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恥知らずと鬼畜令嬢~ラスボスが倒された後の世界で~  作者: サトミ☆ン
〝鵺〟との戦い・見世物小屋の死闘
354/733

352話・まさかの重量級対決

挿絵(By みてみん)


「うおおおおおーー!!」


 丸太を担いだ虎仮面は、一心不乱にシャッターを攻撃していた。


 鋼鉄の扉に丸太を打ち付ける破壊音が、夜の川辺に響いている。

 しかし虎仮面は気にも留めない。


 目撃者がいたら、殴り殺せばいい。

 自分より強い厄介な者たちは、(ましら)が引き付けてくれている。


 問題なのは、扉の頑丈さだった。

 彼にとっては見たこともない鋼鉄製の扉だ。

 (かんぬき)もなく、どこから開けたらいいか分からない。


 何度も丸太を打ち付けるものの、頑丈な鋼鉄製のシャッターはビクともしない。


「畜生! 埒が明かねえ! 仕方ねえ」


 虎仮面は苦々しく吐き捨てる。


 そして面倒くさそうに丸太を大筆のように使って地面に魔方陣を描いた。

 肉弾派の虎仮面は、魔法は得意ではない。

 元々はスラム街に住む浮浪児だったのだが、魔法の才能は有していたので〝鵺〟に拾われた。


 〝猿〟によって召喚魔法を叩き込まれた虎だが、魔法を使うのは好みではなかった。

 

「出て来い下僕どもォ! ミノタウロスよ!」


 魔方陣から現れたのは、牛頭の屈強な大男の魔物ミノタウロスだ。

 全6体。皆、白銀の斧を手に持っている。


「この扉をぶち壊せェ!」


 虎仮面は持っていた丸太をシャッターに投げつけ、魔物に指示を与えた。

 そして自身は別の出入り口を探そうと、裏口に回ったとき、人影に気づいた。


「むッ……?」

「へっ?」


 盗賊スライシャーは油断していた。

 モニターで確認した限りでは、虎仮面はシャッター前にいたはずだ。

 まさか裏手に回っているとは、思いもしなかった。


「へいっ! こいつを食らいな虎野郎!」


 スライシャーも万年C級とはいえベテラン冒険者ではある。

 とっさに懐から辛子入りの煙幕玉を投げつけた。


「!」


 煙幕玉は見事虎仮面に命中。

 刺激臭を伴う黄土色の煙が湧き上がる。

 

 その隙にスライシャーは駆け出した。

 が、虎仮面は立ち込めた煙幕を意に介さずに突進する。

 大柄で筋肉質な見た目に反して、驚くほど足が速い。


「煙幕が効かねえ?」

「うらぁぁァ!!」


 逃げるスライシャーの襟首をつかみ、その頬に強烈な拳を打ち込む。

 

「ぐわぁぁぁーーっ!」


 目の覚めるような一撃に、スライシャーの体は宙を舞い、3メートル以上吹っ飛んで木に叩きつけられた。

 背中に強烈な痛みが走り、意識が飛びそうになる。


 しかし、スライシャーとて場数はこなしている。

 すぐに態勢を整えると、投げナイフで牽制。

 腰に装着したロープをほどき、両手に構えた。


「ルアあああぁァーー!」


 咆哮を上げて虎仮面の突撃。

 盗賊は、それを躱して先が輪になったロープを敵の首に引っ掛ける。

 

「あらよっと……!」


 次いで渾身の力を込めて、ロープを引いた。

 しかし虎仮面は余裕で耐えた。

 首にロープがかかった状態で、綱引きのようにスライシャーの引きに耐えている。


「どういう鍛え方をすれば、そうなるんでさあ!」

「場末の盗賊ごときとは次元が違うんだよォ……」


 虎仮面はいつの間にか首のロープを絶ち切っていた。

 スライシャーが牽制に投げたナイフを拾っていたのだ。


「お前ごときと遊んでいる暇は、ない」 


 虎仮面は2本の指でナイフを掴むと、手首のスナップだけで投げ返した。


「あぎゃっ!」


 弾丸のような速度で、スライシャーの肩口にナイフが突き刺さる。

 回避動作をとっていなければ、心臓を直撃したであろう正確無比な投擲だ。


 ◇ ◆ ◇


「このままじゃスラやられちゃうお! おいらが出撃するお!」 


 モニターを見ていた戦士ボンゴロが、戦斧を手に取って叫んだ。

 画面越しには、巨漢の虎仮面から一方的に殴られる小柄なスライシャーの姿が見える。

 

「しばし待てボンゴロ。お前が行っても勝ち目はあるまい」

「ネリーは、スラを見捨てるのかお? おいらたち仲間だお」

「見捨てるわけがあるか! 奴には時間稼ぎをしてもらい、こちらは何としてでも直行どのへ通信をつなぐのだ」


 術師ネリーはアンナに弟子入りしたことで、これまでより多少ではあるが知恵がついていた。

 助手として培った観察眼は、この場面でも冷静な状況判断の一助となったようだ。

 

「でも、スラ死んじゃうお……」

「この状態から察するに、スライシャーは尋問されている。おそらく、シャッターの開け方か、ここが何の施設か聞かれている。答えていないから、殴られ続けているのだ……」

「殴られると痛いお。それに、いつか殺されてしまうお。おいら、がまんできないお!」


 戦斧をかついだボンゴロは、梯子を上り始めている。


「待て……。ボンゴロよ」

「行かせてやれッ! ついでにこれを持っていけ。特級ポーションだッ!」


 引き留めようとするネリーを制し、アンナはそう言って小瓶を渡した。


「代金の7000ゼニルは直行に請求しておけッ!」


 ボンゴロの尻を何度も叩いて送り出すアンナ。


「ネリーは緊急事態のランプを救難信号に切り替えろッ。助けが来るまで守り切るぞッ!」

「承知ッ!」


 ネリーは師アンナ・ハイムの口調をまねて不敵に笑った。


 ◇ ◆ ◇


「おおい! 虎男よーい! そいつを放してやれお! おいらが相手だ。戦士ボンゴロ、いっくぞー!」


 戦士ボンゴロは屋根の上から大声で名乗りを上げ、勢いよく飛び降りた。

 屋上から現れたのは入り口を悟らせないための彼なりの判断だった。

 もっともその判断は、虎仮面に屋上からも出入り口があることを知らしめてしまったのだが……。


「……ボンの字の野郎、無茶しやがって……」


 盗賊スライシャーは自慢の前歯をへし折られ、すでに顔面が原型をとどめないほど殴られている。

 その姿に性根が優しいボンゴロは心を痛めた。


「スラ、いま助けるおー!」


  



次回予告


「知里さーん♪ あの3人組の強さって、どれくらいなんですか~♪」

「そうねえ100点満点で、戦士も盗賊も術者も30点ってところかな」

「赤点ギリギリってやつか。大丈夫かな」

「ちなみに♪ 〝鵺〟の強さはどれくらいですか?」

「幻術を使うから本当の強さは未知数だけど、あたしが90点だとして、75点ってところかしら」

「あれ? 知里さん前は自分は85点って言ってなかったっけ?」

「……いろいろあってさ」

「さすが知里さんですわー♪ ところでヒナさんは何点ですか?」

「……まあ、それはいいじゃない。次回の更新は10月4日を予定しています。お楽しみに」

「ヒナちゃんさんの戦闘力が気になるよなー」


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