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304話・ネオ霍去病


 最悪の事態は、知里の死だけではなかった。


「……そんで、クロノ王国との交渉は失敗したというわけか」

「途中までは……うまく行きかけたんだけどネ」


 俺は頭を抱え、キャメルはうつむいた。


「くわしい経緯を教えてくれ」

「贈り物作戦は大成功。ロンレア家宝の虎の敷物を、ガルガ国王陛下は大変喜ばれて、処分保留……法王庁の返答待ちに傾きかけたんだけどネ……」


 キャメルは慎重に言葉を選びながら続けた。


「そこをひっくり返したのが宰相的な地位にいた人物。名前はネオだか霍去病(かくきょへい)だとか呼ばれていたワね……」

「ネオ……霍去病(かくきょへい)


 俺は眉をひそめた。


「アラ? まさか若旦那のお知り合い?」

「いや、元いた世界で隣の大陸にある国の歴史上の人物だ。2000年以上前の前漢時代に24歳で病死した将軍の名前だ。まさかその転生者か……?」


挿絵(By みてみん)


 あるいは、誰かが歴史上の人物を召喚している……のか?


「三国廻戦スマッチュでは美少女でしたけどね♪」

「男ヨ。地味な感じのイケメンで、武闘派の多いガルガ国王の側近では、比較的線が細かったわネ……」

「地味か。史実では派手好きで傲慢な性格だと書かれてたけどな」


 史実とはいっても、俺は司馬遷の史記もまともに読んだことはないけれど。

 いや、漫画化されたものは読んだな……。


「とにかく、そのネオ霍去病って男が、国王陛下に討伐を進言したの」

「当家の家宝は持ち逃げですか?」

「ガルガ国王は虎皮の労いもあるからと、降伏勧告を勧めてくれたわ」

「当家の家宝は持ち逃げした挙句に、降伏しろですって! 冗談じゃありませんわ! 直行さん。徹底抗戦ですわ。やってやりましょう♪」


 相変わらずエルマの鼻息は荒い。


「とにかく近いうちに軍勢を引き連れてガルガ国王とロンレア領代官が見えるそうよ。それまでに武装解除してロンレアの領地を引き渡す。これが、クロノ王国の回答ヨ」


 近いうちに……か。

 俺は腕を組んで考える。


「国王が来るなら暗殺してやりましょう♪ そしたら直行さん、あたくしたちでクロノ王国を簒奪(さんだつ)してやりましょう! ロンレア帝国の爆誕ですわ♪」

「え、エルマお嬢さま……過激ネ」

「ワタシも協力スルヨ」

「さすがお魚先生♪ まずは足を治すことが肝心ですけど、頼りになりますわ~♪」


 俺の足の向こうでは上半身裸の魚面とエルマがガッチリと握手を交わし、キャメルがドン引きしている。


「……で、どうする気だッ? お嬢の世迷い言に付き合うほど、腑抜けた男でもあるまいッ」


 アンナは真顔で俺の横に立ち、対策を聞いてきた。


「実際、まいった。法王庁の返答カードが使えないとなると……」

「勇者自治区に泣きついて世界大戦かッ?」

「……それは最悪の場合の、最後の手段だ」


 勇者自治区を頼れば、間違いなくこの世界は真っ二つに割れる。


 それを含めて、俺にできる選択肢は3つだ。

 ロンレア領をあきらめて降伏し、勇者自治区に亡命するか。

 それとも勇者自治区を頼らず、単独でクロノ王国と戦うか……。


「キャメル。さっきの話、〝ガルガ国王がロンレア領に入る……〟と言ったな」

「ええ。親政を行う以上は、国王自ら領地に入り、威光を示すんでしょうネ……」

「その時を狙って暗殺ですわ♪ ロンレア帝国。あたくしは女帝。レモリーは後宮に入れて直行さんが可愛がってあげればいいですわ♪」


 暗殺は行きすぎだとしても、拉致はアリかも知れない。


「ガルガ国王に恭順の手紙を書こう」

「却下です! 弱腰外交ダメ! 絶対ですわ!」


 俺はエルマを無視して、アンナに尋ねる。


「アンナ、錬金術で、1週間したら自然に溶けてなくなる紙って作れるか?」

「一瞬で水に溶ける紙ならすぐ作れるがッ?」

「溶けてもいいけど、燃えてもいい。とにかく時限式で証拠がなくなる紙が欲しい」


 俺とアンナの密談を聞きつけたエルマが、ニヤリと笑い、近づいてくる。


「直行さん。悪いことを考えていますわね♪」

「こっちの世界に証拠隠滅罪があるなら罪だけどな」

「直行ッ。お前は本当に見下げ果てたやつだなッ」


 アンナはピンと来たようで、俺の背中をバンバンと叩いた。


「偽の降伏文書を書いてガルガ国王をおびき出し、人質に取る。和平交渉はそれからだ」



次回予告


「エルマですわ♪ この連載が始まって、あすの6月27日でもう1周年になるそうですよ。あっという間でしたわね、直行さん♪」

「お、おう。もう1年か」

「304話にもなりましたか。読めば長くなりますから、どこでもテキトーなところから読み始めてくださいね♪ 特にあたくしが無双するところとか?」

「ま、まあな……(そんなシーン、あったっけ……)」

「挿絵も毎回描かれていますが、作者は誰か他の絵師さまにキャラデザして頂きたいと、常々思っているそうです♪」

「ああ。いただいた魔王のデザインは最高だった。あと剣のデザインもいただいてる」

「でも魔王は過去編じゃないと登場しないじゃないですか」

「まあな」

「あたくし、もう作者の絵柄に飽きましたわ♪ どなたかいい方、いらっしゃるといいんですけど」

「そんなこと言って大丈夫なのか」

「絵師ガチャ、引きたいですわ~♪」

「描いていただけるだけでありがたいのに、ガチャ言うな失礼だろ」

「次回の更新は、6月29日になりますわ~♪」


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