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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
5章・我が世の春と、世界に立ち込める暗雲
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435話・勇者自治区で爆買いをしよう


 今回の勇者自治区への訪問は、車で乗りつけた。


「でも直行さん♪ やはりあたくし潜水艦も乗ってみたかったですわ♪」


 俺たちが潜水艦を使わずに諸侯にあいさつ回りをしたり、正面から勇者自治区に入ったのは理由があった。


 どこかに潜んでいるであろうクロノ王国のスパイに、外交をアピールするためだ。


 勇者自治区とは密貿易をしている都合、これまでは表面上はあまりベタベタしないように気をつけてきた。


 しかしクロノ王国の軍事力は強大。近いうちに起こり得るだろ第二次ロンレア防衛戦を未然に防ぐためには、こちらもなりふり構ってはいられない。


 諸侯との連携や、勇者自治区との友好関係を宣伝する。外交上の方針転換、というやつだ。


 ◇ ◆ ◇


 政治・外交的な話はさておき──。相変わらず勇者自治区は豊かで華やかな街だ。


 夜を照らす精霊石の街灯が描く鮮やかなイルミネーション。


挿絵(By みてみん)


「見てみて、可愛いお店がまた増えてるわ! うっそー、あの服オッシャレー」


 小夜子はまるで女子高生のようにはしゃいでいる。


 前世が現代人だった者たちが開く店は、どれも個性的で活気に満ちている。


 エルマと知里は苦々しくも「陽キャの街」と言った。


 華やかで社交的なヒナ・メルトエヴァレンスの趣味に合わせられたテーマパークの町並みには、やはり気おくれをしてしまう。


「さすがヒナの趣味だけあって〝リア充女子力全開〟で、意識も高くて居心地が悪いわね」


「やっぱり心の友・知里さんですわ♪ あたくしもちょうどそう思っていましたの♪ 見てくださいよあのアパレルショップ♪ クソダサ男女なんかお客じゃないみたいな顔して♪ 見ているだけで腹が立ってきますわ♪」


「まあね」


 知里とエルマは変なところで意気投合している。


 お洒落なお店や店員に毒づいては、目が合うと視線を逸らす。


「お嬢、あの店員こっち見てるよ」


「ギャペッ!」


 とても女領主やS級冒険者とは思えない卑屈な振る舞いに、思わず苦笑いだ。


「魚ちゃん、これ見て、ナウいわよー」


 一方、小夜子と魚面はガールズトーク? をしながらショッピングに夢中だ。


 アパレルや雑貨を扱うお店の前で、ワンピースを合わせてみたり、とても楽しそうだった。


「ソウか。肌に密着する服は隠密動作に向いているナ」


「もう物騒なことはやめて、お日様の下で生きるのよー」


「イマ夜ダケド、前を向いて生きるヨ」


「ガンバ!」


 俺はそんな彼女たちを何とも言えない気持ちで引率している。


 絵面的にはハーレムっぽいのだが、実際は女子高の担任のような気分だ。


 ◇ ◆ ◇


 ……そんな他愛のないことを思いながらショッピングコートをうろついていたら、キックスケーターに乗った青年に呼び止められた。


「こんばんは」


 フードを被ったパーカー姿だが、この男には見覚えがある。


 ツーブロマッシュにメガネの小ざっぱりした意識高い系風青年。


 神田治(かんだはる)いぶきだった。


「お久しぶりです直行さん!」


 神田治(かんだはる)いぶきは、俺が成り上がるキッカケとなった取り引き相手だ。


 勇者自治区で自らは〝髪結い師〟を名乗っているが、たぶん嘘だ。おそらく諜報活動とか、そういう系の仕事だと思われる。


 しかし柔和な外見に似合わず、けっこう短気で好戦的な性格をしている。


「……アンタ、あたしたちを探ってたわね」


 知里は警戒心を剥き出しにしていた。


 レモリー、小夜子も緊張した面持ちだ。


「知里さん。今夜飲みにでも行きませんか? 折り入って頼み…………」


 いぶきは言いかけて、途中で言葉を止める。


 横目で街灯を見ると、小さく肩をすくめた。巧みに位置を変えながら、俺たちの間に割って入っていった。


 おそらく監視カメラに写らない場所を探しているのだろう。しかし……。


「いぶき君、どういうこと? 俺はてっきりトシヒコさんの使いだと思ってたけど」


「……何かと〝混み入った事情〟がありまして」


 いぶきは言いにくそうにしていたが、知里に目くばせをする。


 「心を読んでくれ」ということか。


 知里は特殊スキル『他心通』で、いぶきの心を読み取っている。


 …………。


「……なるほど。アンタも大変だね。行けたら行くよ。直行と一緒にだけど」


「オナシャス!」


 いぶきはそれだけ言って、そそくさと去って行ってしまった。


 一瞬、俺の方を見て何か言いかけたような様子だったが……。キックボードの移動速度は速く、あっという間に姿は見えなくなってしまう。


「どうしたの彼? トシちゃんのお使いじゃないの?」


 商店街で品物を見ていた小夜子が心配そうに声をかけてきた。


 俺にはよく分からないので知里を見る。


「……うん。彼氏、厄介な事情があるようね……」


 知里は頬に手を当てながら表情を曇らせた。


 そして俺の耳元に顔を寄せ、声をひそめる。


「〝23時にグレン・メルトエヴァレンス通りのBAR〝.357〟でお待ちしています〟だってさ……」


 ◇ ◆ ◇


 何やらきな臭い雰囲気だが……。


 ともかく心機一転、爆買いだ。



 次回予告

 ※本編とは全く関係ありません。


「小夜子さん♪ 昭和のゲーセンは修羅の世界ですか?」


「そうねー。ケンカにカツアゲもあったけど、竹刀を持った生活指導の先生が巡回してたから、大事にはならなかったわ」


「それすでに大事ですけどね♪」


「俺が中学の頃は格ゲー全盛期で、ゲーセンは漢の戦場だった」


「あたしの時代はプリ〇ラが流行ってて、リア充爆発しろって思ってたわ」


「次回の更新は4月13日を予定しています♪ 『ゲームセンター今昔』お楽しみに♪」


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