表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
307/734

305話・国王暗殺計画

「俺の作戦をざっくりと言うと、偽の降伏文書を書いてガルガ国王をおびき出し、人質に取る」

「……ナンセンスだワ。国王陛下ともなれば、護衛の数も、強さだってハンパない」

 

 俺の提案を、キャメルは即座に却下した。

 まあ、当然の反応だろう。


「酒宴を開いて、クロノ王国の関係者を全員毒殺した方が楽ですわ♪」


 エルマが鬼畜に笑う。


挿絵(By みてみん)


「甘い! 王族を毒殺ナど不可能ダ!」

「ぎゃぺっ」


 魚面(うおづら)が電撃魔法を飛ばし、エルマは軽く悲鳴を上げる。


「お付きの術師に回復されル。()ルならまず術師の魔法を封じルか、呪い殺す。気づかれナイように二段階で全員殺ルのは至難の業ダ……」


 魚面は以前のような無表情で言った。

 ようやく上半身まで回復してきた彼女は、バスタオルを胸に巻いただけの姿だった。

 少しだけ目のやり場に困るが、俺とは足元から融合したままなので、どうしても視界に入ってしまう。


 そんな魚面に、キャメルは少し驚いたようだ。


「ずいぶんと殺害のイメージが具体的なのネ。こ、こちらの方は……はじめまして、よね?」


 キャメルは恐る恐る、尋ねた。

 確か、魚面とは初対面だったはずだ。


「紹介しよう。魚面だ。今は俺と融合しちまってるが、裏稼業では知られた名だったという」

「お魚先生は、あたくしの召喚術の師匠ですわ♪」


 改めて、俺とエルマは魚面を紹介した。


「今はもウ廃業シて、カタギだ。よろしく」


 魚面は元気よく、キャメルも気さくな感じで挨拶した。


「アナタが()()〝魚面〟さん。暗殺者集団〝鵺〟の一員で、決闘裁判で無罪を勝ち取り、姿をくらませた。魚の仮面としか知られてなかったから、意外だったワ。美人さんネ?」

「まぁまぁだッ。なァ、エルマ嬢よ?」


 錬金術師アンナが、話に割り込んできた。

 魚面のほっぺたをつまみながら、得意げに言った。


「つくり立ての顔だからなじむまでは少しかかりますけど、〝まあまあ〟の出来ですわ♪」


 エルマも話に乗ってくる。

 そう、魚面の顔面は2人によって生成されたのだ。


「アリガトウ。コレがワタシの顔。コの顔で皆と一緒の時間を刻む。嬉しいんダ……」

 

 アンナ、エルマ、魚面の会話内容は、ブッ飛びびすぎていて、事情を知らないキャメルは茫然としている。


「顔を変えて新たな人生を歩む……ということかしら?」

「話せば長くなるんだが」

「……ま、まあ、いいワ。人にはそれぞれ事情があるものネ」


 しかしさすがというか、無理やり納得したようだ。

 こういう強引な納得の仕方は、ある意味大人の対応かもしれない。


「国王の拉致、および暗殺の難易度は、限りなく難しいと思うけど、若旦那はそれでもやるの?」


 おまけに脱線しかけた話も戻してくれた。

 やはり、彼女は頼りになる。


「それについては、アイデアがある。ただ、実現可能か、成功率も検証する必要がある。何にしてもまずは偽物の降伏文書を、できるだけみっともなく書いて油断させる」

「直行さん。当家の誇りはどうお考えですか?」

「みっともない手紙は、消えてしまう。ロンレアの誇りならエルマが灯し続けていればいい」


 俺としては、できるだけ小心者の放蕩貴族を装わなければならない。

 とにかく自分の命と金が大事、領地は潔く差し出すから身の安全だけは保証してくれと。


 できるだけ頭が悪そうにみえる表現を使うのもいいかもしれない。


「イキった異界人の領主の夫が、クロノ王国に心底ビビったような手紙を書こう」

「なるほど。相手を侮らせるのだなッ」

「こちらに来る敵の部隊の士気が、ピクニック気分になるようなダメな領主夫妻を印象づける」

「そんなの嫌ですわ! あたくしは嫌です」


 エルマが頬を膨らませているが、ここは譲れない部分でもある。


「そういう書状を出すから、キャメルにはそれを届けてもらう。そしてダメ領主をより印象付けてもらえるような芝居をしてもらいたい」

「問題は虚偽感知魔法だけど、若旦那の悪い噂はおおよそ事実だから、いけると思うワ」


 褒められているんだか、微妙だが……。


「それで、こちらは戦支度を始める。エルマにもやってもらうことがあるぞ」

「家宝の奪還なら、腕の立つ者を雇いましょう。つくづく知里さんは惜しい人でしたわね……」

「そうだな。彼女の葬儀もウチでやってやんないとな」

「知里サン……」


 魚面は深くため息をついた。

 彼女の上半身はどうにか回復したものの、足の部分は肉塊と化して未だ俺と融合している。

 この状態では動くこともままならない。


 俺は、ネンちゃんによる治療を続けながら、リモートで戦支度と知里の葬儀を執り行わなければならない……。


次回予告


「ワタシは旧王都にあるBAR()(かい)(かぜ)のマスター、ワドゥアベルトでしゅ~。みなしゃま~、覚えていらっしゃいましゅか~? 知里さんが亡くなったなんて、信じられましぇん~。だって、ウチの常連だったんでしゅよ~? 赤葡萄酒のツケ、払ってもらってないんでしゅ~。踏み倒しでしゅが、時は残酷に過ぎまっしゅ~。……次回の更新は、7月1日になりましゅ~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ