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322話・元・勇者パーティの連携

「レモリー! 敵襲だ。ネンちゃんと魚面を守ってくれ」

「はい。ご主人さま」


 屋敷に入った俺は、レモリーに指示を出した。

 通信機の感度は良好。

 敵襲を伝えた後は、全速力で彼女たちとの合流をめざす。


「大丈夫か、ネンちゃん」

「ネンはだいじょうぶです。おじさんのおばさんが守ってくれますから」


 ネンちゃんは、なんの悪意もなく言った。


「いいえ。(わたくし)への呼び方はともかく、直行さまはおじさんではありません」

「おじさんのことが好きなんですね。〝じょうふ〟のおばさん」

「…………」


 気まずいやり取りに、場の空気が凍った。

 ネンちゃんは変装したヒナちゃんのアフロヘアが珍しいようで、ふしぎそうに見入っている。


「敵の狙いは俺とエルマの暗殺だ。ミウラサキ君。エルマの保護を頼む」

了解(ラジャー)!」


 自動車を運転していたミウラサキには、エルマの保護を頼んだ。

 間髪を入れず、黒い自動車は急発進する。


「エルマ嬢はこれで問題ない。さて……敵は〝(ぬえ)〟の〝透明な蛇〟。魚ちゃんの元同僚でしょ。情報が知りたい」


 知里が魚面(うおづら)に尋ねる。


「〝鵺〟といってモ、組織というわけではナくて……」


 魚面が説明しようとしたとき、小夜子が帰って来た。


「ただいまー」

「ママ、おかえり!」

「表のガーゴイルが倒されてて、カメラも壊されてるわ! フィルムも見当たらない!」


 深刻な表情で、手短に状況を説明する。

 フィルム……?


 俺とヒナは顔を見合わせ、首を傾げた。


「ママ、フィルムって……?」

「ちょっと小夜子さん、いいから一緒に来てくれ」

「うん。直行くんはわたしが守るわ」

「じゃあヒナは潜水艦の乗組員たちに索敵を頼んでおく」

 

 彼女はペンダント式の通信機で、乗組員たちに指示を出した。


 俺は小夜子に守られながら、玄関先まで向かう。


「ね。フィルムが見当たらないの」


 心配そうに腕を組む小夜子を尻目に、俺は現場検証を始めた。

 レンズのところを中心に割られたカメラ。

 基盤が剥き出しになっていて、損傷が激しい。

 

 おそるおそるカードスロットから記録媒体を取り出してみる。


「カードは無事だ」

「そっか。直行くんたちの時代って、もうフィルムは使ってないんだっけ」


 記録媒体を回収した俺は、屋敷に戻った。


「ヒナちゃんさん。カードリーダーみたいなの持ってる?」

「潜水艦まで行かないとないけど……。召喚しちゃおう」


 ヒナは軽いステップを取りながらリズムを刻むと、踊り始める。

 そして手品のように手のひらを広げると、召喚されたカードリーダーが乗っていた。


「すげえ。電子機器も召喚しちゃうんだ……」


 エルマは吹き矢かそろばんが精いっぱいだったが……。


「日頃からヒナお抱えの技術者の講義を受けてたり、設計図を描いてもらったり。それをスキル『超精密記憶』で再現して、召喚するの」

「……さすが賢者様のチート能力ってとこね。努力も重ねてるんだ。そりゃあ魔王倒すよね」


 知里は皮肉ではなく、本心から感心した様子だった。

 同時に、少し寂しい表情も見せる。

 当事者にしか分からない、複雑な思いをのぞかせた。


「どれどれ……」


 ヒナはポケットからスマートフォンを取り出すと、カードリーダーを接続した。

 液晶モニタには、倒される前のガーゴイルが録画していた動画が映し出された。


挿絵(By みてみん)


 そこに、浅葱色のコブラを模した仮面の人物が映る。

 藤色のプロテクターのような防具をまとった姿だ。

 とても細い中性的なシルエットで、一見したところ性別は不詳。


「間違いなイ。コイツは〝透明な蛇〟」


 確かに言われてみれば、フル装備の〝魚面〟とデザインの共通点も見られる。


「変わった装いね。ヒナのよく知らない〝裏社会〟の住人なのね」

「ずいぶんと派手な奴だなー……って、おい!」


 一瞬、全身に七色のボディペイントをほどこしたかのような、派手なシルエットが映った。


「あれ、パンサーカメレオンだっけ。色彩のバリエーションが非常に多い擬態方法だ」

「見て、ネンちゃん。こういう派手なおじさんだかおばさんだかは危険な人だからね!」


 いつの間にかヒナのスマホの周りにはその場にいる全員が集まっていた。 

 画面を食い入るように見ている。


「〝蛇〟は、特殊スキル『擬態』に加えて、幻影魔法、沈黙魔法を重ね掛けシテ、完全な透明化の手段ヲ手に入れている」

「……や、やべー奴だな」

「なるほど」

「そう。いいこと聞いた」


 青ざめた俺に対して、知里とヒナは不敵に笑った。

 魚面はさらに続ける。


「それニ『忍び足』と、『殺気消し』のスキルも鍛えテある。暗殺手段は背後から近づイて猛毒の暗器による一撃ダ……」

「おっかねーな。でも、素性が割れてよかったぜ。知里さん、よく知らせてくれた」


 どうやったって、知らなければ対処できない敵だった。

 俺は改めて知里に礼を言った。


「気にしないで。……ああそうだヒナ。スマホの充電器持ってたら後で貸してくれる?」

「いいけど。知里のスマホって、ずっと前に使えなくなったんじゃなかったっけ」

「新調したんだ」

「そう。まあ、ヒナは全然OK。いつでも使って」

「ありがと」


 ヒナと知里は何やら充電器について話していた。


「しかし改めて考えると、〝透明な蛇〟って人、運が悪いわー」

「ヒナも同感。でも、野放しにはできないから、ここで捕えておきましょう」

 

 知里とヒナは、お互いを見つめながら苦笑している。


「まさかあんたとまた協力する日が来るとはね……」

「ソウ言えば、モジャモジャ頭ノ(ひと)、誰? 小夜子サンのコト、ママって言ってたケド……?」


 魚面(うおづら)がふしぎそうにヒナを見ていた。


「ひとまず、お互いの素性については、蛇を捕まえてから自己紹介しましょう。夕食がてら、ね?」

「ちっ。リア充め……」


 余裕でほほ笑むヒナに、毒づく知里。

 2人はすでに術式の詠唱をはじめている。


「特殊スキル『擬態』持ちだろうと、幻影や沈黙による魔法なら解呪(ディスペル)すればいいし」

「『擬態』なら、雨でも降らせて姿を浮かび上がらせちゃおう」

「それは、あんたに任せた」

「知里、効果範囲は半径2キロでいい?」

「無理してMP切れ起こしても知らないよ。索敵後は、軽い戦闘が待ってると思うし」


 2人が同時に魔法を詠唱する様子を、小夜子は嬉しそうに目を輝かせて見ている。


「懐かしいな。2人の魔法連携。物理サポートは、わたしに任せてね!」


 小夜子が体に闘気をまとい、妖刀〝濡れ(からす)〟の柄に手をかける。


「……この人タチ……すごい」

 

 それらの様子に、魚面はただ息を呑んだ。



次回予告


「今回の〝蛇〟のデザインは、なろう作家のホーリン・ホーク様に寄せて頂きました♪ ありがとうございます♪」

「ありがたいけど、なんか超強そうでヤバそうじゃないか……」

「恐れるに足りませんわ♪ 直行さん、やっておしまい♪」

「残念ながら俺の能力は回避特化だから無理だよ……」

「そうでしたわね♪ 直行さんは、逃げることだけが専門の恥知らず……。あたくしたち2人、まるで戦闘力がありませんでしたわね♪」

「情けない主人公だな」

「そんなわけで、次回は『脱出ゲーム! 蛇に喰われる前に逃げろ! の巻』になります♪」

「エルマお前ウソ予告ばっかりだと飽きられちゃうぞ」

「次回の更新は8月4日くらいを予定していますわ~♪」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 316話  アヴァンギャルドなイラストが効いてます! 317話  クロノ七福人とは。これまた派手そうなキャラが立ち並びそうですね! グンダリとソロモン再び! 次のステージさらに熱いぞ! …
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