表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
529/733

527話・ズッ友のジュントス

「……む!」


 話の途中だったが、スフィスは身構えた。


 法王庁の席から、1人の聖騎士が近づいてきたのだ。


「あ! カッパのおじさん」


 ジュントス・ミヒャエラ・バルド・コッパイ。


 俺はこの男をよく知っている。


「ウシシシシ。これは、ハーフエルフの〝おにゃのこ〟ネンちゃん。お久しぶりですな。少し背が伸びましたか。少女は蛹から蝶へ。大変結構なことです」


 ジュントスは小夜子とネンちゃんに近づき、にんまりと笑った。


「しかし、なぜジュントス殿がここに?」


 ふしぎに思った俺は尋ねた。


 法王庁のテーブルの位置からだと、クロノ王国の辺りは死角になっている上に、この場は幻術に包まれていたはずだった。


 幻術に飛び込んできたというのか……?


「いやなに、わが法王猊下が席を立ったまま帰ってきませんでしたのでな。それで周囲を探ると、クロノ王国の皆さまが、花火を見ている様子が突然消えたではありませんか!」


 どうやら幻術の効果が切れているようで、この場で起こっていることが明らかになっているようだ。 


「ところがいざ現場に来てみると、われらが法王猊下が大暴れしているご様子。酒に酔ったと思いきや、それどころではない大惨事のようですな……」


 ジュントスは上空を見上げて、目を見開いた。


 極大の光弾と、無数のレーザー光線の十字砲火が入り乱れ、花火とともに夜空を彩っていた。


 そこに飛び交う法王ラー・スノールと女賢者ヒナ・メルトエヴァレンスの影。2人の戦いは続いている。


 この状態が諸侯たちに筒抜けということは、花火大会の主催者としては実にマズい状況……。


 一刻も早く、夜会をお開きにして各勢力を撤収させるか、戦いをやめさせるしかない。


 とはいえ俺自身が狙われている以上、どちらも難しいが……。

 

「まさかあの法王猊下が女の尻を追いかけておいでとは……知里さんと女賢者どの。わが法王猊下も隅には置けませんな」


「ジュントス殿。いまはそんなことも言っていられないのです。レモリーたちも重傷だし、俺も法王さまに殺されかけています」


 俺はジュントスを窘めつつ現状を訴えた。

 

 腹を破られた魚面と、光弾の直撃を受けたレモリーは、ネンちゃんの回復魔法による治療を受けているが、いかんせん致命傷からの回復には時間がかかる。


「左様ですか……」


 懸命に治療を続けるネンちゃんを見て、ジュントスはまじめな顔で頷いた。


「直行殿も標的。そうなると、今後法王庁とロンレア領は断交でしょうか」


 俺が〝蛇〟をけしかけ、国王暗殺を企てたことがバレた以上、クロノ王国はもちろん、王弟が法王を務める法王庁も、当然俺を許すことなどありえない。


 この湖上の浮島から無事ロンレア領に帰れたとしても、今のままでは法王庁とクロノ王国を両方敵に回すことになってしまう。この局面を打開しないと、双方から攻められかねない。


 弱小ロンレア領の国力で、両方を相手に防衛するなどまず無理だ。


 ──俺は、詰んだかもしれない。


「直行どの。忘れないでくだされ。今後法王庁とロンレア領に、どのような争いがあろうとも、拙僧たちは〝ズッ友〟ですぞ」


 ジュントスは両手を組んでハートマークをつくったかと思うと、俺の手を取って半ば強引に2人でハートマークをつくるジェスチャーをとった。


挿絵(By みてみん)


 どこで覚えたのか知らないが、気休めにしてはやや微妙な空気が流れている。


「……っ!」


 そのとき、俺は肩口が弾け飛んだかのような、鋭い痛みに襲われた。


 幸い、かすっただけだが、なにが起きたのかまったく分からなかった……。


「ゴメン直行。法王さまはピンポイントのレーザー光線で、アンタの頭や心臓を狙撃してきてる。あたしが迎撃してるけど、的が狭くてうまく対処できない」


 通信機から知里の声が響いた。


「猊下は本気で貴殿を殺そうとしている……と、いうことですな」


 ジュントスは俺の肩の傷を見て、顔を曇らせた。


「知里さんが守ってくれてなければ、いまの攻撃で俺は頭を撃ち抜かれていたと思う。あのヒナちゃんさんと戦いながらヘッドショット決めてくるなんて、異次元の戦闘能力だ」


 実際、気づかない間に知里が止めてくれていただけで、こちらへの攻撃が続いていたかと思うと、ゾッとする。


「……しかし、法王猊下が何ゆえに貴殿やヒナ殿を殺そうとするのです。猊下はよほどのことでもない限り、人を殺すような御方ではありませんぞ」


「話せば長くなりますが……。事情を釈明したところで、いまの法王さまを止められるとは思えない」


 以前、一度だけ彼が従者の格好をしたときに話したことがあるが、いまの法王はそのときとは別人のようだ。 


 ラー・スノールのまなざしからは、決意のようなものを感じる。俺を殺すというだけではなく、何か責任のようなものを背負っているかのような印象だ。


 ──あの法王を相手にして、俺は無事にロンレア領まで帰れるのだろうか。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


「直行です。『恥知らずと鬼畜令嬢』2022年最後の更新となりました」


「今年も色々ありましたわねー♪ ねー知里さん♪」


「まあね」


「良いこともそうでないこともあったけど、連載を続けてこられたのは読者の皆さんのおかげよね!」


「さすが小夜子さん♪ 刺激的なビキニ鎧とは裏腹に優等生的な発言ですわー♪」


「さて、次回の更新は2023年1月1日を予定しています」


「元旦じゃないですかー♪」


(せーの)「それでは皆様、よいお年をお迎えくださいませ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ