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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
5章・我が世の春と、世界に立ち込める暗雲
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433話・人気者で行こう

挿絵(By みてみん)


「……助かるよ。知里さんがポリシーを曲げてヒナちゃんさんやトシヒコさんに会うって言ってくれて」


「気にしないで」


 今まで嫌っていた勇者自治区への同行を、知里が急に申し出たのはよほどの理由があるのだろう。


 彼女は他人の心が読める特殊能力『他心通(たしんつう)』の持ち主のため、俺がそう思っただけで、理由を話してくれた。


「……量産型魔王については、直行も他人事じゃないでしょう」


 まず知里が口に出したのは量産型魔王の件。


「ああ。あんなの俺たちにゃ手に負えないし……」


「あたしだってキツいよ。大人の正規兵に管理されて数で来られたらヤバい」


「知里さんでもキツイいのかよ。マズいな……」


「それに法王領に出たっていう謎の奇病。トシヒコはまだ何かを隠しているかも知れない」


「どうかな」


「あいつが隠してる情報は全部引き出しておかないとね」


 俺は知里と今後の方針について改めて話し合うことにした。


 ……そのとき。


「直行さーん♪ こっち、こっちの席ですわー♪」


「いいえ。直行さまは移動中、諸侯への書状に目を通し、返信の草案をまとめる予定です」


「直行サン、カニの缶詰オイシイヨ」


 バスの最後尾に陣取ったエルマが手招きをする。


 そういえばレモリーとは移動中に執務をする予定だった。


 魚面はカニカマっぽいすり身がお気に入りのようだ。


「すまないなエルマ。知里さんと話すことがある。いい子にしててくれ。レモリー、草案についてはざっくりとまとめておいてほしい。魚面はカニ缶、俺の分も食べちゃっていいよ」


 すでに自動車は動き出している。移動中に席を変えるのは危険だし……。 


「でさ、直行。クロノ王国はあたしの『他心通(たしんつう)』をコピーしたものも量産しててさ……」


「!! ……それって超やばくないか」


 戦後処理や停戦交渉でバタバタしていたので、敵軍の情報などはいま初めて聞いたような気がする。


「直行さん! いい子にしてろって、あたくしを子供扱いしないでください!」


「いいえ。直行さま。バルド・コッパイ公爵宛の書状では豚の件をどう報告しましょうか?」


「ソウだ直行サン、ヒナサンがくれた車椅子についテ……」


「直行。クロノの奴らもスキル結晶の量産化してるとなると大問題だよ」


 バスの四方八方から俺に質問が飛んできて収拾がつかない。


 聖徳太子は同時に10人の声を聴き分けたらしいが、俺は4人ですでにギブアップだ。


「頼りにされてるなあ直行君!」


「だよねー! タイプは違うけど、いい時のトシちゃんみたい」


 これに小夜子とミウラサキも加わるとさらに収拾がつかなくなる。


 普段の執務中はとりあえずギッドに話を投げて、優先順位をつけてもらっていたけど……。 


 今回ギッドは留守番だし。

 

 俺はしどろもどろになりながら、それぞれの話に付き合った。


 そんなこんなで数時間……。


 中欧湖に面した街道を、グルリと回る。


 諸侯の領都では、門番に書状を託した。


 あえて名乗らないが、異界の乗り物である自動車で乗りつける者など、そうはいない。


 基本的には、俺とエルマとお付きのレモリーと魚面であいさつ回りだ。


 英雄2人と指名手配犯の知里は変装してもらい、車で待機してもらった。


「この親書を領主さまにお渡し願いたい。ロンレア領の代表として、親睦を深めたいと思っています」


 ロンレア領主自らが、外交先の門前で書状を手渡しというのは前例がないだろう。


 領主の権威的に、恥をさらして回っているのかもしれない。


 しかし元々俺には悪評しかない。


 相手の諸侯だってまともに相手にはしにくいだろう。


 だからこうして、「親書を渡した」という既成事実を積み重ねていく。


 相手が読まなくてもいい。


 クロノ王国を牽制する。


「直行さん。車に乗ったり下りたりで手紙を届けるばかりで、郵便配達みたいですわね……」


「はい。この手の仕事ならばキャメルを使者に立てればよいとおもいますが」

 

 エルマはうんざりした様子だった。


「そうだな。面倒なことだけど、相手の諸侯がまったく信用ならないからな。下手に使者を送って人質にされないとも限らない」


「ああ、そういうことね。直行らしいお人好し外交」


 この世界は、俺たちの元いた世界ほど人道的ではない。


 使節として送ったキャメルは問答無用でいきなり人質に取られてしまった。


 それが軽くトラウマなので、最初の交渉は自らが出向くことにしている。


 幸い、ミウラサキと小夜子に加えて知里までいる当代きっての最強布陣。


 もはや最強暗殺者集団〝鵺〟は壊滅させてしまったし、手ぬるい刺客が来たところで簡単には手を出せないだろう。


 とはいえ街道沿いの4つの諸侯(その門番!)に手紙を渡すのは、思った以上に手間がかかった。


 時間もだいぶ遅れてしまって、すでに日も暮れている。

 

 勇者自治区に入ったころには、俺はへとへとに疲れ果てていた。





次回予告


※本編とは全く関係ありません


「あれ? 4月5日更新の予定が、1日間違えてしまったようだぞ」


「書いてなかったんじゃないですか?」


「最近どうも日付を間違えることが多いようですわね♪ しっかりしてもらいたいものですわ♪」


「次回の更新は4月8日を予定しています。『時空のねじれは年のせい?』お楽しみに」

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