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460話・ドキッ! 二度目の温泉回

「宴、たけなわですな。ウシシシシ」


 法王庁からの突然の来賓をもてなすために始めた夕食会。


 転生者で現代の料理を再現できる『異界風いかいかぜ』のマスターによる、11品のコース料理はおおむね評判が良かった。


 友人のジュントスはもちろん、かつて命を取り合った仇敵のリーザでさえ、ほとんど完食。笑顔まで見せていた。


 そのとき、ふと思いついたのが異文化交流の機会を、利用できないかということだ。


 クロノ王国アニマ王女と勇者トシヒコとの政略結婚。


 婚礼の場には、間違いなく法王も後見人として名を連ねるだろう。


 すると、この世界の3大巨頭が顔を合わせるわけだが……。


 ここに、どうにかロンレア領や諸侯たちも首を突っ込むことはできないものか……。


「ジュントス殿。折り入って相談があるのですが、別室で飲みなおしませんか?」


 俺はさっそく、心を許せる友の(?)ジュントスを二次会に誘ってみた。


「ほう。良いですな。知里どのやリーザどのもいかがですか?」


 ジュントスは当然誘いに乗ってはきたが、ちょっと待て。


 さすがにこの話をリーザに聞かれるわけにはいかない。


「リーザ殿には、当家自慢の露天風呂にでも入っていただきましょう」


「おお。ならばせっかくですので皆で混浴などはいかがでしょう。ウシシシシ」


「はい?」


 ジュントスからの思いもよらない提案に、俺は思わずリーザを見る。当然、彼女は突っぱねるはずだ……が。


「……ご命令とあらば騎士として任務を遂行いたします」


「ええええ?」


 俺は暗にリーザを避けたつもりが、予想外の方向へ話が流れてしまった。


 彼女は頬を赤らめながらも、毅然とした表情で頷いた。ジュントスは普段からこんなセクハラまがいのことをやっているのか……。


 うらやましい……否、けしからん。


「ジュントスどの」


「!!……こ、これは僥倖ですな直行どの!」 


 ジュントス自身も予想外なリーザの答えに、嬉しい驚きを隠せないようだ。


「いや待て、女性と共に入浴するのはいかがなものかと思う。そちらの世界に、そんな風習はないでしょう」 


 一方、俺は常識的な発言を心掛けた。しかし、この発言がリーザを怒らせてしまったようだ。

 

「無防備な裸であれば要人警護ができないとお思いか? 私が羞恥のあまりに任務を果たせないとも? それこそ騎士に対して無礼というものだ!」


 リーザは今ここで裸になりそうな勢いでまくしたてた。


「良かったじゃないですかー直行さん♪ 殺し合った相手と、裸の付き合いなんてそうはできません♪ レモリーも愛人として、気が気じゃないでしょう♪ 夫のお目付け役に同行しなさい♪」


「んな……正妻でありながら愛人をけしかける幼な妻……。噂通りの鬼畜!」


 リーザは絶句している。俺も、どうしたらいいか分からない。


「おお! さすがロンレア領主さまですな。拙僧もレモリーどのと混浴とは、実に素晴らしい提案です。どうですか領主どの、魚どの、知里どの……そしてネンちゃんも一緒に」


「……はい! 直行さまのご命令とあらば、私は身命を賭して従いましょう」


 レモリーまで、そんなことを言い出すと、この場は混乱するばかりだ。


「わたしは聖龍教団の騎士だ。公の任務のためなら肌を晒すことなど何とも思わぬ」


 リーザとレモリーは決闘裁判で命のやり取りをした挙句に、エルマに媚薬を打ち込まれて醜態をさらした因縁の仇同士だ。


 両者は睨み合ったまま、促すように俺とジュントスを見る。


「あほくさ。あたしは部屋で飲みなおすわ」


 知里は呆れて、部屋を出て行ってしまった。

 

「あ。知里どのは一緒に混浴をなさらないので……」


 ジュントスは何とも言えない悲しげな顔をしていた。


「ネンちゃん、カッパのおじさんとお風呂に入るかい? ウシシシシ」


「あ、コラ! ジュントス殿。それはいくら何でもマズいですよ」


 俺は慌ててネンちゃんを部屋から出した。


「ネンちゃん、もう遅いからおやすみ」


 従者を呼んで、少女を部屋まで送って行ってもらう。


「ふう……」


 何だかバタバタして、ドッと疲れてしまった。 


「直行さん♪ あたくしも未成年ですから、一緒に入るわけにはまいりません♪ 残念ですが部屋で休みますわ♪ くれぐれも羽目を外さないように、節度ある行動をお願いしますわね♪」


 エルマはそう言って、俺と入れ違いになって部屋を出ていった。


 奴のことだ。何かを企んでいなければいいが……。


「直行サン。皆デお風呂、久しぶリだヨ」


 何だか魚面までご機嫌な様子で、ジュントスにいたってはすでに鼻を膨らませている。 


 まさかの混浴大会……。


 俺たちは修学旅行の生徒たちのように、露天風呂へと向かった。


挿絵(By みてみん)

 次回予告

 ※本編とは全く関係ありません。


「6月6日は楽器の日だそうですね♪ 知里さんはギターが弾けるんでしたっけ?」


「あんま上手じゃないけどね。お小夜はピアノやってたのよね?」


「小学校のときにお教室に通ってたくらいよ。エルマちゃんは何かやってたの?」


「前世ではマジメ系クズでしたからね♪ 習い事は一通りやりましたけど、身につきませんでしたわ♪」


「自分で言うのは潔いな、エルマよ」


「直行さんは野球一筋で挫折したから、何も残っていないんですよね♪ お気の毒に♪」


「だから俺は今、命がけなんだよ。次回の更新は6月9日『ドキッ! 二度目の温泉回2』お楽しみに」


「温泉回に命をかけないでよ……」

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