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391話・魚面の強行偵察


 知里が不覚にも仇敵ソロモンを取り逃がしてしまった頃──。


挿絵(By みてみん)


 魚面を乗せた純白のグリフォンが、大空を舞っていた。

 その神々しい姿は、どうしても目立ってしまう。


(エルマ嬢カラ〝光学迷彩〟の布を借りテくればよかった……)


 だが、今さら引き返すわけにもいかない。


「痛テテテ……」


 まだ足が万全ではないので、下半身はベルトで固定してある。

 そして車椅子に取り付けられていた魔法式の機関銃は、グリフォンの両肩に固定。


(敵軍は空間転移シながラ行軍しているト聞いタが……)


 なるべく高度を取りながら、クロノ王国地上軍を捜す。


(集団戦カ……。ピンと来ないナ)


 暗殺者集団〝鵺〟にいた魚面うおづらは、単独行動には慣れていたが大規模な軍事作戦には参加したことがない。


 先代の猿の時代は傭兵のようなことを行っていたようだが、当代になってからは要人暗殺が主な任務だった。


(ヒナサンからもラったグリフォンと機関銃なラ、敵軍を壊滅できソウなものだケド……)


 魚面は13歳の時に顔を奪われて以来、独特の話し方になってしまった。

 錬金術師アンナ・ハイムによる人体錬成で顔の復元はできたものの、話し方の癖は治らなかった。


 ただ、それでも、後ろ暗い暗殺者集団から足を洗って生きられることは何よりも嬉しかった。


(……もウ人は殺さなくてイイと思ったケド、結局殺すのダな……)


 魚面は、逃れても逃れても人殺しがついて回る境遇に、思わず苦笑する。


(チガウ。守るタメに戦う……)


 そう、今までの殺すための戦いではない。

 直行からは、くれぐれも無理をするなと念を押されている。


 彼は恩人であり、仲間だと言ってくれた。


 しかし魚面にとっては、ほとんど主君のようなものであり、彼のためならば命など少しも惜しくはなかった。

 直行に対して恋愛感情はなかったが、救ってもらった恩義を誰よりも感じている。


「敵の数は数千……」


 魚面の視力は人並みなため、召喚獣グリフォンと視界を共有する。

 通信機を手に取り、直行に連絡を取ろうとしたところ、


「敵襲ー!! 上空にグリフォン接近中」


 あっけなく気づかれてしまった。

 襲撃を知らせるけたたましい笛が鳴り響き、敵は行軍を止める。


 銅鑼が鳴ると、黒いローブを着た魔導士部隊が光弾魔法を放ってきた。

 やや、統制の取れていない散漫な攻撃だった。


「こんなノ喰らウかッ!」


 魚面は旋回しつつ、2枚の魔法盾を張る。

 魔法盾の2枚同時展開は、耐久力こそ劣るものの、前後をカバーできる。

 左右からの攻撃は回避する。

 単純だが、効率のいい対魔法戦術だった。


 この戦い方は、ヒナと知里に教えてもらったものだ。


(さすがは魔王討伐軍の戦術ダ)


 そうしておいて、今度は高度を高くとる。

 敵戦力の攻撃範囲を確認するためと、直行に連絡するためだ。


「直行サン! ゴメン! 敵に気づかれた! 敵の攻撃範囲、ムッチャ広い……」


 そう言いかけた矢先――。

 上空に撃ち込まれた光弾が、魔法盾を打ち破った。


 それは魔導士からのものではなく、木組みの自走砲のような車両から放たれたものだ。


「了解。そちらの状況を、もう少し詳しく頼む。敵の大将はどこにいる?」


 グリフォンを駆る魚面は、態勢を整えながら、敵将の位置を把握するために再びグリフォンと視界を共有した。


「敵の先陣の上空にイル。魔導部隊の光弾ハ、大しタことナイけど、射程の長い魔導砲がアル。大将は……」


 戦争の経験のない彼女ではあったが、暗殺稼業の対象は貴族や騎士階級が主な対象だった。


 何となく……ではあるが、派手で偉そうな者が指揮官で、最深部で派手な旗の下にふんぞり返ってるのが大将首だろう。


(大将旗……ドレだ?)


 鷲の目を持つグリフォンは、はるか遠くを見渡せる。


 上空からだと灰色の絨毯のように見える、雑兵の中心地に陣取ったカラフルな衣装の一群が、おそらく指揮官の隊列だ。


 そうした隊列の奥に、とりわけ目立つ旗がそびえている。


 親政クロノ王国・七福人を表わす7つの星がデザインされたシンボルマーク。

 魚面は初めて見たものだが、直行から聞いていた情報と合致する。


 それと並んで、黒字に金色の打ち出の小鎚が描かれた旗が立っている。


「直行サン、大将イタよ七福人。七つ星のマークの旗と、黄金のハンマーの旗だ」

「……黄金のハンマー。……打ち出の小づち。……大黒のやつか?」

「大黒? ワカラナイ。敵の大将は輿(こし)に乗っテル」

「輿……か」


 通話は継続中だが、沈黙が続いた。

 直行はしばらく何かを考えている様子だ。


 一方、下方からは執拗な魔法攻撃が続いている。

 しかし高度を上げたグリフォンには届かない。

 

「直行サン。敵の対空攻撃ハ、魔導砲ダケ。射程と威力は強いケド、連射はデキないっポイ」

「魚面、作戦変更しても大丈夫か。その魔導砲を叩いて、敵を撹乱してほしい」

「殲滅もデキるヨ?」

「禍根が残るから、敵にあまり損害を出したくない。俺が出張って大将を取る」


 通信機越しの直行は、どこに根拠があるのか自信ありそうだ。

 次回予告


「ごきげんよう皆さま♪ いつもあたくしの活躍をごらんいただき、ありがとうございますわ♪ 次回の更新は12月21日を予定しています♪ 19:00の予約投稿になります♪」

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