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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
5章・我が世の春と、世界に立ち込める暗雲
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441話・勇者トシヒコ暗殺計画

「……よく来てくれました」


 いぶきは少し疲れているようだった。知里と俺は奥の部屋に通される。


 BAR〝.357〟のバックヤードから非常階段を伝わって、アジトのような部屋に場所を変えた。


 コンクリート打ちっぱなしで、ソファとガラスのテーブルが置かれている。

 壁にはホバーボードが立てかけられていたり、秘密基地のようだ。


「テキトーにかけてください。インスタントですが、コーヒーも入れます」


「ありがと」


「……しかし、いぶき。ずいぶんと物々しい警戒だな」


 俺と知里は低いソファに腰かけた。


 その間、いぶきは手慣れた様子でドリップコーヒーを淹れてくれた。

   

「ええまあ。トシヒコ様直属の秘密警察がボクを嗅ぎまわっていますから」


「……そいつは穏やかじゃないな」


 秘密警察か。

 ずっと疑問には思っていた。


 1万人弱のこの街で、治安はどうやって維持しているのかと。


 ゲート付近にいるオモチャの兵隊のような格好をしている警備兵だけでは、どうやったって全域をカバーできない。


 ドローンで監視するにせよ、犯罪者や政府に不満を持つ人を取り締まる人がいないのはおかしいとは思っていた。

 

「そうか……。この街に来た時の地に足がついていない浮ついた印象は、警察や軍隊みたいな治安維持に関する人たちが目に入らなかったからなんだな」


「女に甘いトシヒコらしいやり方ね。まあ甘いと見せかけて、要所をキッチリ締めているんだけど」


 ヒナちゃんが善意で政治ができるのはトシヒコが裏で反乱分子を押さえているからなのだろう。


 そういえば鵺の〝(ましら)〟と虎を捕らえたときの、ヒナの政治家とは思えない、あまりにも性善説な言動に驚いたものだけど……。


「ままごとの政治をヒナたちにやらせるために、勇者が裏で手を汚してたわけか」


 知里は小さなため息をついた。


「……で、ボクはたぶん消されるんですよ」


 いぶきが冗談っぽいしぐさで言った。しかし目は笑っていない。


「知りすぎた諜報活動員は、コトが済めば用済みですから」


「だから殺られる前に殺れと。あたしに勇者討伐を依頼してきた」


「……心が読めるって、マジでチートですよね」


 いぶきは肩をすくめる。

 

「おい。ちょっと待てよ。そんなこと軽々しく言うもんじゃないぞ」


「言ってはいませんけど」


 いぶきの軽率さは、以前から気になっていたことだが……。

 急にそんなことを聞かされた俺たちは困ってしまう。


挿絵(By みてみん)


「泣きつくんならヒナにしたらいいよ。あの娘は、アンタが頭を下げたら耳を傾けてくれる。仮にも上司なんだし、トシヒコとの間に入ってくれるよ」


 知里の言うことはもっともだ。


 ただ、大分()()()()いぶきの表情から、事情だけでも聞いておかないと……とは思う。


「いぶき。直行が〝話してみろ〟ってさ」


 俺の心を読んだ知里が言った。


「ありがとうございます直行さん」


 いぶきは何度も頭を下げながら、俺の手を取った。


 彼にはチャンスをもらった。恩義がある。


 いぶきがいなかったら、たぶんマナポーションを売りさばくことができずに俺とエルマは詰んでいた。


 もしもの世界があるなら、いぶきと会わなかった世界線での俺はどうなっていたのだろう……?


「しかしいぶき。どういう経緯で、そんな物騒なことになった?」


「……前に自称・転生者や解放奴隷を自治区に斡旋するブローカーの話をしましたよね」


 ブローカー。

 いぶきの言ったことは覚えている。

 転生者や被召喚者になりすまして勇者自治区入りさせるために暗躍するブローカーの存在。


 確か、いちばん最初に来たときから言っていたはずだ。


「ボクは諜報部員として密入国ブローカーを追っていました。でも、どうやら当ブローカーはクロノ王国と結託して、〝技術を盗むために意図的に送り込まれたスパイ〟だったようです」


 産業スパイ……のようなものか。


「まあ、よくある話で。技術流出〝あるある〟だね」


 知里は関心がなさそうに流した。


「問題なのが、密入国ブローカーは帰還者リストの上位者をクロノ王国に引き抜いていたようなんです」


「え? 俺より上位にいたっていう……」


 確か勇者自治区でヒナに召喚された人たちは、帰還を望めば元の世界に戻してもらえる。なかなか条件が厳しいから、功績を上げた順で帰還者リストが作られていたらしいのだが……。


「ええ。クロノ王国のスパイは現在、日本への帰還をエサに勇者自治区の技術者たちから技術情報だけを抜いています」


 ……なるほど。


 俺と知里はうなずいた。

 クロノ王国がいびつな形で勇者自治区の技術を盗んでいたのは、裏切り者がいたということか……。



 次回予告

 ・本編とは全く関係ありません。


「4月24日は○武ワールドスクエア―が開園した日らしいですわね♪」


「92年オープンだな。世界遺産のミニチュアが展示されいて〝ガリバー気分で世界一周〟みたいなキャッチフレーズがあったな」


「直行さんは行ったことありますか?」


「いや、残念ながらないけど」


「あたくしは前世で行きましたわ♪ エジプトのピラミッドやコロッセオなんかもありましたわ♪ ミニチュアを見ると、優越感にひたれるんですわ♪」


「バシェラールの法則だな。『人間は大きなモノよりもミニチュアのほうが好き』……っていう」


「手当たり次第に女に手を出す直行さんには分からないでしょうね♪」


「次回の更新は4月27日を予定しています。『あれ? 次回予告にオチがない』お楽しみに♪」

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