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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
〝鵺〟との戦い・見世物小屋の死闘
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365話・簡単な戦後処理

挿絵(By みてみん)


 暗殺者集団・(ぬえ)の頭目と副官、〝猿〟と〝虎〟を捕らえた。


 逃げられたり、暴れられたりしたら厄介きわまりない。

 〝猿〟は知里とヒナが魔法を封じて地下の拷問室の檻に閉じ込めておいた。

 〝虎〟も同様に魔法を封じて閉じ込めた。

 

 さらに脱走できないように知里による〝制約〟の術もかけた。

 

「さて、この虎さんとお猿さん。直行君はどう処するつもり?」


 ヒナがお手並み拝見といった感じで聞いてきた。


「まずは尋問して背後関係を調べたいところだけど……」

「話してくれたら蛇さんみたいに逃がすの?」

「まさか……。でも、死刑ってのも重いし。懲役刑ってのも面倒見なけりゃならないだろうしなあ……」


 俺とヒナは同時に顔を曇らせた。


「ヒナちゃんさんの自治区では、裁判制度とか罪人の管理とかどうなってんの?」

「治安維持に関しては警察的な組織はあるけど……ウチは皆いい人たちばかりだから」

 

 勇者自治区は人口7000人くらいだという。

 ほとんど揉めごとはないのか……。

 にわかには信じられないが……。 


「その話が本当なら、理想郷かもね」

「治安維持に関しては、トシヒコの管轄なんだ。彼、政治には興味がないけど」


 勇者トシヒコについて、俺はすれ違っただけで、詳細な人となりは知らない。

 ただ、伝え聞く話の内容からすれば、抜け目のない男なのは間違いないだろう。


「直行。よそはよそ。ウチはウチだよ。猿と虎から、聞ける情報は聞いとかないと」 

「お、おう……。尋問ではまた知里さんに負担をかけてしまうけれど、お願いします」

「あたしも鵺とクロノ王国との関連は気になるんだ……」


 ◇ ◆ ◇


 ──こうして、知里を伴って猿と虎への尋問が始まった。

 特殊スキル『他心通』は、人の思考を読むことができる。

 相手が何も話さなくても、こちらが勝手に質問すれば、ある程度の情報は得られる。


「…………」


 しかし、必殺の『他心通』尋問でも、背後関係はディンドラッド商会までだ。 

 猿自体の思考は、俺たちの隙を伺い、逃げることに特化しているという。


「まあ、さすがは暗殺者集団の頭目といったところね」


 そう言って、知里は感心していた。


「面白いのは虎さんね。お小夜のことが気に入ったみたい。体目当てのいやらしい男だから、色仕掛けで落ちるかもね」

「それは面白そうですわ♪ 小夜子さんにもう一肌脱いでもらいましょう♪」


 エルマもこの案に乗り気だが、当然ヒナはお冠だ。 


「冗談でもそんなこと言わないで。ママにそういうことさせるのは、ヒナが許さないから!」

「……てへへ。ヒナちゃんがそういうわけなので、色仕掛けの件はなしで」


 小夜子はヒナに合わせて苦笑いするが、まんざらでもなさそうだった。 


「仕方がないですわね♪ あたくしが拷問いたしましょうか♪」 

「エルマお前なあ……」

「相手はプロの殺し屋だからね。お嬢が拷問したって、口は割らないでしょうよ」


 拷問したがっていたエルマの奴を、ドン引きしながら知里がたしなめた。


 ◇ ◆ ◇


 散々な回転寿司パーティだったが、こちらの被害状況も振り返ってみよう。

 わがロンレア陣営は、レモリーと魚面が負傷。

 戦士ボンゴロと盗賊スライシャーも重傷を負ったが、いずれも回復した。


 勇者自治区からの出向組は全員無事だ。


 敵味方ともに死傷者が出なかったことは、すばらしい戦果といえるだろう。


 大広間の宴会場は、農業ギルドのクバラさんたちがきれいに片づけてくれたようだ。

 食べ残してしまった料理などは、浄化魔法をかけて各自持ち帰ったという。

 スタッフがおいしくいただきました、というやつだ。


 不幸中の幸いというか、アンナの研究室には全く被害はなかった。


 段ボール工場のシャッターが若干傷つけられた程度で済んだ。 

 スキル結晶の密造を知られたわけでもなさそうだ。

 この件に関しては、猿たちへの尋問も慎重にやらないと。

 逆に気づかれても厄介だ。


「とんだことになってしまって申し訳ない。でも、みんな無事でよかった」

「これがロンレアの威光ですわ♪」

  

 大広間の片づけを終えて、俺とエルマはお客さんたちに礼を言って、宴席は解散した。


 ◇ ◆ ◇


 その場には身内だけが残った。

 レモリーや魚面といったロンレア領の関係者、小夜子とヒナの親子、ミウラサキといった英雄組。

 そして、知里。


「知里さんや英雄たちの協力によるところが大きい。助かったよ」 

「安心するのは早いよ直行。明日も猿の背後関係を調べたり、敵の次の一手に備えないと」


 ワイングラスを傾けながらも、知里の目は酔ってはいなかった。


「そうだな。今回の共闘で、勇者自治区の英雄たちが手を貸してる事実が知られないといいけど……」


 俺が怖れているのはそれだ。

 この一戦がキッカケとなり、勇者自治区とクロノ王国の関係が悪化すること。

 法王庁も参戦するような異世界人対現地人の抗争だけは避けないといけない。


「まあ、仮に背後にクロノ王国がいたとしても、鵺っていうのは公には属さない暗殺者集団。正規軍を打ち破ったわけではないから、国際問題にはならないとヒナは思うよ」


 ヒナはそう言うけれど、俺としては楽観視はしたくない。


「四の五の言ってもしょうがないよ。ボールはクロノ王国に行っている」


 知里はそう言うけど、俺としては気がかりだ。

 使者に出したキャメルから何の音沙汰もないからだ。


「とりあえず、今後のところは皆、休もうよ。わたしもお風呂に入って寝る」

「ヒナも入る。露天風呂の温泉なんて最高じゃない?」

「知里もどう?」

「……あたしはもう少し酔いを醒ましたら入るよ」


 ◇ ◆ ◇


 こうして、最低限のやるべきことを終えた後は、各自風呂に入って休むことにした。




次回予告


「エルマお前なに書いてるんだ。脅迫状か?」

「し、失礼な! 謝罪文ですわ♪」

「お前のような奴が誰に謝るんだよ?」

「毎回ウソ予告をしていることを、読者様にお詫び申し上げますのよ♪」

「ちょっ……待てよ。署名のところに俺の名前しかないじゃないか!」

「細かいことは気にしたらダメですわよ♪ はい次回予告」

「〝直行です。いつもウソの次回予告スミマセン。次回の更新は10月30日を予定しています。ハロウィン前夜ですので、ロンレア仮装大会を開きます〟って何だよ。またウソばっかりじゃないか」


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