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462話・VSディンドラッド商会の概要

 ──翌朝。


 〝猿〟の遺体を持ち帰るジュントスらを見送った後、俺たちも電撃作戦に取り掛かる。


 ◇ ◆ ◇


挿絵(By みてみん)


「今回の作戦では、ディンドラッド商会を急襲し、フィンフの身柄の拘束と、商会を傘下に収めることが目的だ」


「直行どの、そんな都合よくいきますかね」


 元ディンドラッド商会で、ロンレア領を依託統治していたギッドは、いつも冷や水をぶっかける役目だ。


「お前次第だギッド。頼りにしてる」


 奇襲をかけるメンバーは、俺とエルマとレモリーと魚面。


 そして今回のミッションでは、案内役のギッドがカギを握る。役員たちの部屋割りから、出退勤の時刻まで。ディンドラッド商会の詳細を知る彼の誘導なくしては、作戦は成り立たないだろう。


「過剰な期待をしないでほしいですね」


 そして知里。戦闘力はもちろん、他人の心が読めるチート能力は、謀略においては不可欠な存在だ。


「知里さんも、頼りにしてる」


 小夜子については、まだ戻ってこない。いぶきの件で()()()()しまったが、勇者自治区でのんびりしているのかもしれない。


 もっとも今回の奇襲では、慈善事業家の小夜子に汚れ仕事はさせたくない。


「俺たちは二手に分かれて鵺とアルビオンに搭乗し、夜に紛れて飛行、旧王都の商会本部を急襲する」


 ジュントスには事前に伝えてあるので、法王庁から横やりが入ることはないだろう。


 それでも油断はできない。かつて俺たちを捕縛しようとした飛竜騎士団がいる。


 飛竜騎士団は解散し、いまは空飛ぶ郵便屋さんになっているらしいが、武器は持たなくても偵察されたら困る。


 問題になる前に、事を済ます必要がある。


「旧王都までは全速力で飛んでおよそ半日。ちょうど夜明け前の奇襲となる」


 メインは鵺と白い鷹獅子〝アルビオン〟による空からの奇襲。少数精鋭の電撃作戦だ。


 とはいえ、フィンフを含めたディンドラッド首脳陣がその場にいなくては奇襲の意味がない。


「ギッド、ディンドラッド首脳陣の出社時刻に合わせて作戦を決行する。内部の間取りなど、案内を頼む」


「承知しました」


 念のため、見張り兼撹乱役として盗賊スライシャーも連れていく。


 正直あまり頼りにならなさそうだが……。


「へい大将。売り上げもたんまりあるでしょうから、いただいちまいましょうぜ」


「スラ、それじゃあ盗っ人じゃないですか♪」


「お嬢。あっしは盗賊ですぜ」


「今回の目的は金でも嫌がらせでもない。フィンフの身柄の確保と、商会を支配下に置くことだ」


 なぜ、ディンドラッド商会を支配下に置く必要があるのか──?


 〝お気楽な三男さま〟ことフィンフからは、暗殺者集団〝鵺〟をけしかけられたり、ロンレア領内部の破壊工作や、俺への暗殺未遂など、多岐にわたる妨害工作を受けてきた。


 これが商会の総意であるか、それともフィンフの独断であるかはどちらでもいい。


 ただ、商会内には間違いなくクロノ王国と通じている連中がいる。これだけは取り除いておかないと、今後も背後から似たような妨害を受ける可能性がある。


「とにかく、対外的にもフィンフの責任は問われるべきだ。その上で、ディンドラッドに影響力を及ぼす」


「でも直行さん♪ 商会が〝お気楽な三男さま〟を見捨てる可能性がありますわね♪」 


 エルマの不安はもっともだ。


「だから全員いるところを急襲して、一網打尽にする。少々、乱暴だけどな」


 俺たちは次に来るクロノ王国の侵攻を食い止めなければならない。

 

 そのためにも、勇者自治区とクロノ王国の同盟に食い込んで、その仲を取り持つ……フリをしたい。


 具体的には、異文化交流と称して勇者トシヒコとアニマ王女の婚礼行事に一枚噛む。


 そのためにも、ディンドラッド商会はいい隠れ蓑になる。


 バレバレだとしても、俺たちロンレアが取り仕切るのではなくて、旧王都の貴族たちに顔が効く商会を立てることはクッションになるだろうからだ。


「魚面はエルマとスラを連れてアルビオンで先行してくれ。一時的な潜伏先はロンレア伯爵邸でいいだろう。あと、例の仮面も持参してくれ」


「ワカッタ」


 魚面は無表情で頷いた。〝仕事モード〟に入ったときの彼女は、かつてのような無表情になる。


 しかし、決して〝殺しの仕事〟はさせない。


「お父様とお母様は、また肝を冷やすでしょうけどね……」 


 普段は茶化したりふざけた態度ばかりのエルマだが、両親のことになると神妙になる。


 異界人を心の底から憎む家庭に生まれた異世界転生者エルマと、それを隠しつつも育て上げた両親との間にある絆は、俺には分からない。分かった気になるのも失礼な話だ。


 俺はただ、エルマの好きなようにさせるだけだ。


「はい。作戦の概要は、以上でよろしいですか?」


「各自、夜までよく休んでおいてくれ」


 ブリーフィングを終えた俺たちは、出撃時間まで各自のんびりとしていた。


 もっとも、領内運営やら書状のチェックなどの雑務で、俺とギッドとレモリーはなかなかそれどころではないのだが、ともかく、夜が更けたら出発だ。


 ディンドラッド商会は、どう出てくるか……。


次回予告

※本編とは全く関係ありません。


「小夜子どぇーす。勇者自治区でエンジョイしてまーす」


「ヒナです。ママ、その話し方やめてほしいな」


「どぼじで?」


「ママのいた80年代でも死語だったんじゃないの?」


「そんなことないわよー。バリバリよー」


「見た目の年齢が同じでも、娘にとって母親って恥ずかしいものですよね」


「次回の更新は6月13日を予定しています。『ヒナちゃんは反抗期』おたのしみに」


「ママまでウソ予告やめてよ。次回は『鵺と鷲獅子アルビオンによる電撃作戦』です。お楽しみに」

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