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465話・フィンフと亡霊(スペクター)

「ラルフさんと、ドルフさん?」


「「はい」」


 細い方と太い方、同時に返事をされたら、どちらが長男だかよく分からないが、細かいことはまあいいだろう。


 俺は用件を手短に伝えた。


「フィンフ氏の身柄を拘束することに同意していただけるならば、ディンドラッド商会に対して、今後は二度と乱暴な真似をしないと約束しましょう」


 俺たちは空から召喚獣で乗りつけて、一瞬で用心棒たちを無力化させた。

 

 貴族たちの御用達とはいえ、頼みの綱だった暗殺者集団・ぬえを失ったディンドラッド商会は、もはや対抗できる戦力を持ち合わせてはいない。


 奇襲は褒められたやり方ではないけれど、対クロノ王国との総力戦を避けるためなら手段を選んでいられなかった。


「この猿の面が示す通り、鵺も今やロンレアの傘下にあります」


 俺は、あえて名乗らずに話し続けた。


 話がこじれるので、頭目の猿が殺されたことは言わない。


 これまで多くの商売敵を秘密裏に抹殺してきた暗殺者集団を、俺たちが傘下に収めたという印象を与えるだけでいいだろう。

 

 情報戦……と言えるのかどうかは分からないけど、ある意味ハッタリ、脅しの類だ。


「逆らっても、あんたたち商会にはもう勝ち目がないから、言うことを聞いた方がいいよ……にゃ」 


 先ほど異次元の強さを見せつけた知里に、商会幹部たちは震えあがった。


「ラルフ様。ロンレア領は今や、反クロノ王国の盟主にまつり上げられようとしています。保守派の貴族を顧客に抱えるディンドラッド商会ではありますが、日ごとに勢いを増していく新興勢力は侮れません」


 ギッドは古巣の上司たちを諭すように説得している。


 知里はじっと商会の幹部たちを見ていたが、


「この場はギッちゃんに任せて、あたしたちはフィンフを捕らえよう」


 そう言って、ホバーボードに乗り込んだ。この場は彼だけで十分だと判断したのだろう。


「ギッド、ここは任せた。ロンレアとしては、ディンドラッド商会を無下にするつもりはない。ご兄弟の意思は尊重するし、互いにメリットのある関係性を築きたい」


 ……奇襲をかけておいて言うのも何だが、その言葉に嘘はない。


「ただし、ディンドラッドの皆さん、万が一ギッドを傷つけるようなことがあれば、鵺と鬼畜令嬢の名の元にディンドラッド商会は壊滅させる。エルマさまは容赦がないから、二心なきように……」


 最後にダメ押しで脅しておいて、部屋を出た。


 ◇ ◆ ◇


「レモリー、フィンフの行方はどうなっている?」


 俺は、通信用に引き連れた風の精霊に向かって言った。


 緑色の光の玉が、風に乗って声を運ぶ。


「はい。現在エルマさまが交戦中です」


 レモリーの声と共に、戻ってきた光の玉が、戦闘エリアに向かって飛翔する。


 俺と知里は、風の精霊に導かれるまま中庭に出た。


「お気楽な三男さま♪ 逃がしませんわよ!」


 ディンドラッド商会の、まるで王宮のような立派な中庭では、鵺に騎乗したエルマとフィンフが交戦中だった。


 幾何学模様の植え込みは、まるで迷路のようで、フィンフは身を隠しながら逃げ回っている。


「ええい面倒ですわ♪ 焼き払うわけにもいきませんから、毒霧であぶり出しましょうか♪」


 一方、エルマは上空から威勢のいい掛け声を発している。


 口では焼き討ちだの毒霧だのと言ってるが、被害の大きさを考えれば、さすがに実行するわけにはいかない。奴もその点はわきまえてはいるようで、安心した。 


「しかしエルマの奴、意外とてこずっているようだな」


「中庭は広いし、植え込みに身を隠しながらだと上からでも見つけにくい……でも、お嬢はすでに手を打っているわ」


 知里は人差し指を立てて「しぃーっ」というジェスチャーを取る。


 ガサゴソと植え込みを探る、複数の足音が聞こえた。


「お嬢は空からフィンフを牽制しつつ、地上では植込みの中にコボルト3体を放っている。フィンフを捕えるのも時間の問題……といったところかしらね」


 なるほど。闘犬用に召喚した3匹のコボルトを猟犬のように放ち、フィンフを追い詰めていく作戦か……。


 白、黒、茶色……。コボルトたちがいっせいに唸り声を上げ始めた。


「こっちよ! 直行」


 俺は知里のホバーボードにつかまって、うなり声の方向へと飛んだ。


 迷路のような植え込みの三叉路に追い込まれ、取り囲まれたフィンフの姿が見える。


「フン! コボルトごときで私を捕まえられると思うなよ!」


 追い込まれたフィンフは、胸のポケットから赤い宝石を取り出した。 


「〝猿〟が残した守護獣だ! いでよ! スペクター!」


 フィンフの叫びと共に、禍々しい装飾の宝石が妖しく光る。


 そして宝石から邪悪な瘴気が発生し、幽体の不死系魔物が現れた。


挿絵(By みてみん) 

次回予告

※本編とは全く関係ありません。


「6月18日は『おにぎりの日』だそうですわ♪」


「語呂合わせではないのかな」


「石川県能登半島の鹿西ろくせい町(現・中能登町)で、弥生時代中期の竪穴式住居跡からおにぎりの化石? が発見されたことが由来らしいな」


鹿西ろくせいの6と毎日18日の『米食の日』から『おにぎりの日』に制定されました♪ みなさんはどんな具が好みですか♪」


「わたしは梅干し、おかかかな」


「俺は明太子のおにぎりが好きだな」


「あたしはイクラかウニ味噌」


「お腹が空いてきたところで、次回の更新は6月21日を予定しています♪」

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