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463話・鵺と鷲獅子アルビオンによる電撃作戦


「飛べ! アルビオン!」


 旧王都の上空を、鵺と白い鷲獅子(グリフォン)〝アルビオン〟が舞う。


挿絵(By みてみん)


 ──これは、前代未聞の出来事だそうだ。


「聖龍さまに見つからないといいですけどね♪」


「はい。本来であれば、異世界の召喚獣で旧王都に乗り入れるのは論外です。聖龍さまがお姿を現して、食べられてしまいますから……」


 レモリーは不安そうに呟くが、空に聖龍の姿はなかった。


 ロンレア領や旧王都で耳にした噂だが、最近は聖龍をめっきり見なくなったという。


 確かに、俺がこの世界に来たばかりのころは、毎日のように見ていた。


 大空に、巨大な深海魚リュウグウノツカイに似た聖龍が泳ぐ姿を。


「そういえば、確かに最近は見た記憶がないな……」


 最初に法王庁へ行ったときはあれほど近くに見えた聖龍も、先日行ったときには全く姿を見なかった。


「魔物や瘴気を食べる聖龍さまは、エサが少なくなって弱っているのかもしれませんわね♪」


「どうかしらね……」


 ──聖龍はこの世界の守護者で、魔物や悪い瘴気を食らう。


 魔王が存在していたころは、文字通り人々にとっての〝救い〟そのもので、聖龍が泳ぐ空の下で農作物は実り、家畜は数を増やしていったのだという。


「本来、この世界は、聖龍と共に成り立っていたのですが……」


 ギッドの言うように、法王庁がある空中都市の周辺を基本エリアとして、聖龍の遊泳領域を中心に、街や街道が整備されたくらいだ。


「勇者さまの魔王討伐の恩恵を、せいぜい利用させてもらいましょう♪」


 聖龍を中心とした世界が一変したのは、勇者トシヒコによる魔王討伐事業がきっかけだった。


 彼らが褒賞として拝領した土地は、聖龍も飛ばない砂漠の地。


 だがトシヒコやヒナ・メルトエヴァレンスらは、不毛な地をたった6年で、世界で最も栄えた都に変えてしまった。


 一方、クロノ王国は〝青嵐の国王〟ガルガの元で遷都を決行。法王庁の遙か西に広大な城塞都市を築いた。


 偶然なのか故意なのか、両者ともに聖龍の遊泳位置から大きく外れた場所に本拠地を置いたのだ。


 旧王都は、そうしたリアルタイムで勢いのある急進的な地域とは一線を画した、穏やかな保守派貴族たちが住むエリア。古くからの都だ。


 エルマの両親のように、領地の運営から手を引いた隠遁者や、新時代とは距離を置いた者たちが暮らしている、ある意味では黄昏のまち。


「古き都の商会を、わがロンレアが傘下に収める」


 俺は、決意を新たにする。


「ああ、直行も、これで異世界改変の汚名を決定的なものにするんだね……」


 知里は少しだけ複雑な顔をした。


 彼女は勇者トシヒコや賢者ヒナたちとは異なり、この世界の改変を望んではいないのだ。


 ◇ ◆ ◇


 明け方の空。


 旧王都の各エリアから炊事の煙が起こり、街が目覚めようとしている。

 

 そんな上空から、豪商ディンドラッド商会の敷地内に騎獣で乗りつける。


「勇者自治区はさておき、この世界に領空侵犯なんていう概念はないけど、また噂になるよコレ」


 鵺の背に乗る知里は呆れるが、彼女とて指名手配の凶悪犯だ。しかもわざわざ手配書と同じようにネコチのマスクで変装している。


 魚面も仮面姿だ。


「さてさて、怖い怖い〝鵺〟のお出ましでござい」


 俺も、鵺の(ましら)の仮面を装着した。


 今回のミッションで、俺は猿の仮面を被ることにする。素顔をさらすよりも、より威圧的な雰囲気が出るし、万が一の時は「俺じゃなかった」と言い逃れを用意するためだ。


 ちなみにこの仮面は、本物ではない。


 本物はアンナの解析に回しているので、エルマによる『複製』の模造品だが、伝説の暗殺者集団の頭目は伊達ではない。


 この仮面をつけているだけで、俺も何だか眉一つ動かさずに人が殺せるような気が……しないでもない。もちろん実際に人殺しなどは論外だが、仮面をつけたことで、人の心は意外に変わるものだと感心してしまう。


「さて! 作戦開始だ!」


 先行するのは魚面とレモリー。


 白鷲獅子アルビオンで、ディンドラッド商会の中庭に乗りつける。


「何だ? 魔物の襲撃だと!」


 さすがに貴族街の一等地に邸宅を構えるだけあって、警備は厳重だった。


 武装した用心棒たちが一斉に駆け寄ってくる。 

 

 俺たちによる奇襲は、必ずやり遂げて見せる……。

 次回予告

 ※本編とは全く関係ありません。


「直行さん♪ またまたFAをいただいておりますわ♪」


挿絵(By みてみん)


「はい。『451話・或る暗殺者の死』のイラストですね。私とエルマお嬢さま、そしてド○ゴン打ちの竜が描かれております」


「描いて下さったのは、『FUJIWARAだね!シノブ君!』様♪ いつも素敵なイラスト、ありがたいですわー♪」


「レモリー姐さん。異世界の功夫プロゴルファーの名前なんてよく知ってるわね……」


「はい。直行さまから教わりました」


 ※本来であれば、活動報告で紹介すべきところを、次回予告のコーナーで紹介してしまってスミマセン。活動報告と『戴き物美術館』更新の目途がつかないため、取り急ぎこちらで紹介させていただきました。


「次回の更新は6月16日を予定しています。『黄金蜂レモリーの巻』おたのしみに」

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― 新着の感想 ―
[一言]  今回は私のFAを紹介してもらってありがとうございます。しかし、一気に本編のシリアスさが増している時に何というものを描いてしまったのだろうと反省しています。やはりシリアスと日常の温度差こそ「…
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