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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
5章・我が世の春と、世界に立ち込める暗雲
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454話・宿命通の脅威

 ロンレア領で俺たちが使っている邸宅は、外見は元のままだが、内装は勇者自治区から現代文明の家電や家具などを取り寄せて改装されている。


 便座洗浄機付き水洗トイレや、冷蔵庫など、快適な生活のために必要なものはおおよそ揃えてある。


 俺は私室にいぶきを招き入れ、話を切り出した。


「さて、いぶき。クロノ王国について、知っていることを話してくれ」


挿絵(By みてみん)


 神田治(かんだはる)いぶきは意識高い系風の外見ながら、お調子者で好戦的な人物だ。それがために勇者自治区ではトシヒコの信頼を得られず、クロノ王国にすり寄ったりして、スパイ疑惑を受けている。


 俺は、彼の身柄をロンレア領で保護する代わりに、三重スパイとしてクロノ王国の内情を探ってほしいという条件を出した。


 しかしその前に、現時点で聞いておきたいことがある。


「……さっき現場で、ネオ霍去病の『宿命通(しゅくみょうつう)』と口走っていたけど、ネオ霍去病といえば〝七福人〟の筆頭で、クロノ王国の情報相という地位にある者では……?」


 俺は状況を整理しながら尋ねた。


「ええ。情報相のネオ霍去病です」


 鵺の猿の殺害現場で、いぶきは確かにそう言っていた。


 しかし、事前予約なしに法王側近のジュントスが来るという予期せぬイベントが起こったために、うっかり忘れそうになってしまったが、それは敵の主力に関する重要な情報ではないか。


 猿の一件に、そんな大物が関わっていたというのか。


「ネオ霍去病とは一体、どんな人物なんだ」

 

「……情報相とはヒナさまとの首脳会談でボクもお会いしましたが、単独で話したことはないので詳しいことは分かりません」


 いぶきは、慎重に言葉を選びながら話しはじめた。


「歳は20代前半くらい。蛇のような目つきで、中国風の鎧を着ています」


「古代中国からの転生者……なのか?」


挿絵(By みてみん)


「分かりません……。一見、涼しげで知的な印象ですが、立ち居振る舞いや言葉遣いには粗野なところがありました。おそらく貴族の生まれではないと思います」


 この世界の身分制度はかなり極端だ。貴族の生まれかそうでないかは、何となく俺でも分かる。


 たとえは悪いが、エルマの言動はアレでも、立ち居振る舞いは意外と優雅だったりする。錬金術師アンナもそうだ。


 一方、スライシャーやボンゴロなどの冒険者や、鵺の虎仮面などはちょっとした動作が乱暴だったりする。


「ネオ霍去病……成り上がりか」


「彼が宿しているという『宿命通(しゅくみょうつう)』は、自他の過去の出来事や生活を見破る能力と言われています……」


「〝チート持ち〟ってところは……俺とは違うか」


 ネオ霍去病が持つという『宿命通』は、『六神通(ろくじんづう)』と呼ばれる、この世界で最も貴重な才能の持ち主だ。


 知里の持つ『他心通』は、人の心が読める。


 勇者トシヒコの『天眼通(てんげんつう)』は、見えないものまで見通せ、個人の秘められた才能をも開花させるという。


 法王ラー・スノールが持つという『天耳通(てんにつう)』は、視界内のどんな音でも聞き逃さない。彼はそれを利用して、マイクもなしに一万人以上の信徒たちの声を聴き分けていた。


 俺が知る限りはこの3人だが、いずれもこの世界で指折りの影響力を持つ実力者だ。


「クロノ王国の情報相が『宿命通』だというのは、トシヒコさまがそう言っていたからで、能力を直に見たわけではありませんけどね……」


 いぶきの話によれば、トシヒコやヒナ・メルトエヴァレンスとの首脳会談では平身低頭だが、いぶきやアイカが相手だと尊大で鼻持ちならない人物だとか。


 その話は、俺もヒナから直接聞いていたので、裏は取れた。


「あくまでもトシヒコさまの推測の受け売りですが、〝ネオ情報相は、魔力は大したことがないが、いっさいの過去を見通す力で、クロノ王国の旧臣を呪い殺したり脅したりして、権力を掌握した〟のだとか……」


「過去を見通す能力はやべーな……」


 厄介な特殊能力なのは間違いない。


 誰だって、人には言えない後ろめたい過去を持つ。ましてや政治に携わる人間ともなれば、清廉潔白というわけにもいかないだろう。


 ネオ霍去病は、政敵の秘密を知りつつ、脅したり懐柔したりして、ガルガ国王の側近に上り詰めたのだろう。


 一方で、呪殺系魔法は相手の個人情報を知れば知るほど、成功率が上がるという話を聞いたことがある。


「いぶきの話を聞けば、なるほどネオ霍去病が〝鵺の猿〟を呪殺した可能性はあるな」


「ボクの中では確定です」


 なぜかいぶきは自信満々だが、殺害する動機に当たる部分が見えてこない。


「……しかし霍去病と背後にいるクロノ王国が猿を始末する理由は、まだ分からない。口封じにしても、中途半端なタイミングだ」


 俺は応接ソファから立ち上がり、部屋に掲げられた地図を指さした。


「猿仮面の身元確認は法王庁のジュントスに頼んである。虎仮面の尋問は知里さんに任せれば問題ない。いまは一つずつピースを埋めていくしかないな」


 ロンレア領の東に法王庁。西にクロノ王国・新王都。湖を挟んだ南に勇者自治区。 


「……なあ、いぶき。三重スパイを頼む前に、俺としてはお前とちゃんとした信頼関係を結んでおきたいと思っているんだ……」


 俺は、改まっていぶきに言った。



 次回予告

 ※本編とは全く関係ありません


「エルマ奥さま覚えておりますか? 仕立て屋のティティでございます」


「ああ、あの昭和モダンガール風だけど現代人じゃない人♪」


「直行さまはギッドさまに続いて、いぶきさまとも熱い関係を結ばれそうで、目が離せませんねー」


「直行さんは女性だけでなく、男性も魔物も恋愛対象ですからね♪」


「魔物もですか? え、ええええーーーっ!!」


「いつぞやは下半身を馬に、自身をケンタウロスに改造しようかと思ったようですわ♪」


「ぎょえええええーーーっ!!」


「仕立て屋さんも毒牙にかけられないようにご注意ください♪」


「ヒィィィぃ」


「次回の更新は5月25日を予定していますわ♪ 『ケンタウロスのケンちゃん再び』お楽しみに♪」

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