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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
5章・我が世の春と、世界に立ち込める暗雲
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443話・三重スパイの憂鬱

「いぶきには、三重スパイとして、クロノ側の情報を流してもらう」


 俺からの提案に、いぶきは戸惑っている。


「ボクにクロノ王国の内情を探れ……と」


「ああ。あの国は情報統制が敷かれていて外部からでは内情を探れない。だから……」


「情報を流す見返りに、直行さんは何を?」


「いぶきの命の保証。俺がトシヒコさんに掛け合ってみる」


 彼が本気で知里に勇者トシヒコの暗殺依頼をするつもりかどうかは知らない。


 ただ、遅かれ早かれ始末される運命ならば、俺が間に入ることで「トシヒコの手から逃れられる可能性」が生まれる。


 何にしても綱渡りだが……。


「しくじればボクは全方位を敵に回し、クロノ王国側にも命を狙われますよね……? ぶっちゃけ、直行さんの政治力だけでは、あの超人たちからボクの命は保証できませんよね」 


「……いぶき。あたしからも頼む。〝七福人〟のソロモンとグンダリの情報が欲しい。その代わり、あんたに迫る危機は、あたしが摘んであげる」


「知里さんが……ボクを守ってくれるんですか?」


 いぶきは半信半疑の様子だ。無理もない。知里は明らかに彼に対して思うところがある。


 ──しかし、一方でこの話は知里にとってもメリットがある。


 個人的な事情で彼女は七福人を追っている。

 

「直行さんの政治力に加えて、知里さんが力を貸してくれるなら、ボクの身柄は一安心ですが……」


「……待って!!」


 いぶきの話を聞いていた知里の表情が一変した。


「直行『逆流』を……」


「お、おう」


 彼女は俺の肩に手を置き、小声で囁く。

 俺は言われたとおりに、スキル『逆流』を発動させた。


「ん? どうかしましたか。直行さん、知里さん」


 こうすることによって、知里の「他人の心を読む能力」は『逆流』して、テレパシーのように知里は思いを伝えることができる。


(下のBARに秘密警察が2人侵入してる。入り口を固めて逃がさないつもり)


「!!」


 この手際の良さを考えると、いぶきは最初からマークされた可能性が高い。


 うかつにも話に乗ってしまった俺たちは、とんだマヌケということになる。


(いぶき、そこに立てかけてあるホバーボードは使える?)


「……」


 いぶきは黙ってうなずく。


(あたしが眠りの魔法でBARの客もろとも動きを止める。合図するから2人はその隙に非常階段から逃げて)


 ……了解した。俺は、親指を立てて頷く。


 それと同時に、知里は猫のような俊敏さでドアに近づき、音もたてずに部屋を出て行った。


 ……さて、一刻の猶予もない。


 荷物をまとめているいぶきに、俺はその辺のハンガーにかけてあったパーカーを差し出す。気休めにしかならないが、フードを被って顔を隠してもらおう。


 ついでに逃走用のホバーボードを手に取った。


「知里さんからの合図って……?」


「たぶんコレだ」


 部屋の中央に、小さな黒い炎が揺らめいている。俺はそいつを指さしながら、非常口へのドアに手をかける。

 

「秘密警察は歴戦の強者です」


「あの知里さんが後れを取るとは思えないけど」


 いぶきの額に汗がにじんでいる。彼が心配するのは分かる。


 おそらく敵は対人に特化した武装集団。


 いくら心が読めるとしても、敵地での戦いだから分は悪い。その上こちらは相手に怪我をさせるわけにもいかない……。


「来た! いくぞ」


 黒い炎が消えた。


 知里が何か仕掛けたようだ。


 俺はホバーボードに足をかけながら非常口へのドアを開け放った。 


 知里が先制して秘密警察の動きを止めている隙に、非常階段からホバーボードで脱出する。

 手すりを飛び越えて、宙へ。


「させるかよ!」


 しかし、階段の周囲にはすでに数名の武装した男女が配置されていた。


挿絵(By みてみん)


 別動隊か……。

 銃のようなもので、俺たちは狙いを定められている。


「スタン・ブラスターです!」


 フードを深々と被ったいぶきが叫んだ。


 待ち伏せされていた以上、相手には素性はバレている。


 正面に2人。後方に2人……。


 BARの店内で知里と交戦中の者が2人の計6人。 


「こちらに戦闘の意志はない。俺はロンレア領の直行だが、あなた方は何用か?」


 俺は一旦、両手を掲げて対話を試みる。


 少しでも時間が稼げるならばそれでいい。


「無関係の方には危害を加える意思はありません。お連れのいぶき氏に重大な嫌疑がかかっておりますので、身柄を引き渡していただきたい」


 秘密警察は銃を構えたまま言った。


 囲みを解く気持ちは少しもなさそうだ。いざとなれば、俺まで逮捕しそうな凄味を感じる。


「待ってくれ。ヒナちゃんさんはこのことを承知しているのか?」


「いいから、いぶき氏をこちらに差し出して!」


 俺はヒナの名前を出したことで、秘密警察に揺さぶりをかけるつもりだった。


 しかし、彼らは聞く耳を持とうとはしない。


 ホバーボードに乗った状態で、前後を囲まれている。


 知里と合流しないと逃げ切るのは難しそうだが……。彼女からは何の音沙汰もない。


(……どうやって、この場を切り抜けるか)


 俺といぶきは宙に浮いたまま、この場を切り抜ける方法を探っている。


 秘密警察は銃を構えたまま、ゆっくりとにじり寄ってくる。


「…………」


「…………撃て!」


 ささやかな膠着状態は、秘密警察の発砲によって破られた。

 

 次回予告

 ※本編とは全く関係ありません。


「小夜子どぇーす。ねえエルマちゃん。鎌倉幕府の成立が1192年じゃなくなったのって本当?」


「1185年ですわ♪ ちなみに戦国武将の織田信長も実は女性だったそうですわ♪」


「えぇーっ! 上杉謙信の女性説は知ってるけど、信長も女性だったのー?」


「平成末期~令和の常識ですわ♪ 三国志の関羽も趙雲も、みーんな美少女ですわ♪」


「なんちゃってウッソー。知ってるわよー。それゲームの話でしょう! 知里がよく話してたわ」


「ぎゃぺっ」


「残念。わたしが昭和の女だからって、騙せると思ったら大間違いよ!」


「じ、次回の更新は5月1日を予定していますわ……」


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