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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
〝鵺〟との戦い・見世物小屋の死闘
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356話・三正面作戦

 ロンレア領の地下。

 水洗トイレを新設したので、現在は使われていない汚水槽跡。


挿絵(By みてみん)


「いいえ。……これは、幻覚?」


 土の精霊術で〝猿〟を捕えたはずのレモリーと魚面(うおづら)

 近づいてみると、その場に姿かたちはなく、()()()()()の汚水槽があるばかりだった。


 呆然とするレモリーと、冷静な魚面。

 車椅子を押して汚水槽に進んだ彼女は、土壁に刻まれた魔方陣を指さした。


「〝猿〟ノ幻影術の形跡があル。間違いなく奴はココにイタ」

「はい。ですが、今は姿をくらませたのでしょうか」

「迎撃してくる可能性が高イ。猿の呪いには用心シテ」


 レモリーはハッとして魚面を見た。

 呪殺系魔法では、相手の情報があればあるほど成功率が高まる。


「……そうなると〝(ぬえ)〟にいた貴女(あなた)は、敵に情報を知られ過ぎているのでは?」

「ワタシは仕方ナイヨ。……レモリーサン、猿は必ず呪殺の成功率の高いワタシから殺す。知里サンやアナタなら、呪いヲ逆探知デキルカラ、猿ヲ追っテ仕留めてホシイ……」

「いいえ。魚面さん。そんなことを言うのはやめてください」

「……ホラ、言っテるソバからキタ」

 

 その瞬間、魚面の顔が歪む。

 彼女に再度かけられた〝呪い〟が発動し、身体が膨張していく。

 それは直行が自らと融合することで防いだ呪殺の呪いだ。


「あアア……ア」

「魚面さん!」


 突然やって来た、死。

 苦悶にのたうち回る魚面だが、悔いはなかった。

 猿が幻術攻撃をやめたとき、真っ先に狙われるだろうとは思っていたからだ。

 一度目に死に損なったときから、覚悟はしていた。


 つかの間でも、確かに日の光の元で生きられた。

 それで、十分だった。


 …………。

 …………。


 しかし、魚面の肉体が破裂することはなかった。

 口の中から闇のオーラが〝猿の呪い〟を捕えて現れた。


「ウボぇっ! ウボぇーー!!」


 魚面が何度か嘔吐すると、体内の呪いは吐き出された。

 その後ろに立つ、小柄な影。


「魚ちゃん。〝もう死んでもいい〟なんて、悲しいことを簡単に思わないで。お願いだからさ……」


 知里は魚面の吐き出した〝猿の呪い〟の残留物を闇の炎で包んでいた。

 そして球状にしたそれを、左の手のひらの上に浮かべる。


「知里サン!」

「いいえ。知里さま……。これも……幻ですか?」

「あたしは現実だよ。レモリー(ねえ)さんは、いま土の精霊術であたしの足を捕えようとしているね」

「はい。なるほど、幻に私の心は読めませんね。ですが、知里さま。どうしてここが分かったのですか……?」


 レモリーにとって不思議だったのは、知里がいともたやすく地下にいる自分たちを探し当てたことだ。

 それに加え、〝猿〟による呪殺を無効化した方法も、レモリーの知っている魔法体系にはないやり方だった。


「カンタンに説明すると、2人が別行動を取ったときに、〝対呪殺系〟の術式を組み込んだ、あたしの影を潜ませてた」


 知里が右手をパチンと鳴らすと、レモリーの影が起き上がり、知里の方へと戻って行った。


「お(さる)さんが呪いを出した時に、守れるように。居場所が分かるように。そしてお猿さんを追跡できるように……」

「知里サン。闇ノ魔法でワタシたちを守っテくれテいたノカ」 

「もう誰も失いたくないから……。あたしがいる限り、アンタたちは死なせない。さて、それじゃあ、お猿さんの本体を追い詰めるとしよう」

「ですが私たちには、居場所を探る術はありません……」

「それが、あるんだ」


 そう言うと知里は、左手の上に掲げた〝猿の呪い〟が込められた球体に別の術式を重ね掛けした。

 そしてホルスターから魔法銃を取り出し、右手と左手で別の魔法を同時起動する。


「禁呪〝痛みの変換〟は、受けたダメージを相手に返す。この機能と光の魔法を応用した電磁波レーダーを組み合わせれば、猿の居場所は割り出せる」


 知里は〝痛みの変換〟で、猿に呪いを返す。

 同時に電磁波レーダーで、呪いの行きつく先を探る。


「外の召喚獣は、ヒナが引き受けてくれている。ここで猿を仕留めよう。2人にも手を貸してほしい」

「はい。心得ました」

「ワカッタ」

「ただし、さっきもそうだけど魚ちゃんは敵の呪殺魔法の対象になりやすいから注意してね。深追いは禁物だよ」

「はい。魚面さん、命大事に」

「ワカッタ。今夜ここで、猿を仕留める」


 前衛で猿を追い詰める攻撃役の知里と、後衛でサポートするレモリーと魚面。

 知里はざっくりと作戦を説明した。

 3人は円陣を組み、手を重ね合わせる。

 

「そんじゃ、お猿さんの道化芝居は閉幕とさせていただきましょうか」


 ほの暗い地下の空洞で、知里の瞳が燃え上がる。




※次回予告


「右手と左手で別の魔法を同時起動するのは、知里さんの尊敬する大魔導士の方の得意技なんですわよね♪」

「アンタよく知ってるわね」

「でも実際のところ、右手と左手で別のことをするのは難しいですわ。コツがあるのですか?」

「まあね。右手と左手で別の絵を描く練習をすればいいのよ」

「そんなことできるのですか♪」

「実在の方で水森亜土さんっていう歌って踊って両手で絵が描けて女優も張れるマルチなイラストレーターさんがいるわ。直行やお小夜に聞けば知ってるんじゃない? ……さて、次回の更新は10月12日を予定しています」


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