表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
338/733

336話・食せっ! サラダ軍艦とロンレアプリン!

挿絵(By みてみん)


「イカゲソとカニカマとマヨネーズなんて、軍艦巻きとしてどうかと思ったけど、美味しいじゃない! 酢飯もちょうどいい塩梅(あんばい)だし!」

「ネンも食べたいです」

「はーい。どうぞネンちゃん」

「花柄のお姉ちゃん。すごくいい匂いがする。あんなに強いのに優しいです。でもどうして小夜お姉ちゃんのことママって言うの?」

 

 ネンちゃんは嬉しそうにサラダ軍艦を食べながら、ヒナに訊いた。


「本当にママなのよ。ヒナと見た目が同じ年くらいだから信じてもらえないかもしれないけど……」

「ううん。ネンのママも、同じくらいの歳なんだよ。小夜お姉ちゃんは耳がとがってないけど、エルフなんだね。えへへ……ネンのママみたいで嬉しい」


 ご機嫌で椅子に座って両足をバタバタさせている。

 ネンちゃんのダメっぽいお父さんは転生者だが、家出したらしいお母さんはなんとエルフなのだ。

 どういう事情でそうなったのか俺は知らないが……。


「エルフは長寿なんですってね。わたしはエルフじゃないけど……」


 そんな少女を、優しくたしなめる小夜子。

 一方、ヒナは遠巻きにいた魚面(うおづら)に目を留め、声をかけた。


「魚面さんも、ご一緒にお寿司いかがかしら?」


 器用に車椅子で近づいてくる魚面に、ヒナはコンベアを指し示す。


「生魚ナんか食べテ大丈夫なのカ?」

「菌や寄生虫を無効化しているから大丈夫だって」

「ヒナの毒感知にも反応しないから、食べて害はないはずよ。味は好みがあるだろうけど。何食べる?」


 ヒナはニコニコしながら、車いすを押す魚面にクバラ翁自慢の握りを勧める。

 しかし魚面は皿のわきに添えられたわさびに興味津々のようだ。


「辛イ。コの緑色の調味料は何ダ?」


 魚面は日本からの転生者なのだが、記憶はすべて奪われてしまっている。

 指でつまんで口に入れると、わさびが鼻に来たようで、ツーンと顔をしかめた。


「それネンのお皿に入ってないやつです」

「わさびっていうの。とっても辛いからネンちゃんは、食べないようにね」


 小夜子はネンちゃんに言い聞かせながら、おかわりのサラダ軍艦の皿を取った。


「ヒナのところでは西洋わさびを加工して使ってるけど、これは本わさび?」

「農業ギルド長クバラさんの話だと、似たような植物を栽培してるみたいよ」

「やっぱり多様な気候風土に恵まれてると、農作物の選択肢も広がるんだね」

「コレヲ敵の目に塗れバ目つぶしになル」

「魚ちゃんダメよ。物騒なのはもうやめて、お日様の元を歩こうよ! ガンバ! ガンバ!」

「小夜子サン……」


 小夜子の能天気な励ましに、さすがのヒナも苦笑いだが、魚面は心底感動しているようだ。


「あたくしの指示で作らせましたロンレアプリンが美味しいですわよ~♪」


 その傍らで、取り残されたエルマはコンベアから流れてきたプリン皿を掲げている。


 パッと見た限りでは、水と砂糖をフライパンで煮込んでカラメルソースを作ったものに、牛乳と卵液を流し込んで作ったシンプルなものだ。


「ああ美味しい。まさにプレミアムなプリンですわ~♪」


 決してヒナたちには直接話しかけず、グループの輪の中にも入らないが、彼女たちの前を行ったり来たりしながらプリンを頬張る。


 ネンちゃんは少し興味を引かれたようだが、近づこうとするとエルマは逃げる。

 そして離れたところから、また同じことをする。


 俺はあきれた様子で話しかけた。


「ヒナちゃんたちに食べてもらいたいなら、直接声をかければいいだろう」

「イヤですわ♪ そんなことより直行さん、おひとついかがですか?」

「俺は回転寿司でプリンは食べない派だ」

「〝まっぱ寿司〟といえばラーメンとプリンじゃないですか♪ ここにホイップがないのが残念ですけど♪」

「茶化して言ってるのかよ」

「お寿司は好きじゃありませんの♪ お魚が生臭くて苦手な人でも食べられるものがあるなんて、さすが巨大資本の全国チェーンは違いますわ♪ そして、それを再現できるあたくしの頭脳」

「調理したのはクバラさんじゃないか」

「プロデュースはあたくしですわ」


 ……人の価値観だから、とやかく言う筋合いはないが。

 俺は、何とも言えないモヤモヤを感じながらサーモンっぽい握り寿司を頬張った。


 まあ、プリンもサーモンも邪道と言われたら、返す言葉はない。

 伝統的な江戸前寿司の文化を大切にする高級店なんかでは、サーモンは出さないところもある。


「まあ、せっかくお前がプロデュースしたっていうなら、プリンは最後に食べてみるよ」

「別にいいですけどね♪」


 俺とエルマはその辺のテーブルの上に皿を置き、めいめいが好きなものを食べた。

 エルマはプリンと甘そうなミルクティー。

 まあ、こ奴がデザート以外を口にしたところを見たことはないが……。


「エルマ、食事でちゃんと栄養を摂れよ。いつか病気になるぞ」


 俺はマグロのトロ風やハマチ風、ホタテ風の寿司に麦酒。


 言葉少なに食べていたところ、ファイアーパターンのレーシングスーツを着た青年が駆け寄って来た。

 こんな人物は1人しかいない。


「あらミウラサキ一代侯爵。ごきげんよう」

「どうも~! ちょうどいいところにエルマちゃんがいた。実は、相談したいことがあって……」


 改まった感じで、ミウラサキは言った。

 まさか、縁談というわけでもないだろうが……。




次回予告


※本編とは全く関係ありません。




「サラダ軍艦って、あたしピンと来ないんだけど」

「モデルになった某回転ずしチェーンは長野県が発祥で、現地では大人気らしいぞ」

「へー♪」

「内陸ほど人気のメニューらしいな。全国の売上的には、マグロやとろサーモンが人気みたいだけど」

「大手飲食チェーンでも地域ごとに人気メニューが違うんですね♪」

「今回の次回予告はまともなこと言ったな」

「次回の更新は9月2日くらいを予定しています♪」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ