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272話・2度目のセレブ御用達レストラン・アエミリア1

「ヒナ様。こちらの方は……ひょっとして?」


 神田治(かんだはる)いぶきは、興味深そうにアンナを見た。


挿絵(By みてみん)


 セルフレームの眼鏡で、白無地のスタンドカラーに紺のパンツ。

 くるぶしが見えるので、フットカバーをつけて茶色の革靴を履いているのだろう。

 相変わらずの、意識高い系ファッションだ。


「錬金術師のアンナ・ハイム女史よ」

「ご高名はかねてから伺っております。僕は神田治(かんだはる)いぶき。被召喚者です」


 いぶきは少し大げさな身振りで挨拶した。


「はじめましてッ! わたしがアンナ・ハイムだッ。ご高名? フハハハハハ! 若いのによく知ってるじゃないかッ」


 アンナは豪快に笑った。


「いぶき君。ヒナたちはアンナ女史と会食するから、後のことはお願いね」

「承知しましたヒナ様。それで、例の計画が動き出すのですね」

「そうね。でも()()()は公にしないから、いぶき君もそのつもりで」

「心得ております!」


 ヒナは口元に人差し指を当てて他言無用のポーズを取った。

 そして一瞬、視線をこちらに向ける。


「隠密裏にいきましょう」


 わがロンレア領に勇者自治区の軍需工場を誘致した。

 スキル結晶の量産化計画が動き出す。


 俺は土地の貸し出しと、いざという時の〝トカゲの尻尾切られ〟役。


 最初に受注したのはスキル結晶『理性+3』

 魔力や物理力などの戦闘能力向上系ではないのが意外だった。


 ヒナの目指す国づくりに欠かせない兵士たちに軍規を徹底させること。

 それと元・現代人のメンタルケアが最優先だそうだ。


 ついでに『理性+3』にはステータス異常防止効果もあるという。

 ヒナは抜け目がない。


「アエミリアまでお送りします。ヒナ様、お乗りください」


 いぶきが車を出してくれた。

 クリームイエローのフィ〇ット500を模したような車。

 勇者トシヒコの所有だという。

 後部座席にヒナ、アンナ、助手席に俺。


「ママとは現地で落ち合いましょう。いま、カレム君の車で迎えに行ってもらってるの」

「小夜子さんって今どこに?」

「ママは学校。先日の視察の時に講演したら好評だったので、とりあえず自治区にいる間は特別講師として授業に出てもらってる」


 俺たちを乗せた車は、イルミネーション輝くメインストリートを抜けていく。

 裏路地にある高級レストラン・アエミリアの前に車を停めた。


 そばに白いリムジンが止まっている。

 先客がいるようだ。


 いぶきがさっと運転席から出て後部座席のドアを開け、ヒナが降りる。

 続いてアンナも降りた。


「直行さん」


 最後に、いぶきが俺に声をかけてきた。


「……()()とは、ご一緒ですか?」


 いぶきが声をひそめた。

 彼女とはエルマのことか? いや違う。

 さりげなく左手を頬に添えているから、おそらく知里だろう。


「ブラっと外遊してるみたいですね。彼女に何か?」

「いえ、別件で仕事を頼みたかったんです」


 ヒナが近くにいるので、いぶきは慎重に言葉を選んでいるようだ。


「会った時にでも、その旨を伝えていただければと」


 知里に頼みたい仕事……?

 以前、俺たちが神聖騎士団に包囲されたときのことを思い出す。

 あの時、なにやら物騒な依頼をしていたようだったが。


「直行君、早くいらっしゃい」


 ヒナが振り向いて俺に声を掛け、先に地下への階段を下りていく。


「お、おう」


 俺は慌てて車を降りた。


 そのとき、ヒナと入れ替わるように、ひとりの男が階段を上がってきた。

 こちらへ歩いてくる。


 飄々としているが、隙がない。

 細身のシルエット。


「……よう、色男」


 すれ違いざま、男が俺を見てニヤッと笑った。


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