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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
〝鵺〟との戦い・見世物小屋の死闘
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362話・知里が読む〝猿の世界〟

 ※以下は知里の一人称でお送りいたします。


挿絵(By みてみん)


「いっけぇぇーー!!」

「スマーーッシュ!!」

「トゥッ! 時間よ! もっともっと遅くなれー!」


 あたしはヒナと共に、〝(ぬえ)〟の自爆を防いでいた。 

 禁呪〝死の呪い〟は、対象の命を強力な爆弾のようなものに変える。

 召喚士は魔物を呼び出して契約する際に、逆らわないように〝制約〟を課す。


 カレムは鵺の時間の流れを極限まで遅くして、自爆を先延ばしにする。


 〝猿〟がやっているのは、対象に〝制約〟を強制する魔法の上位互換である〝死の呪い〟だ。

 この魔法効果を一言で言うなら、〝言うことをきかないと即死〟だ。

 もちろん禁呪だ。


 さらに厄介なことに、この呪いは周辺の命をも巻き込む。


「ちーちゃん、このままだと屋敷にも被害が出ちゃう」

「ヒナ。あたしが闇魔法で〝死の呪い〟を相殺する。あんたはそのまま化け物の体を吹き飛ばしちゃって! カレムは状況を維持して!」

「了解!」



 幻獣〝鵺〟の命の輝きを、呪いに変えて、直行たち屋敷の住人ごと吹き飛ばす。

 〝猿〟にとっても、この手は最終手段だ。

 奴の心を読んだ限りでは、「これだけは使いたくなかった」というような思いを抱いていた。

 猿は鵺に未練タラタラだった。


 あたしがスキル『他心通』で得たところによれば──。


 転生者だったという初代の〝猿〟が、元の世界から呼び出したというのが日本の妖怪〝鵺〟だ。

 〝猿〟にとって文字通り暗殺者集団〝鵺〟のシンボル。

 それを失うのは痛手だが、やむを得ないという判断らしい。


 〝猿〟がそう決断したのは任務のためじゃなかった。

 「〝化け物じみた強敵〟との命のやり取り」に対する「猿の意地」だった。


 ヒナはともかく、あたしまで強敵と評してもらえたのはまぁ嬉しいかな。

 だけど……。


「マズい! 〝猿〟本体は魚ちゃんを囮に罠を仕掛けるつもりだ!」


 悠長に敵の思考を読んだ感想なんて語ってる場合じゃなかった。


 レモリー・魚ちゃんコンビと対戦していた〝猿〟の本体が、強力な呪殺系の術式を頭に思い浮かべている。

 〝死の呪い〟と制約が、魚ちゃんに迫っていた。


 猿との距離は数百メートル。

 反射魔法の射程外だ。

 呪殺系魔法の詠唱時間が5秒だとすると、闇の翼で飛んでいけばギリギリか。

 あたしはヒナにアイコンタクトを送った。

 しかし……。


「OK知里! ヒナがやる。ちょっとココお願い! 戦線維持してて」

「ちょっ……!」


 ヒナのやつ、あたしが飛ぶより速いと判断したんだ。

 魔方陣を呼び出して、空間転移による瞬間移動を試みた。

 猿の頭上に2つ目の魔方陣が現れたと思うと、ヒナは一瞬のうちに数百メートルを移動している。

 実戦から遠ざかってたみたいだけど、さすがというべきか判断が早い。

 

 それにヒナは回復魔法も使える。

 レモリーはケガをしているようだから、彼女が行くのが最適解だろう。

 ま、戦術面で甘さが残るのが玉に瑕だけどね。


「仕方ない。あんたの相手はこのあたしね。ほんとに平安時代の京都から召喚されたのかどうか興味は尽きないけど、あたしは仲間を守らないといけないからさ……」


 その間、あたしはヒナの代わりに〝鵺〟と対峙する。

 どうやって日本の妖怪をこちらに召喚したのか気になるけれど、自爆の呪いが発動してしまっては、どうしようもない……。


 …………いや。

 あたしの頭に〝ひらめき電球〟が浮かんだ。


 イチかバチかだけど、やってみる価値はある。

 どうでもいい話だけど、〝アイデアを思いついた時に、頭の上に電球がひらめく〟シーンは1920年代の米国の白黒アニメが初出だ。

 とあるゲームで目にして、兄に聞いても教えてくれなかったので、ネットで調べた。


「さて。だけど、それをしようにも魚ちゃんは遠いし交戦中……」


 あたしは闇の魔力を放って、自爆の呪いにエネルギーを与えた。

 あえてそうすることで、爆発のタイミングを遅らせる。

 ついでに〝呪縛魔法〟で固定しておく。


「ちょっと失礼!」


 〝鵺〟をその場に放置し、蹴り破った窓ガラスのところから、もういちど大広間に飛び込んだ。


「知里さん?」

「お嬢、直行、玉将駒を使わせてもらうよ」


 あたしは手短に叫ぶと、エルマお嬢と直行の手を取って、再度屋根の上に飛び出した。

 直行の手が汗で湿っていて少し気持ち悪いけど、まあ気にしない。


「手短に言う。いちど自爆攻撃を試みて失敗した鵺は弱ってる。そこで召喚士のお嬢が、新たに契約を結ぶ。そしたらあたしが〝鵺〟にかけられた呪いを相殺する〝新しい呪い〟をかける」

「お、おう!」


 ……直行は理解したようだが、エルマお嬢は戸惑っているようだ。


「足りない魔力と、術式の構成はあたしのスキル『精密動作+3』を、直行の『逆流(バックフロー)』で、お嬢をサポートする。()()()()()?」

「……当然ですわ♪」 


 エルマお嬢は理解したのか、〝鬼畜〟のふたつ名がよく似合う邪悪な笑みを浮かべた。


「いい表情だ。お嬢〝鵺〟ゲットしちゃいなよ」


 時間は限られている。

 やるべきことをやるだけだ。


 次回予告

 ※本編とは全く関係ありません。


「直行さん。今回の挿絵、作画ミスですわ♪」

「嬉しそうに言うなよエルマ」

「ヒナさんはスプラッシュ★ペリキュアに変装しているはずですわ♪ それに知里さんはキャットマスク♪ 全然本編と違いますわー♪」

「そうだな。超速特捜ゴー・レーサーに扮したミウラサキ君については、描かれてもいないし」

「作者に代わってお詫び申し上げますわー♪」

「ところで次回の更新だけど、大丈夫なのか?」

「次回は10月24日の更新を予定していますけど、大丈夫なんでしょうかね~♪」

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