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423話・歴史の表舞台へ

 キャメルが無事に帰ってきたことで、俺たちの完全勝利が達成された。


 ガルガ国王以下、クロノ側からの連絡はない。

 国境付近にも何らの動きはない。

 事実上の停戦状態といっていいだろう。

 ロンレア領は守りきった。


 田畑も荒らされず、住人に1人の怪我人も出さなかったことは幸いだった。

 ロンレア領がクロノ王国を撃退した報は、1週間ほどで周辺各国に広まったようだ。


「この件は〝ロンレア領の奇跡〟として語り継がれるでしょうね」


 ギッドの言う通り、奇跡に近い。

 〝奇跡〟だから二度目はない。

 

 なので、今度まともに攻め込まれたらただでは済まない。


 傍若無人な領土拡大政策である〝ガルガの親政〟に反対の立場をとる周辺諸侯と連携して、簡単に戦争できない状況をつくり出さないといけない。


 俺とレモリーはほぼ毎日、諸侯への書状を書き連ねている。


「直行さん♪当家の勝利を派手に宣伝しましょう♪」

「エルマよ。できるだけクロノ王国を刺激しない方がいいけど、戦って領地を守り切ったという事実は、埋もれさせるわけにはいかない」


 諸侯には「領地返納の知らせが来たら要注意」と記しておく。

 その場合、法王庁の加護を得るべきだとアドバイスもしておく。


 ジュントスを通じて法王庁の後ろ盾を得られたのは大きい。


 勇者トシヒコからは、あれ以来何の連絡もない。

 おそらくは正式な停戦まで静観している、といったところだろう。


 執政官ヒナ・メルトエヴァレンスからは手紙が届いた。

 いよいよスキル結晶の取り引きが始まろうとしていた。


 野菜や果物にまぎれて、段ボールに入ったスキル結晶を輸送する。

 鉄道の開通が遅れているために、潜水艦での密輸になる。


 この第1便には、積み荷の管理人も兼ねて俺が乗り込む。

 作業着と帽子を身に着けるのは学生時代の引っ越し屋のバイト以来だ。


「知里さんも来てくれるとありがたいんだけど。帰りに美味いものでも食べてさ」

「遠慮しとく。〝歩くウソ発見器〟のあたしが同行したら、ヒナはともかく、トシヒコは絶対に警戒してると勘繰るはず」


 確かに心が読める知里を同行させたとなると、俺が未だに勇者自治区を疑っていると思われかねない。


「直行くん。わたしも一緒に行ってもいい?」


 そんな中、同行を申し出たのは小夜子だ。

 あずき色のジャージを着て、ふくらはぎのところまでジャージをめくる昭和の女子高生スタイルだ。


 彼女は領内の婦人たちと共に、1000人の女奴隷たちの面倒を見ていた。


「小夜子さんが一緒だと助かる。ヒナちゃんさんにも協力をお願いしやすくなるし」

「奴隷にされてた人たちの今後のことでしょ。わたしに任せて!」


 奴隷の中には、親元に帰りたい人もいるだろう。

身寄りのない人で、希望者には勇者自治区に移住してもらう。

 そのためにも、執政官ヒナ・メルトエヴァレンスの力添えは必要だ。


 ◇ ◆ ◇


 こうして、俺たちは潜水艦で勇者自治区へと向かった。

 中央湖を進んで丸一日ほどで、テーマパークのような港に着く。


 その一角の、科学研究所の秘密基地のような場所。

 水門をくぐった先で潜水艦は浮上する。


 この区画は外から見えないようになっていて、厳重な警戒がなされている。

 潜水艦はそのまま、レトロフューチャーな感じの港に接舷。

 俺たちはゴンドラのついたクレーンで上陸した。

 もちろん、スキル結晶を入れた段ボールはしっかりと両手で抱えたまま。


「おお、ヒナちゃんさん」

「ママも直行君も。おつかれさま」


挿絵(By みてみん)


 出迎えたのは、マリンルックを着こんだ執政官ヒナ・メルトエヴァレンス。

 そして着崩したダークスーツの細身の男。

 頭を飾る場違いなサークレットは、彼が何者かを物語っていた。


 ……。


「勇者……トシヒコさん」

「よォ色男。とうとう会えたな」 


 この世界の命運を握る最重要人物。

 俺は緊張しながら握手を交わした。


「トシちゃん、久しぶり」

「よォ小夜ちゃん、会いたかったぜ。積もる話もある。俺のヤサでブツの検分をさせてもらおう」


 俺たちは世界を変革させている当時者2人に直々に案内され、彼らのアジトへと足を運ぶ。

 この港の地下にある、極秘の研究施設だった。


 幾重にも魔法で封印されたゲートや隠し扉を超えて、俺たちは施設へと案内された。


次回予告


※本編とは全く関係ありません。


「ところで、きょうは3月9日でしたわね♪」

「『3月9日』といえばレミオロメンの曲だよな」

「もちろん知ってますわ。幼稚園のとき卒園ソングで歌いましたもの♪」

「は? 幼稚園?」

「前世ですわ♪ 小学生のお子様もけっこうカラオケで歌っていましたわ♪」

「っていうか元は結婚式の歌だったのに、卒業ソングなんだな」

「07年には『定番の卒業ソング』ランキングで1位だって」

「3月といえば卒業ですからね♪ 知里さんは小卒でしたっけ?」

「まあね。中2でこっちに召喚されたから……」

「小卒なんて、田中角栄みたいね!」

「お小夜、昭和時代の総理大臣と一緒にしないで」

「次回の更新は3月12日を予定しています。『涙涙の卒業式☆お礼参りと知里の逆襲』お楽しみに」

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