、政治的な要因を抱えていることだ。


 ガルガ国王暗殺に、勇者自治区の執政官が関わっていると認めるわけにはいかない。


 仮に法王庁がそう主張して来たら、勇者自治区と法王庁およびクロノ王国との全面戦争になりかねない。


「ねえ法王さま! ヒナやトシを戦闘不能にしたとして、その後は十字軍気取りで勇者自治区を滅ぼすつもりなの?」


 24本のタクトで、ラーの光弾をかき消しながらヒナが問うた。


「揺さぶりをかけるつもりのようだが、その手には乗らない」


 ラーは眉ひとつ動かさずに言った。


 法王の座を失うかもしれないラーにとって、先のことはどうでもよかった。


(──己の全てを賭けて、勇者一行に挑むのみ)


 ふつふつと湧き上がる高揚感に、ラーの口元から笑みがこぼれる。


「! ……光弾の質が変わった」  


挿絵(By みてみん)


 ラーが放った光弾が、円形の鋭い刃状に変化した。


 ヒナは解呪をやめ、華麗な宙返りで回避する。


 思ったよりも効果範囲が広く、ドレスの裾が切れた。


 これまでの光弾ような吹き飛ばす攻撃から、切り裂くダメージへと魔法の出力が変化していた。


「まともに喰らったら真っ二つにされちゃうわね……」


 ヒナの全身を冷や汗が伝った。


 単調な攻撃を続けながら加速魔法で速度を上げ、一瞬で攻撃の質を変える。


(わりと細かいことするじゃない。とても法王の椅子に座り続けているお坊ちゃんとは思えないわね!)


「OK。ヒナを殺すつもりなら、呪縛魔法で捕らえてあげる。正当防衛だから、外交上もセーフでしょ」 


 ヒナが両腕を振り上げると、24本のタクトが8本ずつまとまり、方陣を組んだ。


 さらにそこから電撃属性の魔力の綱が現れ、互いに交差しながら魚網のように編まれていく。


「なるほど。呪縛魔法の網でこちらを捕えるつもりか」

 

 宙に浮かぶ電撃の網が、複雑に動きながらラーに迫った。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


直行「知里さんはスタバでMacとかしたことある?」


知里「あるわけないでしょ。隣のテーブルとの距離が近くて緊張するし、テイクアウトも何か頼みづらいし。味はいいから通販で豆買って家で飲んでるわ」


エルマ「さすがド陰キャの知里さん♪ あたくしなんか〝イングリッシュブレックファーストティーラテ オールソイ ホワイトモカにチェンジ♪〟も余裕ですわ♪」


直行「ウソ言うなエルマよ。それヒナちゃんさんのコピペだし、前世では頑なにスタバに入りたがらなかったの知ってるぞ」


エルマ「あたくしの前世と直行さんは何の接点もありませんでしたわ♪」


直行「お前〝オカ研時代〟のオフ会で頑なにコ〇ダ珈琲にこだわってたじゃないか」


小夜子「どうして皆、喫茶店に入るのにそんなに緊張するのかわっかりませーん」


直行「それは俺たちみたいな日陰者には、巨大資本のフランチャイズでイキイキと働く店員さんが眩しすぎるんだ」


知里「それね」


「次回の更新は1月26日を予定しています。『日陰者たちのカフェ事情』お楽しみに」

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― 新着の感想 ―
[一言] コ〇ダ珈琲!! あんトースト??
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