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409話・上座に座った従者

 新入りの従者は、ただものではない。

 ジュントスの反応から、それはよく理解できる。

 知里までも緊張しているのは予想外だが、俺も心して対応しよう。


「さて、どうしたものかな……」


 俺は独り言のように呟きながら、知里の意見を伺った。

 スキル『逆流』を発動させつつ、彼女の手を取り、テレパシーによる会話を試みる。


(知里さん。あの従者って……ただ者じゃないようだけど)

(まあね)

(例の話、しちゃって大丈夫だと思うか?)

(……う~ん)


 俺の問いかけに、知里は少し考えたように間を置いた。


「ジュントス様と話しにくいようなら、私は席を外しますけど」

「……じゅっ、従者さま! ととと、とんでもございませんっ!」


 従者、ジュントスの両者は、緊張感に包まれていた。

 まさに主従逆転というか、従者に対して平身低頭な様子で顔をこわばらせるジュントス。


「オイ従者、イケメンだからってあまり偉そうにするなよ」


挿絵(By みてみん)


 ドンゴボルトは、従者に対してやたら横柄なことを言っているし……。

 ここは、俺がこの場をリードしないといけない場面だ。


「……従者どの。ここはジュントス殿との大事な話なので、そうしていただけると助かります」


 俺がそう告げると、従者は静かに笑って部屋を出ていこうとする。

 それにしても、優雅な身のこなしだ。


「お、お待ちくだされ。従者どの。拙僧は、何らやましいところはございませんが、後ろめたいことがございます!」


「……? 〝やましい〟と〝後ろめたい〟は同じ意味では?」


「いえ、はい。そうなんですけど! ……ええい、この際だ腹をくくります。従者どのもドンゴも同席を願います!」


 半ば自棄になったジュントスが従者を引き留めて、奇妙な会談が開かれる運びとなった。

 

 執務室の椅子に座るのは、件の従者。

 嫌がる従者を、ジュントスが無理無理座らせた。


 応接セットには、俺たちが円卓を囲む。

 ジュントスは緊張して震えているし、知里もどこかぎこちない雰囲気だ。

 ドンゴボルトは、納得のいかない様子だ。


「どうして新入りの従者ごときが、ジュントス様のお席に座るんですか?」

「……あわわわ、いいから! ドンゴボルト君はこちらに」

「…………」

 

 妙に重苦しい空気ではあるが、話を切り出さないと始まらない。

 俺は、ロンレア領で起こった侵略事件に関する経緯をざっくりと説明する。


「……と、いうわけでわがロンレア領は侵攻され、防戦の末にどうにか領土は守り切ったのですが……」


 もちろん、スキル結晶だの勇者自治区に世話になった話には一切触れない。


「……ロンレア領周辺がきな臭いのは存じておりましたが……」


「俺たちロンレアも、突然の、あまりな仕打ちに後手後手でして……」


 あくまでも、ガルガの親政と領地の没収案件で話を進める。

 使者キャメルを立てて交渉しようとしたら、問答無用で軍勢を向けられ、攻め入られたこととか……。


 先に手を出したのは、クロノ王国だという証拠があること。

 勇者自治区が飛ばしたドローンについては触れなかったけど……。


「……俺たちはあくまで自衛のための応戦でしたが、敵将は思いもしない人物だったのです」


 奇襲によって大将の七福人スーパーマハーカーラを捕らえて尋問したら、まさかのジュントス・ミヒャエラ・バルド・コッパイだったということ。


「えーっ! ジュントス様の偽物ォ?」


 ドンゴボルトが思わず叫び声を上げた。


「……敵将本人が名乗ったわけじゃないけど、知里さんのスキル『他心通(たしんつう)』によって心を読んだらそういうことで……」


「嘘は言ってない。冒険者の誇りにかけて誓うわ」


 俺たちの証言に、皆の反応は様々だった。

 その真意が分からず、ジュントスの顔を見るドンゴボルト。

 その当人は、まさかといった感じでギョッとしている。


 上座に座った従者は冷静に聞いていた。


「〝冒険者の誇りにかけて〟……か。信じましょう」

「ありがとう。〝従者〟さま」


 知里と従者。

 聖龍教会の聖職者見習いとS級冒険者で指名手配犯とは何の接点もなさそうだけど、2人の間には独特の空気が流れていた。


「さて。単純な疑問ですが、なぜクロノ王国七福人が、ジュントス様の名前を心に秘めていたのか。気になるところですが、いかがですか」

 

 美男の従者はジュントスに尋ねた。

 責めている風はない。単純に気になるようで、紫色の瞳を輝かせて身を乗り出している。

 こうしてみると、年相応の少年のようだ。


「ふう……」


 ジュントスは大きくため息をついて。語り始めた。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


「小夜子さん、明日は節分ですわね♪」

「鬼は外~! 福は内~!」

「豆まきをしたら、年の数だけお豆を食べるんですわよね♪ あたくしは13個。小夜子さんは45個くらいですか?」

「どうしてそんなに多いのよ! 17+5個くらいよ!」

「あたくしの時代では、昭和生まれの小夜子さんは50歳近い年齢ですからね♪ たくさん食べられて、羨ましいですわ~♪」

「次回の更新は2月4日を予定しています。『節分後の鬼の行方』お楽しみに!」

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