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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
5章・我が世の春と、世界に立ち込める暗雲
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453話・魔術的な実況見分と探偵ごっこ


 俺は、殺人現場で今後の指示を出した。


「レモリー、ギッドと共にジュントスどののお手伝いを頼む」


「はい。承知いたしました」


「ウシシシシ。クールビューティーなレモリー殿が一緒とは心躍りますな。それにしても直行殿はタイプの違う美女を取り揃えて、領主冥利に尽きるでしょうな。羨ましい」


 レモリーとジュントスのコンビには、探偵ごっこを続けてもらおう。すでに遺体発見現場の様子はギッドがまとめているが、ジュントスは殺人事件に興味津々のようで、俺への用事も忘れてしまっているらしい。


「しかし酷い遺体ですな」


「……はい。鵺の頭目は変わり果てた姿となりましたが、すさまじい魔法の使い手でした。のみならず戦闘巧者でもあり、知里さまがいなれば、私などは確実に討ち取られていたほどです」


「ふむ。……拙僧、それが疑問なのですよ。これほどの術者を呪い殺す呪殺が、実に中途半端な術式で遠方から行われたこと……興味が尽きませんな」


「はい。魔法が封じられていたとはいえ、凄腕の術者を中途半端な術式で呪殺する。確かにこれは奇妙です」


 ジュントスとレモリーは、ギッドが記した遺体発見当初の様子と遺体を交互に眺めながら、考えてみれば奇妙な呪殺の手口に首を傾げている。


「……遺体を法王庁で調べたいのですが、よろしいですかな?」


 ジュントスが改めて俺に同意を求めた。


「何か手掛かりがつかめそうですか?」


「非合法な組織の長ですが、この御仁、生まれは悪くなさそうです。ほらココ、額に聖刻が刻まれております。身元が分かるかもしれませんぞ」


 ジュントスの話によると、貴族や高位の聖職者などの出で、生またときに病弱だった赤ん坊は額に聖刻と呼ばれる小さな印をつける風習があるという。


 生まれが病弱だった割には、暗殺集団の頭目として派手に暴れまわっていたけどな。


「魔王討伐後は、すたれてしまった風習ですが、聖刻を管理していた法王庁の寄進帳を調べれば、手掛かりがつかめるかもしれませんぞ」


 あの生臭坊主が珍しく真面目なことを言っているので、俺は少し拍子抜けしてしまった。


 もしかしたら単に死体を持って帰りたいだけかもしれない。


 あるいは、法王庁で発生した謎の奇病『死の舞踏』とも何か関連があるのかも知れないけれど、それは最重要機密らしいから、うかつに尋ねるわけにもいかない。

 

「何にしても、猿の遺体から何か情報が得られたなら、ウチとしても助かる。ジュントス殿にお任せします。細かな手続きなど、手が足りないときはギッドや自警団の皆を活用してください」


 俺はギッドに指示を出し、自警団の皆に協力を要請した。


 リーザには、遺体を運んでもらうことになる。


 飛竜と共に直立不動で待たされているビキニ鎧のリーザは、何を思っているのだろうか。仏頂面で槍を構えたまま、身じろぎもせずにその場で待機している姿はちょっと気の毒ではある。


挿絵(By みてみん)


「知里さんは、魔術的な実況検分で現場を調べた後、虎の尋問をまとめてほしい。魚面は知里さんのサポートを頼む」 


「りょーかい」


「分かっタ」


 目撃者で重要参考人でもある虎仮面の尋問には、人の心が読める知里が適任だろう。


「魚ちゃん、猿の仮面に隠されたダイイングメッセージも探ってみよう」


「OK知里サン」


 そのサポートには、かつて鵺に所属していた魚面を当てる。彼女は召喚士で、手練れの術者でもあるから、魔術的現場検証もカバーできるだろう。


 その上で俺がすべきことは、いぶきとの対話だ。


「さて、物騒なことになってしまったが、いぶきは俺の私室にご案内しよう。今後のことについて、腹を割って話したい」


 ジュントスが現れるまでは俺のそばにいたいぶきだが、今は隠れるように柱の陰に身を潜めている。俺が近づくと、コソッと耳打ちしてきた。

 

「……そこにいるのはリーザ・グリシュバルトですよね。ボクも殺されかけました。小夜子さんのようなビキニ鎧を着ていますが。影響されたのでしょうか」


「いや、ジュントスの趣味だろう。パワハラ兼セクハラ案件だけど、異世界人にそんなことを指摘しても仕方がない」


 取るに足らない雑談を交わし、俺たちは屋敷の2階に上がっていった。


 ◇ ◆ ◇


 いつ、誰を裏切るか分からないような性格のいぶきに三重スパイをやらせるためには、彼の心を掴んでおかなくてはならない。

次回予告

※本編には関係ありません。


「紅の姫騎士リーザ、ジュンちゃんの理不尽な要望には従う必要はないよ。これセクハラとパワハラのアウトな事例だから」


「お尋ね者の冒険者に言われる筋合いはない。騎士たるもの、主君の命は絶対だ。それに今回、異界の女狂戦士・小夜子のような破廉恥な衣装を着ているのは法王さまの意向でもある」


「えっ、マジで? あの人がそんな命令するかなあ」


「法王さまはジュントスさまを通じて、回避の大切さと、腹を掻っ捌かれる緊張感を持った生活を心がけろと言われたそうだ!」


「それたぶん嘘だよ」


「主君を疑うことはあってはならない! 法王さまがどのような人物だろうとも、忠誠を尽くすのが聖騎士だ」


「でもその格好、お小夜は半分好きでやってるっぽいけど、女性として、人前で肌を晒すのはリーザは嫌じゃないの?」


「私は騎士だ! 騎士に男も女も関係あるか! 異界の価値観を押し付けるな!」


「ダメだこりゃ……。次回の更新は5月20日を予定しています! 『クッ殺せ! 紅の姫騎士の受難』お楽しみに」

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