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398話・異形との対面


 小夜子の作戦は無謀以外何者でもない。


 自転車に2人乗りした状態で、空中に吊られている俺たちはミサイルのように特攻する。

 俺たちを掴んでいるグリフォンが急加速、急降下して敵将に投げつけるのだ。


「無茶だ」

「昭和の女の底力、見せてあげるわど根性!」

「小夜子さん俺、昭和とか、かすってないし……」

「昭和の女のど根性! 魚ちゃんもど根性!」

「イくヨ!」


 小夜子(昭和生まれ昭和育ち)のメチャクチャな根性論に引っ張られて、純白のグリフォンは加速する。

 

「どりゃあああーー!!」


 小夜子の号令一番、グリフォンは急降下しながら、両脚を器用にスイングして俺たちを放つ。


「うおおおおおおーー!!!!」

「キーーーーーーーン!!!!」


 超高速ミサイルと化す2人乗りの自転車。

 地上に激突したら間違いなく木っ端みじんになるような勢いだ。

 小夜子のスキル『乙女の恥じらい』の障壁だけが頼りの無茶過ぎる奇襲。


「おんどりゃあああ!」


 ビキニアーマーで勇ましい掛け声を上げる彼女は、どう考えても頭がおかしい。


 魔王を倒しただけのことはある……というか、こういうイカレっぷりだから偉業を達成できたのか。


 信じられないことに、小夜子は闘気とバリアを上手く使って、自転車をキレイに着地させる。

 そしてそのまま、立ち漕ぎで敵の本陣を抜いた。


 あまりの速度に俺は後れを取ってしまって、吹き矢を構えることさえできなかった。

 しかし、見た。


 簾のついた輿がめくれ上がり、そこに乗っていた大将……。

 七福人スーパーマハーカーラの姿を見た。


「んな……」

「んげ……」


 俺と小夜子は顔を見合わせて言葉を失った。


 それは、魔物のような異形の姿であった。

 大きな頭は胴体と直接つながっていて、首に当たる細い部分はない。

 額が大きく突き出していて、鼻や耳たぶに当たる部分はない。


挿絵(By みてみん)


 だが、俺はその姿の元ネタ的な情報を知っていた。


 “人間が自動車事故に耐えられるように、体が進化したらどうなるか”をシミュレーションした研究があった。そこで想像されたCGが、敵将のような姿をしていた。

 あまりにグロテスクなのでネット上で話題になった。


 俺もちゃっかり便乗してブログ記事を書いているので、印象に残っているのだ。


「……直行くん。敵の大将は魔物なの?」

「いや。たぶん〝人間〟だ……」


 まるでヘルメットを装着しているような肥大した頭部。

 たしか頭蓋骨と脳の間は空洞を挟んだ二重構造になっていて、エアバッグのように衝撃を吸収する仕組みだ。

 内臓を守る器官も、二重構造になっていて、気泡がクッションになって損傷を防ぐ仕組みだ。


 俺は、吹き矢を持ったまま、攻めあぐねてしまう。

 厄介な相手だ。

 あんな皮膚構造をしていたら、麻酔薬が効かないかもしれない。


「……グププッ! いい女だな」


 七福人マハーカーラは、小夜子になめるような視線を投げかけている

 俺なんかは眼中にないようで、ビキニアーマー姿の胸元や腰回りをマジマジと見つめ、何度も舌なめずりを繰り返す。


「この人、エッチな人なんだ……」


 小夜子は視線に反応してピンク色のバリアを生じさせる。


「男と女は引き離せ。女は犯す」 

「…………!!」


 曇った声だったが、確かに聞こえた。

 周りを取り囲んだ親衛隊が、一斉に襲い掛かってくる。


 俺は、小夜子の腰にしがみついた。


「この人たち……何か怖い」


 小夜子は一旦、後退しながら距離を取る。

 親衛隊は顔を兜で覆っている上に、いっさいの言葉を発しない。


 手に持っているのは、投打用の金属棍棒だ。


 重装備なので動きは遅いが、何のためらいもなく俺を小夜子から引き離そうと自転車の後部を集中的に攻撃する。


 何のためらいもなく殺す気で殴ってくる相手に、俺は身の毛もよだつ思いだ。

 攻撃は小夜子のバリアによって弾き返され、親衛隊はその場に倒れ込む。


「男を殺せ。女はなぶりものにする! 死んでもやれ! そうしろ!」


 輿の上に立ったマハーカーラは、檄を飛ばす。

 それに呼応するように、文字通り死に物狂いの特攻をみせる。


 弾き返され、舞う血煙。

 悲鳴も上げずに倒れ込んだ兵の中には、ぐったりとして動かない者もいる。


「どうする? 直行くん」


 俺たちは自転車でグルグルと回りながら、攻めあぐねていた。

 麻酔薬を瓶ごと投げつける手もあるが、2つしか予備がない上に避けられたらマズい。


「あの皮膚じゃあ吹き矢が通るとは思えない……」

「そうね。わたしが手で刺してこようか。ブスッと!」


 それも一つの手としてはアリだけど……。

 小夜子に攻撃役を任せるわけにはいかない。

 エルマのことだ。麻酔薬と見せかけて毒薬ということも考えられる。


 小夜子に人殺しをさせるなと、勇者トシヒコ自らに厳命されている俺としては、リスクは冒せない。


「狙うとしたら口の中だな。小夜子さん、俺に秘策がある──」


 俺は、自転車の後ろから小夜子に囁いた。


 次回予告

 ※本編とは全く関係ありません。


「皆さま、あけましておめでとうございます♪」

「これを書いているときは、2022年の1月2日だな、エルマよ」

「それにしても直行さん、新年早々キモい挿絵ですわねー♪ キンモ―♪」

「そうだな。もうちょっと何とかならなかったか」

「次回はあたくしのドレス姿なんていかがでしょう♪」

「顔芸じゃないといいけどな」

「ともかく、本年もよろしくお願いしますわー♪」

「次回の更新は1月5日を予定しています」

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