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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
5章・我が世の春と、世界に立ち込める暗雲
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438話・女たちの銀河天国物語

 勇者自治区の夜。メインストリートはライトアップされてきらびやかだった。


 ハイビスカスの刺青が特徴的なヒナの腹心アイカが、俺たちをディナーに案内してくれるという。


「最近ウチやヒナさまがハマってるテクス・メクス料理のお店があるんすよ」


「なにそれ知里?」


「メキシコ風アメリカ料理よ。ナチョスとかチリコンカンみたいな」


「タコスなら知ってるけど? アミーゴ知里、わたし全然わかりませーん」 


「お小夜はノリがよくていいわね……。でも、ヒナらしい気取った感じが鼻につくわね」


「パッツンのお姉さんは陰キャっぽい割には覚悟ガンギマリでカッケーっすよね。マジ〝パネェ〟っす」


「……たぶんね」


 前列にはアイカと小夜子と知里の現代組。ヤンキーと優等生? とゴシック陰キャの取り合わせだが、何となく話が弾んでいるようだ。


 その後ろを、根暗なレモリーと魚面が続く。


「レモリーサン、なんでコノ街はこんなに眩しいノ?」


「いいえ魚さん。街が眩しいのではなく、精霊石が必要以上に配置され、輝いているのです」


 レモリーは最後尾の俺とエルマを気にしながら、魚面の問いに答えている。


 魚面は目に映るものすべてが珍しいようだ。


「エルマお前、夕飯はどうする?」


「ふん♪ ヒナさんが好きそうないけ好かない料理は嫌ですわ♪ アイカさん。あたくしは銀河天国物語でラーメンを食べたいのですが案内してもらえますか♪」


 エルマは前列まで駆けて行ってアイカに言った。


「アイカさん、すみませんエルマの奴が勝手言って……」


「いや、ウチは構いませんけど。マジっすか……あそこやべー店っすよ。貸し切りにできないけど、それでもいいすか?」


「仕方ありませんわ♪ 銀河の大将は真の(おとこ)ですからね♪」


 銀河天国物語は、華やかなメインストリートの中で違和感あふれる店舗となっていた。


 壁には看板と共に店主の自筆で書かれたと思われる『いっしょうけんめいだから、うまいんだなあ』の文字が躍る。


「見てくださいよ知里さん♪ けっこういいこと書いてあるでしょう♪ カッコいいじゃないですかー♪」


「ラーメンポエムね。もちろん店主はタオルを巻いて腕組みしてるんでしょうね」


「さすが知里さん♪ 分かってますわー♪」


「まあね」


 色とりどりのファッションに身を包んだ若者たちが闊歩する街で、俺たちは浮いている。


 ドレスのエルマにローランドジャケットの知里。80年代風カジュアルの小夜子はともかく、現代衣装が今一つ着慣れない魚面とレモリー。


「何だかすごいお店ね。わたしの知ってる〝どさんこラーメンハウス〟とは全然違うわー」


「……小夜子さま、すごい名前出してきましたね。それウチの実家のラーメン屋で、系列のフランチャイズだったんっすよ。ウチが小3のとき潰れて親父が蒸発したけど……」


「苦労したのね」


「チクショーっすよ。だから中坊のころからグレて……殺し以外の悪いこと大抵やったんすよ」


「でも更生してよかったわー! ガンバ!」


「あざーす」


 何だかしれっと重い会話が小夜子に流されている。


 アイカと小夜子の会話についていけないレモリーと魚面。


「殺しに手を染めてナイなら健全だヨ」


「はい。あちらの世界には奴隷制度もありませんし……」


 こちらはさらに物騒な会話で盛り上がっている。


「じゃあウチが食券買ってくるっすよ」


「あ、お待ちください♪ アイカさん♪」


 一足先にのれんをくぐろうとするアイカを、エルマが止めた。


「ここのラーメン屋の大将は漢ですわ♪ あたくしたちが気合で引けを取るわけにはまいりません♪ 皆で声をだすのです♪」


 エルマが陣頭指揮を取り、俺たちはそろってのれんをくぐる。


「いらっしぇぁぁぁぁイ!!!」


 そこに、待ってましたとばかりに偉丈夫の店主から放たれる雷鳴のような挨拶。


 エルマの瞳が怪しく輝き、コール&レスポンスを返す。


「せーの♪」


「ゴー麺くだっしぇーぇぇぇぇい!!」

 

 怪鳥のような店主の呼びかけに、目の玉を剥きだして応えるエルマ。


「はい?」


 店主は素で面食らっている。


 せーのと言いながら、誰一人として唱和する者はいない。何がゴー麺なのかよく分からないが、誰一人ついていけないのは当然だ。


挿絵(By みてみん)


「あ。どうもお嬢さん……」


 心なしか銀河天国の店主もタジタジだった。


「……どうも」


 俺たちは何事もなかったかのように席に着く。


「ウチ、食券買ってくるっす……」


 アイカはそそくさと券売所で木札を購入してくる。


 ──そんな中、小夜子に目を留める銀河。


 他の客の対応を金髪で顎髭の若い衆に任せて、漢は小夜子をまじまじと見つめていた。


 次回予告

 ※本編とは全く関係ありません。


「〝銀河天国物語〟なんて、変わった屋号ねー!」


「自分、前世の名前が〝天野銀河〟だったんで……」


「それで銀河天国! わたしはてっきりローラースケート履いた7人組のアイドルグループの曲だと思ったわ」


「自分はそれ、知りません」


「……でも、どうして物語なの?」


「ラーメン食べるとき、〝いただきます〟から〝ごちそうさま〟まで起承転結があるじゃないですか。だから物語なんです」


「よく分からないけど、繁盛するといいわね!」


「次回の更新は4月20日を予定しています」

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