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408話・再会! 破戒僧ジュントス&美少年ドンゴボルト

 破戒僧ジュントスに案内されたのは、豪華な執務室だった。


「直行どの、どうぞこちらへ。景気づけにワインでもいかがですかな。ウシシシ」

「せっかくなので、大亀鍋でもつつきながら話しましょうよー」


 ニンマリ顔のジュントスと調子のいい美少年ドンゴボルト。

 偉くなっても、この2人はまるで変わっていなかった。


 部屋には従者を務める聖職者がいて、俺たちに恭しく頭を下げた。


「いや、そうしたいのは山々なんだけど」

「直行。ワインくらいならいただいてもいいんじゃない? 酔いなら浄化魔法で覚ませばいいし」


 法王庁産のワインに目のない知里が、ちゃっかり言い出した。


 しかし彼の現在の肩書がどんなものかは知らないけど、立派な事務机と椅子だ。

 そして中央にはクラシカルな応接セットが並んでいる。

 驚いたのが、執務室なのにワインセラーが置いてあることだ。


「特産品である〝血の教皇選出〟は先日飲んでしまいましたが、準じる逸品でよければ手配しましょう」

「しかしジュンちゃん出世したよねー」

「ウシシシ。これも聖龍さまと法王猊下の御威光の賜物ですな」

「そんじゃ遠慮なくワインをいただくわね」


 知里はそう言って、勧められるままに応接椅子に腰かけた。

 心なしか、知里は以前と比べて法王庁に対して気安い印象を受ける。

 一方、護衛を務めるリーザは仏頂面で入り口に立ち、俺と知里を睨みつけている。


「リーザ殿もいかがですか? 過去の諍いをワインに流して、仲良くしましょう。ウシシシ」

「結構です。私は屋敷の警備を務めます。他にも賊がいないとも限りません」

 ……()()()って、俺と知里を賊と呼んだのか。


「リーザ殿。ジュントス様の客人に対して無礼ですよ」


 ドンゴボルトがリーザに注意するが、俺はまだ若い聖騎士をたしなめた。


「俺は気にしてませんよ。リーザ殿とはガチで命のやり取りをした間柄です。わだかまりをなくせという方に無理があります。なあ知里さん」

「まあね」

「フン……」


 リーザを入り口に残したまま、俺たちは執務室での酒宴の準備に取り掛かった。

 従者たちが簡単な料理を持ってきてくれるという。


 テキパキと動く従者たちが部屋から出て行ったタイミングで、俺は声をひそめて言った。


「……従者の方々には申し訳ないんだけど、人払いを頼めるか?」


 これから話すことは、ジュントス個人の最重要機密だ。

 この件に関してはドンゴボルトさえ信頼していいものかどうか分からない。


 そんな中、知里は俺の手を取り、『他心通』の『逆流』で直接、ジュントスの頭の中だけに語り掛けた。


(バルド・コッパイの()()()()()についてなんだけど……)


「!!」


 ジュントスは驚き、言葉を詰まらせた。

 ワイングラスを持つ手がみるみる震えてきた。


「ジュントス様?」

「……ド、ドンゴボルト君。君を信頼しないわけではないが、少し外してくれないかね? すまない。実家のことで、少々問題があったらしい……」

「実家……と申しますと、バルド・コッパイ公爵家ですか?」


 ドンゴボルトは心配そうにジュントスを見つめている。

 ……彼のあの言い方では、かえってドンゴボルトの興味を引いてしまったのも仕方がない。


「還俗とか、法王猊下に対する翻意とか、そういう心は一切ないと断言できる。これはその……」


 しどろもどろになりながら取り繕うジュントス。

 

 俺も、切り出すのが早急すぎたのかもしれない……。

 そう思った矢先、知里が飛び出してきてジュントスの口を手でふさいだ。


「ジュンちゃん、その先は言わなくていい。〝呪い〟をかけられてるのね」


 呪いは俺にも心当たりがある。

 秘密を口にすると、身体が爆発する例の呪い。

 ジュントスもアレをかけられていたのか──。


「え? ボクが呪いの解除をしますよ!」


 ドンゴボルトも慌ててジュントスに歩み寄る。

 解呪の魔法の詠唱をしながら、手をかざす。


「ドンゴボルト様。それには及びません。ここは私が……」


 その時、突然どこからか現れた従者の一人が割って入り、有無を言わさずにジュントスに触れる。


「! ……あなたは!」

「ふごごご……」

「あれ? 見慣れない従者さんですけど、新入りさんかな?」


 ジュントスの口をふさぐ知里。

 突然現れたかと思うと、その間に割って入り、後頭部を人差し指でつついた謎の従者。


「ああ新入り、キミ美男だね。手伝ってくれるのはありがたい。でも一応、現場はボクらに従ってもらうから!」


 偉そうに場を仕切るドンゴボルトに、なぜか青ざめるジュントス。


 傍から見ると腹の出たカッパヘアーの男が、美男美女3人によってたかって手をかざされている様相は、どう見ても不自然だ。


「大いなる聖龍の名において。呪いを払いたまえ」


 従者は指先に力を込めると、まばゆい光が放たれる。

 ちょうどそれは、ジュントスの剃り上げた頭頂部から昇る朝日のようで、俺は噴き出しそうになってしまった。 


挿絵(By みてみん)


「ちょっ、日の出言うなwww」


 知里もつられて噴き出しそうになるものの、すぐに我に返って件の従者を見る。

 ジュントスも知里も、新入りだという美男の若い従者に釘付けだ。


「……呪いは解きましたよ。ジュントス様」

「はあ。しかし……いや」


 美男従者に気圧されるように、ジュントスは後ずさりする。


「新入りの従者が、差し出がましいことをしてしまいました」


 新入りだという美男の従者は、白々しく言った。

 場の空気がおかしくなる。


 ドンゴボルトは気づかないようだが……。

 この従者がただものではないことは、俺にも理解できた。


 おそらくは枢機卿か……。

 あるいはもっと上の……。



 次回予告

 ※本編には全く関係ありません。


「皆さまごきげんよう♪ 主人公のエルマですわ♪」

「エルマちゃんお留守番えらいわねー」 

「小夜子さん、夫の帰りを待つ貞淑な妻を子ども扱いしないでくださいませね♪」

「直行くんがパパなら、知里は娘かな。何だか微笑ましいわねー」

「ままごとじゃありませんわ♪」

「次回の更新は2月2日を予定しているわ!『エルマと小夜子の虎柄ビキニでダーリンを悩殺だっちゃ』」

「……小夜子さんのダーリンって、トシヒコさんですか?」

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