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266話・勇者自治区、みたび

 有名テーマパークを模した勇者自治区の正面ゲート。

 関係者用の入り口に車を止め、窓を開ける。


挿絵(By みてみん)


「おかえりなさいませ! カレム様!」

「カレム様イェイ!」

「どうも~」


 シャコー帽をかぶった係員たちが駆けてきて、車越しにミウラサキとハイタッチを交わす。

 彼らはとても嬉しそうで、ミウラサキが慕われているのがよく分かる。


「ヒナっちに会いたいんだけど伝えてくれる? 直行クンとアンナさんが来てる」

「はっ! 少々お待ちください」


 係員は、トランシーバーでヒナを呼び出しているようだ。

 その間、ミウラサキは良い笑顔で貧乏ゆすりをしているが、車に乗ったままなので係員からは見えない。

 セキュリティゲートのはずが、俺たちを含めてノーチェックだ。


「申し訳ありません。ヒナ様は現在、要人と会談中でして、お繋ぎすることができません」

「じゃあ終わったら、さっきの用件を伝えといて。ボクらガレージにいるんで」


 ヒナは多忙なので仕方がない。

 電話やメールのない世界で、連絡を取るのはなかなか大変だ。

 基本的には書状のやりとりなのだろうか。


「アンナ。研究に忙しいところ悪い。少し時間を取らせてしまうかも」

「構わんよ。いい機会だッ! 悪名高い勇者自治区とやらを見学するのも悪くないッ」

「了解。じゃあゲートお願い~」

「はっ!」


 ミウラサキが手を振ると、係員たちは車両用のゲートを開ける。

 俺たちは車から降りる事もないまま、車両用通路で入園した。


「じゃあボクは立体サーキット建築現場にいるんで、ヒナっちから連絡が入ったらお知らせします」

「え? さっきガレージにいるって係の人に言ってたけど、大丈夫なの?」

「場内アナウンスが入るから、そしたらサンドリヨン城方面に向かっててもらえれば、大丈夫です」


 ガレージに車を入れると、ミウラサキは電動キックスケーターを2台を持ってきてくれた。


「あいにくとホバー型は出払っちゃってますが、よかったら使って下さい」


 アンナが興味深そうに飛びつき、何かと物色している。

 いまにも分解しそうな様子なので、俺は彼女を制した。


「動力は炎の精霊石だなッ。わたしはホバーボードを製作した事があるがッ。魔法王国時代の浮遊石は高価でなッ。なるほどッ。お前たちの文明は熱を電気エネルギーに変換して使うのだなッ。なるほどッ」

「……ボクは難しい事は分からないですけど」

「俺も、パス……」


 アンナは観光には全く興味を示さないで、電動キックスケーターに夢中だった。


「そんなに気になるなら差し上げますよ。比較的安くつくれるので今度量産しようと思ってたんです」

「だろうなッ。炎の精霊石を動力に組み込んだやり方は、相当に汎用性が高い。うん、なるほどッ」

「……じゃ、ボクは立体サーキット建設の監督してますんで~」


 アンナが難しい話をし出したので、ミウラサキは逃げるようにその場を立ち去った。

 俺はこの場を離れるわけにはいかないので、彼女の話に相づちを打つしかなかった。


「なるほどッ。異界人たちの文明は電気エネルギーが主力なのだなッ。魔力、精霊力に加えて、電気! この世界には万能エネルギーで溢れているぞッ! 待てッ! そうすると、これらを組み合わせることで、この世界は加速度的な飛躍を遂げるなッ……!」


 …………。

 …………。

 アンナは興奮して1人でまくし立てていた。

 錬金術師アンナが自治区に来て10分もしないのにコレだ。

 法王が錬金術師と勇者自治区との繋がりを禁じる理由も理解できる。


 俺の知識では、石油や天然ガスについては説明できない。


 この世界に、そういう地下資源はあるのだろうか、見当もつかない。

 ただ、あるとするならば勇者自治区が利用し出すのも時間の問題だろう。


「……聞いてるかッ! 直行ッ!」

「……いよっ、さすがアンナ・ハイム大先生」


 話が難しくなってきたので、俺は適当なところで合いの手を入れている。


「よォし! 仕組みは理解できたッ! コレに乗って自治区を探検するぞッ! 来いッ! 直行ッ!」


 アンナは白衣を翻し、電動キックスケーターで見事な8の字走行をやってみせた。

 俺はおそるおそるハンドルを握り、右手でアクセルを回した。

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