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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
5章・我が世の春と、世界に立ち込める暗雲
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445話・闇に吠える街

挿絵(By みてみん)


 うつろな瞳の知里が、秘密警察2人組を殺そうとしていた。


 彼らは既すでにロープでがんじがらめにされており、抵抗できない。その首筋には闇の魔力で作った死神の鎌が当てられている。

 

 俺は心底驚いてしまったが、近づきながら叫んだ。


「知里さん! 何をやってるんだ。そいつらを殺してしまったらダメだ!」 


 ホバーボードから飛び降りて、知里を止めに入る。


 ──明らかに様子がおかしかった。

 彼女は拍子抜けしたような感じで、俺を見た。


「……だってコイツら『睡眠無効』『麻痺無効』のアイテムを装備してるし」


「知里さん? 大丈夫か……?」


 俺は知里の肩をゆすってみる。彼女はビクッとして、目を見開いた。


「あれ? 直行。コイツら『睡眠無効』の……」


「だからって首を刎ねようとするって、どうかしてるよ。正気か? 何かされたのか?」


「──首を刎ねる……あたしが?」


 俺の問いに、知里はギョッとした様子だった。 


 そして我に返ったように、闇の魔力で作った死神の鎌を消した。


「ごめん……あたし、どうかしてたみたい」


 我に返った知里は、頭を押さえながら闇の翼で宙を飛ぶ。


「追っ手はあと4人ね……」


「知里さん、大丈夫かよ?」


「闇の魔力に意識を乗っ取られそうになってしまった。今はもう大丈夫……制御するから」


 知里はそう言って俺を見た。強い瞳で、決意に満ちている。


 大丈夫、だと思いたいが……。


「すみませんボクなんかのために」


 意識が戻ったいぶきが、申し訳なさそうに言った。


 俺は、どう答えてやったらいいか分からなかった。


「追手が迫っている。どうにかエルマたちに連絡を取りたい。数分、時間を稼ぎたいんだけど」


 俺は知里といぶき、どちらに言うでもなく問いかけた。


 ロープで動けないようにした秘密警察から距離を取り、いったん裏路地に入る。


「あたしが幻影魔法で行き止まりを作ろう」


 知里はそう言って魔力を発動させる。


「さすが!」


 一瞬で、路地裏は壁に覆われた。外の通りからは行き止まりのようになり、こちらの様子はうかがえない。


「直行はどうするの? あたしの能力では逃走経路を確保できないし……」


「強行突破は可能でしょうけどね」


「いぶき、アンタは少し黙ってて」 


 限りなく黒に近い人物いぶきを保護することを決めたのは俺だ。


 彼に三重スパイとしてクロノ王国の内情を探ってもらう。


 リスクは多大にあるが、情報統制された国の情報は、喉から手が出るほど欲しい。


「直行……」


 俺の心を読んだ知里が、腕を組む。彼女にしても、クロノ七福人に個人的な復讐を抱える身だ。 


 俺たち3人は、引き返せない道を歩もうとしているのかも知れない……。


「……さて」


 俺は緊急用の通信機を取り出し、ヒナ・メルトエヴァレンスに電話をかけた。

 ここから先は、精神的な綱渡りだ。


「直行くん。何かあったの?」


「理由があって、トシヒコさんの秘密警察に追われている」


「えっ……」


 ヒナは絶句している様子だった。

 どうやらカラオケ中だったようだ。


 電話越しに、80年代のアイドルソングを歌う小夜子の明るい歌声と、囃し立てるアイカの声が聞こえてくる。


「ヒナちゃんさん。小夜子さんと一緒なんだ。エルマたちもそこにいる?」


「ここにはアイカだけ。あの人たちは、たぶんホテルじゃないかしら」


「そっか。教えてくれてありがとう」


「……何をやったの? ヒナに聞かせてくれる?」


 ヒナの声はいつも以上にシリアスに感じる。

 俺はいぶきを横目で見る。


「実は……いぶきと一緒なんだ」


「……なるほど、いぶき君に巻き込まれたと?」


 この様子だと、ヒナがどこまで実情を知っているかは分からない。

 俺は肯定も否定もせず、言葉を継いだ。


「ヒナちゃんさんは、彼が秘密警察に追われている容疑は知ってる?」


「……トシは疑っているようだけど。ヒナはいぶき君を信じてるよ」


 ヒナの話は、受話器に耳を近づけている知里といぶきには聞こえている。

 彼女の「信じている」に、いぶきは苦笑いを浮かべる。


「もちろん俺も彼を信じてる。なので、秘密警察に撤収を命じてほしいんだけど、いいかな?」


「それは……」


 しかし、ヒナは返事を濁す。


「治安維持のための組織の存在は、トシから聞いてはいた。でも具体的に何をする組織なのか分からないし、ヒナに彼らをどうこうできる権限はないの。残念だけど」


 彼女がどこまで状況を把握しているかは分からない。


 しかし、俺からは「いぶきが限りなく黒」であることは伝えない。


「そっか。ただ、俺もとばっちりで追われているのは困る。逮捕されたらシャレにならないし……」


「ヒナからトシに連絡しておこうか?」


「万が一俺たちが捕まったら、そのときは便宜を図ってほしい。いまは自分たちでどうにかするよ」


「どうにかするって、直行くん何を考えているの……?」


 俺は、秘密警察から逃れつつ、いぶきをロンレア領に連れ帰らなければならない。


 そのためには、まずはヒナ・メルトエヴァレンスを出し抜く必要があった。



 次回予告


 ※本編とは全く関係ありません。


「直行さん、GWも後半戦ですわね♪」


「俺は勤めてた頃はブラック企業だったから、GWも休みじゃなかったんだ。アフィリエイトを始めてからだと記事の更新で、そもそも休みなんてなかったし……」


「学生時代はどうでした?」


「少年野球をやってた頃は、大会が目白押しだったな。辞めてからはボッチだったから、休日は家でずっとゲームだな」


「……直行さん元気出してくださいね♪ 明けない夜はないと言いますわ♪」


「エルマに慰められると泣きたくなるな」


「次回の更新は5月5日を予定しています♪ 直行さんにGWは来るのか? お楽しみに♪」


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